風邪ひき少女は母親の夢を見る
ピピピと電子音が鳴る。
「38.9℃……。高いですね」
「ぐふぅ……」
私は寝込んでいた。
昨日の夜に熱を出して、今に至る。タダの風邪だと思うが最近はろくすっぽに風邪なんて引いたことがなかったために久しぶりの辛さだ。
「雑炊作りますよ。なにがいいですか?」
「卵雑炊」
「わかりました。安静に寝ていてくださいね」
ああ、熱なんていつぶりだろうか。
小学校三年生くらいだっただろうか。お母さんが私のそばにいてくれて、林檎をすりおろしてくれたりとか子守唄を歌ってくれていたっけな……。
会いたいな。お母さんに。また子守唄歌ってもらいたいし林檎を擦ってもらいたい。
「お母さんなんで死んじゃったんだろうな……」
なんで詐欺にかかったんだろう。
幸せになれるっていう文句でなんで信じたんだろう。幸せじゃなかったんだろうか。私は幸せだったけどお母さんにとっては重荷だったんだろうか。幸せじゃなかったの?
ねえ、お母さん……。
まあどうだっていいや。
一つ言えるのは私は今は幸せということ。友達がいて、親友がいて……。幸せに過ごしてるってこと。
ああ、だめだ。熱で弱ってるな。らしくないこと考えてる。
「げほっ、げほっ」
ああ、あの頃に戻りたい。
――お母さん、見てみて、ゲコゲコ!
――お父さん、お帰りなさい! ゲコゲコ捕まえたよ!
――ゲコゲコの真似ー!
――ゲコゲコ死んじゃったあああああ!
……なんでゲコゲコの夢なんだよ。
というかなんで小さいころの私蛙の事ゲコゲコって呼んでんだよ。いや、子どもっぽいっちゃ子供っぽいがもっと他にあるだろ。ぴょんぴょんとか。というか素手で触ってるとか勇気あるな昔の私。
こういうのって親との思い出を振り返るんじゃないの? この夢も思い出っちゃあ思い出だけど主人公ゲコゲコじゃねえか。ゲコゲコとの思い出なんてどうでもいいだろおい。
「お待たせしましたー」
「ゲコゲコエプロン……」
「はい?」
「いや、なんでもない」
夢で蛙のこと思い出したから蛙捕まえたくなっちゃったじゃねーか。どうしてくれるんだコノヤロー。
「その、あまりおいしくないかもしれませんが……」
「いいよ」
お盆を受け取り、蓮華ですくって食べる。
味うっすい。でも、美味しい。こういった料理のほうが私は好きだ。蓮華ですくってパクパクと口に運ぶ。
「結構顔色良くなりましたね」
「そう?」
「クマが少し薄くなってます」
「まじ!? チャームポイントなんだけど!?」
クマが薄くなったらパン子じゃないじゃん! パンダみたいな子だからパン子っていうのにクマがなくなったらただの子じゃん! なにそれ!?
こうなったら新しいチャームポイントが必要だ。あれだ。私が晴れると言えば晴れるようにしよう。”今から晴れるよ”っていえば……。
「まだ消えてないからあわてないでいいよ……。でも、寝不足ってわけでもなさそうなのにクマすごいね」
「毎日ぐっすり眠ってるけど消えないもんね」
毎日4時間睡眠です。生粋のショートスリーパーなんでそんぐらいでだいじょぶ。
「あと、ごちそうさま」
「早いですね……」
「美味しかったよ」
私食べるの早いんです。




