とある村の殺人鬼 ①
私たちは村に案内された。
ギャラクシル大陸ということを聞いて気が遠くなりそうであり、地図を見せてもらったんだが、私たちが住んでいた大陸とは遠い距離にあった。
まぁ一つも国をまたがないからいいのか? いや、よくない。この村があるサンダール王国はこの大陸随一の広さを誇る強大な国家らしい。その端っこにいるってことは結構時間かかるんだよな。
まず王都を目指したい。
「まぁ、あなたたちアクアマリン大陸から来たの? 随分と遠いところから来たのねぇ」
遠すぎるんだよな。
どうやって帰ろうかと考えると、やっぱり馬車だろう。明日商人の馬車が公爵領の一番栄えてる都市に帰るらしいのでそれに同乗させてもらう形となった。
くっそめんどくさい。
「今日はゆっくりしてきなさいな。ただ…夜、出歩かないほうがいいわよ。人殺しが出るから」
ここでも殺人鬼ですか。
人殺しという話題が出ると、アンジュの眼が輝いた。
「人殺しですか? なら、この笑顔の素敵な女の子が捕まえてあげるのです。これもいいことです」
「そうだけど……」
「場合によっては殺しても構わないのですよね?」
「……そう、ね」
「わかったのです」
殺人鬼対殺人鬼かぁ。
夜になり、セーラー服のアンジュは外に出る。
大きな村で、街といえるほどには栄えている。アンジュは殺人鬼が出たという現場に一人突っ立っていた。
すると、アンジュの背後に誰かが立つ。あいつがきっと殺人鬼だろう。
「のこのこと一人でいると危ないぜ? お嬢ちゃん?」
「ひっかかったのです。殺人鬼さん」
アンジュは振り向いて、ナイフを構える。
「なっ……!」
「殺人鬼の思考なんか簡単に読めるのです。あなたもどうやら救われたいようですね? ならば私が救済してあげる、です!」
目が怖い。
アンジュは思い切りナイフで相手に切りかかる。ナイフを持った男は思わず飛びのいた。
「同業者かよ」
「失礼なです。私は足を洗ったのです。正義の殺人鬼ちゃんですよ」
「殺人に正義もくそもねえだろう」
「それはごもっとも」
人殺しは所詮人殺しだからな。
「ちっ、逃げるぜ」
「逃がす? 救いの手を拒むというのですか?」
「あ、ああ拒んでやる。お前みたいなサイコ野郎と戦いたくねえぜ」
「そうですか。ですが、救いの手はだれしも平等に差し伸べられるべきなのです。神様が救うと決めたのならもうその決断は変えることができません。運命です」
「……妙な言い回ししないで逃がさないと言えばいいのに」
アンジュが笑う。
「死は、救済です。人殺しでしか自分の快楽を得ることができないのなら、私が救ってあげますよ」
アンジュがとても怖い。




