story1《遺物》
■ ~50年前、この国はまだ地図に存在しなかった。しかし史上最悪の大戦が終結すると、各地の賢者が集まり、1つの都市を作り上げた。それがこの[サールス]である。過去争っていた190以上の国のほとんどは今ではサールスに取り込まれ、安寧を取り戻した。ここはそのサールスの西北端。北方の国々から近い地域であるので、気候は北方に近い。~
「なるほどなるほど。やっぱりサールスには歴史が埋まってそうね。これから情報収集頑張ろう。」
そういって見入っていた案内板から目を離し伸びをしたのは、北方の更に北の地域から来たストーリーテラーのシャドラ。彼女のいる街はサールスの西北端に位置する[雪原都市:スノーダスト]。厳しい寒さにも負けない活気のある都市だった。道路の除雪は行き届いており、政府の管理がきちんとされていることがよく分かった。彼女は世界の歴史に触れるため故郷から飛び出してきてこの最も近いサールスの地に来たのだ。そのため朝宿屋をでてから歴史について書かれているものがあればその度メモをしていた。そうして街を歩き回りながら、シャドラは段々とこの国の色を理解してきた。
「サールスってホントに治安が良いのね。犯罪被害届は永年0で、常にそこかしこで役人さんが見回ってて。私も気を付けないと捕まっちゃうかもね。」
そう言ってシャドラは街の中心にそびえ立つ四角い建物に目をやった。昨日宿屋の老人から聞いた話によると、欲制の立方体というらしい。真っ白な立方体で入り口などは見当たらず街の雰囲気とは関わりのない科学的な建物だった。
「捕まっちゃったらあそこにいくのよね...あのなかでは何してるのかしら。」
そう言いつつシャドラは昨日宿屋の老人から聞いたことを思い出していた。
「シャドラさんはサールスは初めてなんですね。あそこにいったらまず気を付けることは振る舞いです。観光の範疇なら良いのですが、少しでもマナー違反をしてしまうと欲制の立方体につれていかれます。」
「欲制の立方体?何をされるんですか?」
「詳しくは公開されていませんが、あそこでは欲制プログラムというものを受けさせて罪を清算するそうです。ただ何をしているのか分からないので私個人としては少し怖いんです。」
「そーなんですか...気を付けます。教えくださってありがとうございます!」
回想をしていると視界の端で欲制の立方体に連れていかれる男性を捉えた。
「うーん。何してるか凄く気になるなー...こっそり忍び込んで見ようかな?狩で鍛えた私のステルススキルならいけるはず...!」
と謎の自信と好奇心を胸に役人達の後をついていった。
■ 「ここが..欲制の立方体。ゴクッ...」
シャドラの目の前には白い立方体がそびえ立ちその近くには、[関係者以外立入厳禁]とかかれている立て札があった。欲制の立方体は意外にも林の中にあり、尾行するだけでも一苦労であった。立方体の入り口は鍵付き自動ドアのようで役人が前に立つと自動で開く仕組みであった。先程役人が入って行ったばかりなのでまだ扉は開いていた。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず..よね。よし!潜入調査開始!」
そう意気込んでシャドラが中に入っていくと、建物の中は長い一本の廊下にいくつもの横道が繋がっており、気を付けていても迷いそうな道になっていた。シャドラが蛍光灯の照らす単調な風景の中をあてもなくさ迷っていると1つの窓ガラスが見えた。シャドラはようやく見えた別の景色にワクワクしながらその中を覗いた。そして、
「え...何してるの...これ?」
絶句した。
シャドラの視界に写ったのは目まで覆うヘルメットのようなものを装着した人が椅子に縛り付けられてもがき苦しんでいる光景だった。ヘルメットのようなものには大小無数のケーブルが繋がれており、どこに繋がっているかは見えなかった。手前にいる人は凄く暴れて苦しんでいるが、奥にいくにつれて段々と静かになっていくのがわかった。出口らしき扉の近くまでいくと最早無表情になっていたり、少し笑みを浮かべる人もいた。
「え...あう...」
シャドラは声にならない恐怖と凄惨な光景に堪えきれずその場から逃げ出した。好奇心に負けて見てはいけないものを見てしまった自分を悔やんだ。涙で瞳を潤ませながらひたすらに走っていくと、何か袋のようなものに当たった。そこは倉庫のような場所で武器や機械、大小さまざまな物が置いてあったが、その袋だけは一際特別に見えた。
「何だろうこれ..大きい。何が入ってるのかな?」
シャドラがおもむろにその袋を開けると、中には一人の青年が入っていた。その青年は黒髪で短髪で小柄というありふれた格好をしていた。シャドラはこの異様な施設の倉庫のようなこんな場所で人がいるとは思わなかったので、少しの間呆然と気が抜けていた。少しして取り直すと青年の意識を確認するために頬を叩いたりしてみた。するとカチッという音と共に駆動音が鳴り始め、目に光が点り、キーンという高い音がした直後、青年が目を覚ました。
「あなたは一体誰ですか?」
とシャドラ不思議そうに尋ねてみると、青年は状況を把握するためか一旦辺りを見渡し、一通り整理がついたところで、シャドラに返答をした。
「俺の名前はガンマノイド。大戦の遺物の1つ、[銃の達人]だ。」
「大戦の...遺物?」
政府の機密の建物の中で、一人の女性と1つの機械が出会った瞬間であった。
今回は前よりはしっかりかけているとは思ってますw
まだまだこれから頑張っていきたいです。