弓矢に塗る毒
今、私はせっせとキノコを集めていた。
それも、毒キノコを重点的に集めている。食べると麻痺するシビレダケ、食べると口を火傷するホノオダケなどいろんなキノコが生えている。
これを何に使うかというと、矢じりに塗るために使う。シビレダケを塗ると雷属性になり、確率で麻痺る、ホノオダケは炎属性が付与されるということ。
どうやら、属性は塗るものに左右されるようだ。
「結構集めたわよ。で、抽出方法は知ってるの?」
「私は言われた通りゲキリュウダケとポイズンダケをとってきた」
「オーケー」
袋に一杯詰め込まれていたのはたくさんのキノコだった。
私は、地面に座って、キノコを一つ取り出し、笠としたの部分をもいだ。必要なのは笠の部分だけらしいのでこれはいらない。
まずゲキリュウダケの奴から始めましょう。とはいっても、作り方はいたって同じだから別に面白くもなんもないけど。
「まずは笠をすり鉢に入れてすりつぶします」
三人にすり鉢を渡し、それに笠だけとなったキノコを入れる。
そして、私たちはゴリゴリと擦り始める。なんだか森の魔女みたいだけれど、これは必要な工程だから。
たしか、キノコをすりつぶしてくると粉のようにさらさらになると言っていたな。
「なんか薬膳みたいね」
「そうだね。シビレダケとかは麻酔に使えそうだしね」
「毒も使い方によってはクスリになるって先生言っていたな」
その逆もあり得るけどな。
「それにしても今私たちって毒薬作ってるのよね……。なんか本当に悪事を働くみたいだわ」
「魔王になったんだから悪事は当たり前でしょ?」
「そう、よね。うん……」
何かを迷うようにワグマは目を伏せる。
「……国をやっぱり奪ったほうがいいのかしら。一から何かを創るというのは難しいと聞いたの。やっぱり、無茶だってパンドラも思ってるなら……私は」
「ワグマ」
この子は何を言い出すのだ。
無茶だとは思っている。無茶だし、国を作ろうにも長い年月がかかる。でもさ。
「私は別にいいよ。無茶だとは思ってるけど、やれないわけじゃない」
「……そうなの?」
「たしかに一から百にするのは簡単で、零から一にするのは難しいけど……。でも、それこそ燃えるじゃん」
逆境こそ燃える。できないと笑えるものほど実現したくなる。
「簡単に折れてどうするんだよワグマ。めげるなよ」
「……そうね。弱気だったわ」
「パンドラ。粉になったぞ」
「おし、じゃああとはそれを水に溶かすだけだ」
私は組んできていた水を瓶に入れて、そして粉を投入する。ビャクロがすりつぶしていたのはホノオダケ。炎を現すかのように水は赤く染まっていく――
そして、試しに矢じりを浸し、そして、近くの木に撃ってみると、その木に炎がつき、燃えていく。なるほどね。
「なかなかいいな」
これならいろんな敵が出てきても大丈夫そうだ。
よし、あれにいけるぞ。
「さて、私たちはまず魔王軍を作らないとな」
魔王になるからには軍が必要だからな。




