公爵との話 ②
公爵は落ち着きを取り戻した。
「す、すまない。受け入れるのに時間がかかった」
「そうですか」
私はお代わりした紅茶を啜る。
「整理すると、あなたがロッソを狂わせた張本人で、不死者だと」
「そういうことですね」
「……そうか」
「私を捕まえますか?」
「いや、危害を加えないと約束した以上はな……」
このことを知っても約束を守る人か。
私の予想としては今すぐひっとらえろと言われるつもりだった。逃げる準備は既にできていたしな。それに、私はそう簡単に捕まらない。
「だが教えてほしい。なぜ話した? そのまま黙っていることもできただろう」
「その理由はこの子ですよ。この子も利用させてもらったんですから」
レブルの肩をたたく。
「黙っているとこの子が罪悪感で押し潰れてしまいますから。悪事には慣れてる私とは違ってこの子は正義ですから」
「……すいません、私は最初知らなかったんです。知らないでいたほうがよかったんです。幸せだったんです。知らないほうが」
「私に至っては完全に知りませんでした……」
「ま、運命やな。俺も協力した手前そんなこと言えへんけど」
アンジュだけが何も知らないのだ。
「まあ罰は受けますよ。罪には罰を。当たり前でしょう?」
「当たり前といってはいいのだが……。だが……うーん……」
「そんな犯罪者と躱した約束を守ってどうするんです? 処刑ですか」
「死なない人に処刑というのはどうなんだ?」
「あはは。ダメですよねー」
ふざけていった冗談で私は笑った。
「まあ、お咎めナシならいいですよ」
「……まあ、いいだろう。甘い人だからな、私も」
「ならよかったです」
本当に、罰を与えないって甘い人だ。
「まあしみったれた話はもういいだろう。それに、見どころがある人だ。よかったらこの後スイーツでも食べないか?」
「あ、そっちでも甘い人?」
「あなたはとても賢いだろう。私の周りはなんていうか頭が弱い人ばかりでな。こういった賢い人に会うのは久しぶりなんだ」
「……国の王も?」
「不敬に当たるだろうが事実を有り体にいうならばそうなるな。この領は私が統括しているからまだしも他の貴族が治める領はひどいんだ」
「ナニソレ一気に行きたくなくなった」
フィガル騎士団がいたここよりひどいの?
「もしかしてほかの領にもいく予定だったのかい?」
「まあ、元の大陸に戻らないといけませんからね」
「へえ。どこから来たの?」
「アクアマリン大陸から」
「隣の大陸か……。ならいい提案があるが」
「提案?」
「一か月後くらいにアクアマリン大陸の魔王領を視察させてもらえることになった。その時一緒に行くかい?」
「それは素直に助かります」
でもなんで魔王領を視察に?




