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■ 世界の中心とも言われる大国[サールス]。その西北端に位置する街[ヴェンツス·コニウンゲーレ·ポープルス]。その街の一角にある宿屋の一室に異様な光景があった。その部屋には家具はあまりなく、ベッドとクローゼットが1つ、そして小さな机と椅子が二脚あるだけだった。そしてその椅子の一脚にほとんど下着のような格好で座り静かに眠る少年ーガンマノイドと、その目の前でペンと手帳を握りながら床で眠る女性ーシャドラがいた。やがて、ガンマはゆっくりと目を覚ますと、
「シャドラ。起きろ。朝がきた。」
そう言われて、シャドラは寝ぼけ眼を擦りながらゆっくりと起き上がった。
「ガンマってタメ口だと結構口悪いのね。確かに昨日タメ口で良いよとは言いましたけども。」
「そんなこと言われてもこれが当機の話し方なのだから、修正は困難だ。」
などと二人は会話しながら朝の支度を始めた。そして一通り支度が終わると、シャドラは椅子を引っ張ってきてガンマの対面に座った。
「さて、昨日聞き足りなかったことをいくつか質問するね。まず、大戦前後について知っていることを教えてくれる?大戦中は昨日何となくわかったから。」
「了解。まず当機は大戦末期に製造された機体で、大戦以前のことはある程度は分かるが、大戦に関することは分からない。だから大戦が始まった理由なども知らない。そして、大戦の結末や今に至るまでの経緯は分からないが、当機がスリープモードに入る前までなら説明は出来る。」
「あれスリープモードだったのね。大戦に関しては分からないっと。じゃあ、続けて。」
「当機の最後の戦場は当時シチリア半島と呼ばれていた場所だった。当機はその時の戦闘には勝利したが、戦況は激しいものだったので腹部に大穴が空いた。その修復のため、当機は自己再生プログラムは起動し、スリープモードに入った。」
そこまで言うと、納得できなかったシャドラは手を前に出して、ガンマの超機能にツッコミをいれた。
「んんん?ちょーっと待ってね。その自己再生プログラムって何でも直せちゃうの?見たところお腹に傷1つ無いのだけれど?」
「そんな訳がないだろう。いくら当機でも核を破壊されたり、粉微塵になれば自己再生は不可能だ。だから不死身ではない。」
「逆に言えばそこまでしないと倒せないってことよね?どれだけ高度な技術が使われてるのよ。まあ、とりあえずいいか。何となく経緯は分かったから。要は相討ちしたってことでしょ?」
そうシャドラに言われてガンマは少し不満げになると、こう切り返した。
「当機への質問はもういいだろう。次は当機に現在の世界情勢を教えてくれ。」
「おーけい。確かこの辺りに地図が、、、」
そう言って、シャドラはカバンを漁り一枚の地図を取り出した。そして地図上じ大きな円を書くと、
「とりあえず大体ここからここまでがサールスで、この島が私の故郷のグラキエス·アゲルと呼ばれる国ね。そしてこのサールスの東にあるのが、マキナ·プリンシパトゥムと呼ばれる島国ね。謎が多くて私もまだあんまりこの国のこと知らないのよね。あとはサールスの南東に位置するアルバス·ロングス·ヌーベースという国ね。ここは原住民の方が住む珍しい土地ね。こんなところかしら。」
ガンマは少しの間黙り混み、シャドラに慎重な声で質問した。
「シャドラ、当機が記憶する限り大戦前は190以上の国々が存在していた。しかし、現在は4国しかなく更にその9割程が一国となっている。当然それだけ大きければ、民衆の反発もより大きいだろう。シャドラならそういう場合どう対処する?」
「うーん。武力行使とかかな?それ以外にあんまり方法ないと思うけど。」
「確かにそうかもしれない。だが当機にはもう1つ候補がある。それは...洗脳や人格の書き換えによる意思統制だ。」
ガンマの言葉を聞いた瞬間に昨日の凄惨な光景がシャドラの頭をよぎった。そしてシャドラは震えだした手を押さえながら、ガンマに聞き返した。
「つまりサールスは民衆全員に洗脳をしているってこと?そんな...まさか欲制プログラムで行っていたのは洗脳による更正だったの?そんなことって...」
「しかしその方が可能性が高い。なぜなら、武力行使による統制ならば民衆は恐怖に怯え周りの目を気にしながらひっそりと暮らすだろう。しかしここの民衆はそんな気配は欠片もなく、むしろ活気に溢れた生活をしている。」
シャドラはこれまでのどかな街だった光景が、一気に仮初めになっていく感覚に襲われ、吐き気を催した。そして、口に手をあてながらゆっくりと呼吸を整えて、気持ちを落ち着かせた。そして、ゆっくりと話始めた。
「じゃあ、もう政府の役人は信用出来ないわね。特に階級の高い人は。でもだからといって不振な行動をとれば洗脳されてしまうから注意しないといけないし。ガンマはこれからどうするべきだと思う?」
「まずは信頼のある仲間を集めることだろう。どれだけ集まるかは分からないが、民衆の中にも少なからず疑念を抱いてる者もいるだろう。その足掛かりとしてまずは、残りの英傑を探すのがいいだろう。一人居場所に検討のついている機体がいるからそこk...」
ガンマが話していると、突然大きな音が街に響き渡った。そして、大きな音のあとに気分の上がるような陽気な男性の声で、
「一等騎士団長がお見栄になられたぞ!!!皆歓迎の拍手と歓喜の言葉で迎えろ!!」
という指示が飛んだ。すると至るところから、割れんばかりの拍手と歓迎の声が鳴り始めた。驚いたシャドラが窓から大通りを見ると、豪華絢爛な衣装の騎馬に乗った貴族のような小太りの男性が、兵を引き連れて凱旋しているところが目に入った。
なんだか最近雨が多くなってきてて、段々梅雨になってきているのかなー?なんて思い始めました。あまり雨は好きな方じゃないので、少しブルーな気分です。まあでもめげずに頑張って過ごしますw