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死にたい男。

続きになります。


では、どうぞ♪

  Brains。




 私は何故死ねないのだろう。


 私はボロボロの身体を搔き抱きながら自問自答する。


 既に腐って来ている傷もあるっていうのに、一向に死にそうにないこの身体が憎い。


『それ…に、ぜんしん…が…ひ…どく…うずく』


 (かゆ)みなんかじゃない、身体をじくじくさせる鈍痛と云うかうずきというか、表現のしようがない感覚はなんだろう。


 それに関節が思うように動かない。お陰で上手く歩けない。


『と…にか…く。うち…までかえ…ろう』


 私は云うことを聞かない左足を引きずりながら前に進む。足を一歩進める度に霞んだ両目に太った白いウジ虫が地面に落ちていくのが判る。


『なん…て…ことだ』


 こんなになっても死ねないなんて、何か理由があるのか。


 すっかり(かす)れてしまった声を、息も絶え絶えで発しながら私はひとりごちる。


 道にはウジと腐り落ちた体組織と体液が、足跡の代わりに残っていく。


「あんなトコに居たぞ!」

「保護しろ!」


 またか、しつこいな。


『な…にか…よ……か』


 私は振り向きざま問い掛けようとした…が。


「動きが止まったぞ!」

「あみ!網だ!」


 警察だか何だか分からない奴らが、私を取り囲みながらなにかを叫んでいる。


 ブワッと、漁網みたいなのが肩から腕に絡みつく。


 痛い!!


『ぐふっ!ガワァアア!』


 私の体に引っかかった網目が腐った肉を削ぎ、まだ生きている筋肉を引き裂くような強烈な痛みが脳天を直撃する。


「イダイ!!ああああああああ!」


 警官の一人が右手の肘を抑え転げまわる。よく見るとそいつの肘から先がない。


『ぐちゅぐちゅ…』


 ああ、私が食いちぎったのか。いつも思うが人体はもろいな。


 私はまだビクンビクンと痙攣している彼の右手の肉を噛みちぎり、くちゃくちゃと咀嚼する。


 割と美味いな。これ。


「お、おい!しっかりしろ!」

「本部本部!負傷者が出た!負傷者が出た!救急車!救急車!」

「発砲だ!発砲!」

「撃て!撃て!」


 バン!バン!バン!!


 身構える暇さえなかった。


 手足のあちこちを二十二口径の弾丸が貫通する。


 ように感じた。


「と、止まらない!」

「コイツ動きが止まらないぞ!」


 尻込みする警官らしき奴らを私は第三者みたいな視点で眺めつつも、撃ち抜かれた手足が痛くてたまらない。


やめさせないと!


『うぅ…つぅ…なはぁ…!』

「わ、わわ!いたい!いだぁー!!」

「貴様抵抗するか!」


 ガァ―ン!!


 あれ、右目がいきなり見えなくなったぞ?


 うん、視界が暗く、いし…き…なく…な……。


 ドタン。


 私は引きちぎった警官の腹の臓物(はらわた)の中に顔を突っ込んで、時を停止した。




 彼は実験棟〖U。27〗の【№。645558】通称[不死体0741号]




 彼は人体が付与されるU棟に於いて、外傷では死ねない実験に供された被検体であり、失敗作でもあった。


「う…う…。こぉ…こあ?」


 目が覚めた私は黒っぽいビニールの袋の中にいた。右目は見えないが、意識は戻ったようだ。


 とりあえず、この息苦しいところから出なければ。


 そう思った私は難なくビニール袋を破いた。


「せ、先生!遺体が!」

「あ?うあ⁈な、なんだ!」


 眼前に慌てる緑衣の男女が見えた。うるさいな。


「ぎゃ!!」

『オわぁ…ァアアああああ!!!』




 彼が失敗作たる所以は、傷を負えば負うほど理性が統御できなくなり、よって力の加減も出来なくなることと。


 傷は完治することなく腐り剥離していくこと。


 最早、人たる姿を保てない事であった。




  Brains。  死ねない体。


お読みいただきまして、ありがとうございます♪

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