引き抜かれ?
日曜日の午後。
私は喫茶店に呼び出されていた。喫茶フロマージュ。現実世界の喫茶店。ブラックコーヒーを飲みながらある人物を待っている。
チリンと入店する音が聞こえる。
「待ちました?」
「待ったよ。三十分遅れてくるとは思わなかった」
時刻は14時30分。本来は14時だったので50分には来てたんだけど遅くてコーヒーを二杯くらい頼んでいた。
「すいません。渋滞に巻き込まれていたもので」
「お金持ちならヘリとかで移動しないの?」
「それ、漫画の中だけですよ。街中はヘリが下りられる場所ありませんから」
「それもそっか」
待ち合わせ人の吽神家のお嬢さん……。魔子さんが席に座った。
そして、店員にミルクティーを注文し、ケーキを二つ頼んだ。
「いやー、九月というのに暑さ残ってますね」
「そうだね」
じりじりと日光が道路を照り付ける。そりゃ暑い。今日は真夏並みの暑さになっているんだとか。干からびるよこんなの。
まぁそれはおいておいて。
「で、私に話ってのは?」
「そうでしたそうでした」
紅茶とケーキが運ばれてくる。
一つ私の前に差し出されたので喜んで食べることにした。モンブランだった。
「単刀直入に言いますと、あなたが欲しい、のです」
「へぇ、引き抜き」
フォークでモンブランを口に運ぶ。
栗の味が口の中に広まっていく。とても美味しい。
「魔王軍を抜けて、ルフラン神聖王国に来ませんか? 宰相という立場で迎えて差し上げますよ」
「どうせなら国王がいいな」
「それは……ちょっと」
「冗談だよ」
それにしてもスカウト、ねぇ。このことは多分月乃には伝えてないな。
私はモンブランを口に運ぶ。
「まず初めに聞くけど、私がなぜ欲しいの? たかが高校生だよ? 宰相の立場ってどういうこと?」
「貴方の身辺調査をしたところ……」
「え、されてたの」
たしかにここ最近つけられていたりしてたけど身辺調査だったのかよ。金持ち怖えよ。
「すごく優秀だということがわかりました。頭も回り、魔王軍を動かしているのは月乃ではなくあなただというじゃないですか」
「うーん。まぁ、そうなるか」
ほとんど口出ししてるもんな。月乃は名ばかりの魔王になっている気もする。それはたしかによくない。たまには月乃自身でやらせないと名ばかりの魔王って言われてしまうか。
でも、どうしても口出しちゃうんだよな。聞かれるし。
「あなたのような方がいて力をつけたのです。あなたの頭脳なら国の運営も、楽勝でしょう。どうでしょう? 私の部下になるつもりはありませんか?」
「もう結果は見えてるくせに」
「……貴方の家を潰してでもいいのなら、といえば?」
「月乃と協力してお前を潰す」
「嘘です。報復が怖いことぐらいは知ってますから」
まあそうだ。
身辺調査をしたということは周りにも聞きこんだということで、報復が怖いというのは知られているだろう。
むしろそっちで有名だからな。テストでオール満点とるよりもそっちの方が有名なのどうかしてるぜ。
「残念で他なりませんよ……」
「それにしても断ることがわかってたくせに、なんで引き抜きなんか」
「優秀な人物は欲しがって当たり前じゃないですか」
と、苦笑いを浮かべていた。
「それでもう一つなのですがもう王子様の格好は……」
「しない」
「そんなっ……」




