ゲームに誘われた
眠たさが思わず出てしまう月曜日の昼休み。
私は一人で机に突っ伏していると、こつんと頭を叩かれた。顔を上げると私の友人である阿久津 月乃がやれやれ顔で立っていた。
隣にはもう一人の友人の球磨川 白露が立っている。何の用だろう。
「パン子! 今日はあれの発売日よ!」
「あれ?」
「ほら、今話題のVRMMO! その名も……”Infinity Unlimited Online”の!」
「あぁ……」
月乃が口に出したのは今絶賛話題のゲームだった。
昔にAnother Arcadia Online……通称A2Oを発売した会社の新作……。コンセプトは何でもありのもう一つの世界ということだ。
何をするのも自分次第。何が起きるかはプレイヤー次第。そういうコンセプトで売り出しているゲーム。正直、私は買わないつもりでいた。だって高いし……。
「どうりでみんなずる休みしてるんだな」
「並ばないとすぐ売り切れるもの。まぁ? 私にかかれば取り置きは余裕だけどね?」
「さすが御令嬢。お金持ち」
お金あるやつはいいよなぁ。
私はあまりないんだよ。もらってもすぐにソシャゲとかに使っちゃうし。バイトするつもりないし。
「もちろん、あなたたちの分もすでに取り置き済みよ! 帰ったらやりましょう!」
「おー!」
「……私ヘッドギアないけど」
「……帰りに家電量販店もよりましょう」
ヘッドギアも高くつくでしょ。
今そんな手持ちない。
「今手持ち20円くらいなんだけど」
「使いすぎよソシャゲに……。それに、ヘッドギアくらいなら買ってあげるわよ」
「それもそれで悪いし……」
「あら、ヘッドギアのお金くらい私にとってははした金よ?」
「さすがお嬢様」
なら言葉に甘えることにした。
「で、IUOの話に戻るわね」
「あ、うん」
「私たちも参戦することは決定したのだけど…なにをやるかが問題よね」
「あぁ、そうだね」
目的なしでやるというのは私にとっては少し辛いし。
目的に向かってがんばるというのが結構好きだったりもする。
「だから、私たちで国を作りましょう? それも、魔王の国をね?」
「ま、魔王?」
「そう。だから種族はなるべく悪いほうにしてね? 悪魔とか…」
「なぜに魔王?」
「かっこいいからよ」
そういえば月乃って結構悪役に憧れるタイプだもんなぁ。
クズの悪役というより、悪役自体に何かしら目的があって、その目的の為に頑張るというのが月乃の琴線に響くらしい。
別に魔王じゃなくてもいいとは思うけどさ。
「白露はそれでいいの?」
「私はなんでも構わん」
「ああ、そう」
「パン子はどう? 悪役はやだ?」
「私もどっちでもいいけど……」
「なら決まりね! みんな悪役になるのよ!」
そういうことで決定した。