表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルビトリウム  作者: 新条満留
第一章 アルビトリウムの伝説
2/492

傷心の少年

傷心の少年


 少年がゆっくりとした足取りで『紅葉通り』を歩いていた。彼の名は本条護。彼はたった一つの事以外、何も考えることもできなかった。それは一月ひとつきほど前に亡くなった最愛の女性、桜木香のことである。彼は彼女の身に起こった不可思議な悲劇――謎の死――から立ち直れずにいた。彼は未来あすを失い、将来のことも考えられず、苦悩し続けていた。

 「――何故なぜ――」

 この問い掛けが彼の思考に壁を作り、その先に進めなくしていた。今、彼が歩いているこの公園の『紅葉通り』が公園を周回しているように、その問い掛けから始まる彼の思いが螺旋らせんのように巡り続けている。

 「何故、俺を残していなくなってしまったんだ? 俺もお前と一緒に逝きたかった」

 護はその思いに囚われると、決まって心に浮かぶ彼女との楽しかった思い出が彼の心を占めていく。それが彼の頭の中で繰り返されていた。悦びに満ちた過去と哀しみ溢れる現在との格差が彼を居たたまれない気持ちに陥れていた。


 一人で俯き歩き意気消沈した様子の護を『運命の丘』の上から哀しみに満ちた目で見つめている一人の女性がいることに、この時の彼は気づく筈もなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ