タイガーレックスの逃亡戦
タイガーレックスはこの森の主、らしい。
あはは。あははは。無理じゃね? 今、現在、逃走中。前もあったな。
「タイガーレックスって虎の顔したティラノサウルスじゃんかよ!」
「これはまずいな。流石に恐竜相手で柔道が通じるとは思えん」
「どうするのよ!? これ倒せないと仲間にできないんでしょ!?」
そう、なんだよな。
だからどうにかして倒さないといけないけど、その方法が思いつかない。
「ほれほれ、はよ倒さないとこのタイガーレックスの糧となってしまうぞ?」
吸血鬼の真祖はニヤニヤしながら逃げる私たちを追ってきていた。こいつドSだな。間違いない。けど、このまま何もせずに糧となるのはなんだか嫌。
でも、嫌だからってどうしろと。こんな私の何倍もの図体の相手取りってどうすればいいんだよ。
「パンドラ! なんか策はないの!? 参謀のあなただけが頼りよ!」
「だからぁ! なんでもかんでも私に一任するな!」
「だが、こういう時になんとかしてくれるのがパンドラだからな」
「その謎の信頼感……」
信頼されても困るんだよ。
こいつらに一言言ってやりたい。私が何でも解決できるわけがないって。策というのは練りに練ってこそ成功する。こんな苦し紛れの策なんて基本無意味だと。
だけど……頼られるのは嬉しいんだよなぁ!
「逃げてばかりでつまらんのぅ。どれ」
と、吸血鬼の真祖はタイガーレックスの上に着地すると、思いきりタイガーレックスを噛んでいた。少し動きが止まった。立ち止まったタイガーレックスは、目が赤く染まって、毛が白く染まっていく。
そして、私たちをまた追いかける。
「速度上げやがった!?」
追いかけてくる速度が尋常じゃないほど早くなった。
強化しやがった! こいつ、本当に腹立つな。いや、それはおいておいて。まずはこの虎サウルスをどうにかしないといけない。
速度が上がった。もう逃げても無駄だろうな……。
「狙撃!」
私は、麻痺の矢を放つ。
麻痺の矢は、皮膚を貫通し突き刺さると、動かなくなった。状態異常にはめっぽう弱いのだろうか。ならチャンスだろう。
けど、その希望も打ち砕くかのように麻痺が解けて、虎サウルスがでかい咆哮を上げる。
うるさっ!
思わず耳を塞いだ。
「どどどどうしよう!? まじでどうしよう!? 何も思い浮かばないぞ!?」
策が、ない。
ミノタウロスのように川に突き落とす……そうだ。あった。策はあった! 私はミノタウロスを呼んだ。
「ミノタウロス!」
「モォォォォ!」
私の呼びかけに答えるかのように茂みからミノタウロスが飛び出してくる。
私はミノタウロスをよじ登って、頭の上に行く。そして、川へ行けと命令を出した。ミノタウロスはすばやい。逃げることも容易だろう。
「反撃開始じゃこの野郎!」
私は、作戦を決行することにした。




