金持ちお嬢様と笑わないパンダ ①
武宮君の家にお邪魔させてもらって、そこで眠って目が覚めると朝の九時だった。
学校がない日曜日なのでこの時間だ。学校があったら終わってたぜ。
「ん、あれ、月乃から電話来てる」
携帯を手に取り、電話をかけなおす。
『おはよう、パン子』
「なに、モーニングコール?」
『そんなもんよ。というか、お誘いよ。今日暇なら一緒にオペラ見に行かない?』
「おー、いくいく」
『そう。じゃ、駅前に集合ね』
といって電話が切られた。
そして、それと同時に武宮君が中に入ってくる。
「おはよう、起きたんだ」
「うん。ぐっすり熟睡出来たよ」
「ならよかった。で、電話してたの? 相手は阿久津さんかな」
「よくわかるね。そうだよ」
まあ電話が来る相手が月乃か白露ぐらいしかいないからな。
月乃の電話は大抵こういうので、白露は勉強教えてくれが多い。白露自身トレーニングとスポーツで休日を潰してるから映画とか自ら行こうとしないしな。
「今更気になるんだけどさ、パン子さんって阿久津さんたちと仲いいけど出会いはどうだったの?」
「出会い?」
「うん。なんかちょっと異質かなって思ってさ。三人が。類は友を呼ぶってよく言うけど、その類って感じがしないしさ」
「んー、出会いねぇ」
出会いは……。
☆ ★ ☆ ★
私は叔父さんに引き取られて、隣の県の学校に転校してきた。
「夢野 眠です。よろしく」
端的にそう挨拶して自分の席に座る。
お父さんとお母さんが死んで、優しい叔父にひきとられた。嬉しい、とは違った感情があるが、よくわからない。お父さんとお母さんが死んだことは悲しい。でもそれ以上に、詐欺師が許せなかった。
もっと私が頭よければ気づけたかもしれない。詐欺師に復讐がしたい。なら、詐欺師を騙せるような知能を手に入れればいい。
私は、授業で必死にノートをとった。
ノートだけではなく、叔父さんに頼み問題集を買ってもらって、それを一日で終わらせる。たくさん知識を詰め込め。あの詐欺師より頭よくなければ復讐もできないだろう。
「因数分解は完璧にわかった。でも、まだだ」
小学校四年生ぐらいにはもう中学生の範囲は全部終わっていた。
四年生の夏。転機が訪れた。
「あなた、勉強できるのね?」
と、いかにもお嬢様みたいな感じの人が私に声をかけてくる。
高級そうな衣服を身にまとって、どうにも私の性格とは合わなそうな人。めっちゃくちゃきっちりしてそうだし、でもかといってお嬢様だからとんだプライドもあるだろう。
厄介なやつに目をつけられた。
「できるんですかね? 自分でもよくわからないですよ」
「……そう? テストで満点しかとったことがないのに?」
「……そうですね。それがどうかしました?」
「お願いがあるの。私に勉強を教えて」
「……嫌ですよ。お嬢様なら私より優秀な家庭教師をつけてもらえるだろうし、それに、私金持ち嫌いだから」
私はそう言ってランドセルを背負う。
お金があるからこそ欲に忠実になり、お金がないから欲望が湧く。だからこそ人からだまし取るなんていうこともしてしまうのだ。
何事もほどほどが一番いい。金持ちは欲望に忠実だろうからな。
TSモノを書きたい欲求がすごい




