第一王子の怒り
騎士の息子がアラン、宰相の息子がジガルドというらしい。
二人は深く傅いている。
「申し訳ございませんでした。みっともなく癇癪を起し、貴方様に向けてしまい……」
「い、いいのよ。たしかにパンドラが言う通り好きだった人を奪われるっていうのは辛いものがあるからね」
「お、お許しいただけるのですか?」
「別に些細なことを問題視して処刑だなんて騒がないわよ……」
「……この、この忠誠は、魔王様に。私、魔王様との友好条約賛成です! 第二王子にそのこと伝えてきますー!」
「ちょっと!?」
話聞かねえ……。
それに入れ替わるように入ってきたのは第一王子だった。やあと笑顔で挨拶してくる彼。今回も特に用事はなく遊びに来ただけだろうな……。
と、二人はその王子を見て顔を青くしていた。
「どうやら和解は成立したみたいだね」
「むしろ魔王様を讃えるようになったわね」
「それは素直に予想外な話なんだけど」
だよな。
押しかけてくるとは前もって聞いていたし、納得させることができれば御の字かなとは思っていた。まさか友好的になるとは思わなかった。
「でも、よかったよ。あの子、第二王子のためならばって辛い王妃教育も一切の弱音を吐かなかった。あの子には第二王子しか見えてなかったものだからそんな辛いことも第二王子の隣にいるためなら受け入れたんだ。そこは褒められる点かもしれないね」
「そうだね。そこは褒めてもいいかな」
「アデュランも目を覚ました、ユリカ男爵令嬢も正気に戻った。これで国に憂いはないよ。本当に恩に着る。ありがとう」
「お役に立てたのなら何より」
頭を下げて素直に礼を言う第一王子。
それが受け入れられないのか、アランとジガルドはつっかかってくる。
「レオン様! なぜこのようなものに頭を下げるのですか! ユリカは被害者なんですよ?」
「あなたは仮にも王子だ。ユリカがひどい目に遭っているというのに……」
第一王子レオンって名前なんだ……。
レオンはアランとジガルドを睨む。その睨みで思わずすくんでしまったのか、腰を抜かした。いや、普段ニコニコしてる人のにらみって怖いよね。
「お前たち。もう夢を見る時間は終わりだ。被害者? あいつは立派な加害者だった。まともになったとはいえ、過去は消えない。国としては憂いはないが、私としてはエレメルを追い出したこと、まだ怒っている」
「ひ、ひい!?」
「なぜあんなにも賢い宰相からこんなバカ息子が生まれるのか知りたいものだ。恋は盲目っていうやつか? それでも宰相の息子か? 幅広い視野を持つべきだ。何も見えてない、何も知らないとあっては今の一番の憂いは貴様らだろうな」
こ、怖えーー。
普段穏健な人が怒るとこういう風になるんだろうか。
「第一王子。そこらへんでいいわよ。怒るのはわかるけど抑えて。エレメルが怖がってるわ」
「そ、そうだった。すまない、エレメル」
姿勢を正し、礼をする。
んじゃ、とりあえず私はこの二人を調教……もとい、洗脳……もとい、お説教にいってきますか。
私は怖くて震えている二人を押し出し、書庫にまで案内した。
あれっ。最後不穏な言葉が。パンドラさん何するつもりで?




