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RPGのリアル事情  作者: カリウム
ゲームの世界のリアル事情
8/9

名前のリアル事情

 [あなたの名前は何ですか?]


『んー、そうだなぁ……やっぱり自分の名前にするのがベストかな……カッコイイ名前のノアにしよ』


「……っ!?」


 勇者は、まだ暗い部屋の中で軽く微動した。

 まさか自分の名前とダブってしまうとは思わなかったからだ。


 [ノア でいいですか?]


『おっけー! まあ、妹の名前なんだけどね(笑)』


「っ!?」


 今度は大きく肩をビクリと動かす勇者ことノア。

 そのリアクションからかなり驚いたのであろう。まさか『奴の妹』と同じ名前なのだからだ。

 なんとも言えない表情を浮かべながら、勇者は布団を頭まで被った。


 その瞬間、暗かった部屋は徐々に明るくなっていき、周りにあるものが目で確認できる程になった。


 [ノア、おきなさーい! 今日が出発の日でしょー?]


 電子音と共に、画面に勇者のお母さんの台詞が浮かび上がった。それと同時に、今まで寝ていた勇者はムクりと起き上がり、寝ぼけ眼を擦る。

 勇者は言葉を発することなく、黙ったままベッドから降りる。そしてここから勇者の操作を開始できるようになる。


『よっーし、やるか』


 奴は気だるそうにそう呟くと、早速だが手慣れた操作で勇者を動かした。










「あー、始まったよ。最悪……」


 勇者は今にも泣きそうな声で、勝手に動く体を見ながら、そう呟いた。


 先ほど、お母さん役の人が大声で台詞を喋ると、その台詞がそのまま画面に映るシステムになっている。しかしそれは、イベントの時限定であり、このように何も無い状態では普通に話しても会話は映されない。

 なので、どんな酷い愚痴を言っても、『奴』は聞こえることなく勝手に操作するのだ。決められた台詞のみ映されるのは、実に嬉しいことである。


 そして、今現在『奴』に操られてる勇者は、バトル以外の時は殆ど体を乗っ取られている状態だ。

 バトルシーンの時は、自ら動くことが可能だが、普段、疲れた体で休むことなく走り続ける仕事はとてつもなく精神的ダメージが大きい。

『奴』には分からないが、いやいや坂道をダッシュし続ける勇者の身にもなると、一日の給料の額に納得がいくだろう。

 自分の意志ではもう限界、吐く。と思っていても、体が勇者の思考を無視し、走り続けるのだ。これ程苦痛なことは無い。

 なのでよく、画面に[30分以上遊んでいるので、こまめに休憩しましょう]等と出るのだが、アレは全部勇者の体を休めるために表示しているのだが、大半の『奴ら』はそんなの目にも留めない。その結果、勇者は平均3〜4時間走り続けることになるのだ。



 [体に気をつけるのよ? いってらっしゃい ノア ]


 画面から見ただけでは、キャラクターの表情は少し見えにくと思うが、勇者にはハッキリと、お母さん役の人の顔が分かる。

 台詞と共に、勇者に同情するかのように辛そうな顔をされた。眉をハの時に寄せ、今にも勇者に祈りを捧げるような勢いだった。


 やめろ、そんな顔するな。俺を可哀想な目でみるな。同情するな……


 早速、勇者のメンタルは崩壊寸前になるのだった。






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