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RPGのリアル事情  作者: カリウム
ゲームの世界のリアル事情
6/9

OP(オープニング)のリアル事情

だんだん短くなります

 [あなたは勇者です。魔王を倒し、この世界に平和を取り戻して下さい。あなただけが……唯一の救いです…………どうか……この世界の…………平和……を]



 ある賑やかで平凡な街に、魔王を倒せるような力を持った子供が産まれました。

 その子供は小さいながらも勇敢な性格で、何事にも本気で取り組み挑戦してきました。

 そんな小さかった子供はスクスクと育ち、とうとう明日で十二歳になります。

 十二歳の誕生日、お祝いするべく家族は大きな誕生日会を開こうと計画を立てていたした。


 しかし、誕生日当日にある事件が起こってしまうのです。




 [魔王がやって来たぞー!!]

 [今すぐ逃げろ、さもないと殺される!!]


 街にいた人たちの悲鳴や叫び声が街中にコダマが響き渡りました。

 ある人は転び、ある人は魔王軍に捕まり、ある人は家族の目の前で殺されてしまいます。

 お腹に魔王の手下の腕が貫通していて、大量の血をボタボタと流す人までできました。

 更には、女と子供を拐う魔物まで現れ、【アルゼルト】は滅ぶ寸前まで崩壊していました。


 するとそこに、赤黒い服を全身に纏い、血の色に染まった紅のマントを翻す魔王の姿が見られたのです。


 [我は魔王なり。さあ皆の者、今すぐ我にひれ伏すがいい。さもなくば首を切り落としてやろう]


 兜の中から殺意が満ちた目を鋭く光らせ、ニヤリと不気味に笑います。

 多くの者が殺され、地面に血を流しながら倒れており、生き残っている者は恐怖を顔に浮かばせながら、急いで頭を地面に付けることしかできませんでした。


 しかし、たった一人、魔王の言葉に逆らった者が居たのです。


 [なんだオマエは? はやく我にひれ伏せ。首が飛んでもいいのか?]


 少年は黙ったままとにかく魔王を睨み続けます。

 そんな魔王は頭にきてしまいました。

 コイツを殺さなければならない。生意気な子供だ。

 と、魔王は眉をひそめそう思っていたのです。


 [よかろう。ひれ伏す気がないのはよく分かった……今すぐ殺せ]


 魔王が吐き捨てるように命じると、周りにいた手下は武器を振り上げ、少年に向けて振り下ろしました。

 少年の家族は必死に何かを叫んでいます。

 けれど魔王には、そんな声が届くことすらなく、死ぬ運命にある少年を静かに笑って見ていました。

 ギラリと武器である剣が不気味に光、今、少年の心臓へと突き刺さろうとしました。

 人々が目を逸らし、甲高い悲鳴をあげました。


 誰もが死ぬと思った瞬間、少年の体が目もくらむくらいに黄色く輝き出したのです。


 [なっ、なんだこの光はっ!? ま、まさか……]



 魔王たちを黄色い光が包み込み、一瞬で消えていくのです。

 刹那、魔王軍は一人残らず消え去ってしまいました。


 [やった……のか?]

 [あの少年が倒したのかっ!?]


 生き残った街の人々は歓声の声を上げ、少年を見つめます。

 すると不思議なことに、地面に倒れていた人の傷が癒え、生きていた者は立ち上がり、身動きが取れるようになっていました。

 しかし、既に息絶えた人は生き返ることはできませんでした。

 それでも、生きている人たちは滅びなかったことに盛大に喜んだのです。


 [す、凄い……まさに奇跡の子だ! 奇跡の子バンザーイ!]


 更に声が街中に響き渡りました。

 この日からその少年は《奇跡の子》と讃えられ、街中の人たちから感謝され続けるようになったのです。





 それから約五年の月日が経ち、少年は立派な青年に成長しました。

 そしてその青年は、魔王への被害が出る前に、まだ生きていると言われている魔王を探しに旅に向かおうとしているところだったのです。



【ゲームスタート】







「そろそろ出番だな」


 勇者は初期装備の姿で、準備を始めていた。

【アルゼルト】の中にあるPC専用の家で勇者は待機していたのだ。



 ここで一つ説明しよう。

 先ほどの物語は、実際にこの世界にいる人たちが演じたものだ。

 その証拠として、現在のアルゼルトを見ると、その事についてよく分かる。






【アルゼルト】


「よし、オープニングは終了したぞ。ただちに自分の持ち場につけ!」

「了解しました!」


 魔王の指示で、アルゼルトの住民は一斉に動き出した。

 地面に倒れている死人は、ムクっと何事も無かったように立ち上がり、自分の服をパンパンと叩いた。


「おい、誰か急いで服を恵んでくれ! ペンキがべっちょりしてて気持ちが悪い」

「コッチにも新しい服を頼む! 今回は盛大にやらかしちゃったから服が真っ赤だ」



 秘密その一、血は全て赤いペンキである。

 一回目の時はケチャップを使用していたが、食べ物を粗末にしてはいけない。との声が上がったので、ペンキを代用にしていたのだ。


「係委員、もう炎と空の色のCGは消してもいいぞ」

「了解しました社長」



 秘密その二、炎や空の色の演出は、全てCGである。

 実際に燃やすとお金の消費が凄いことになるため、魔王の城にあるボタン一回押せばできるCGを使用している。


「あっつー、着ぐるみ着てると暑くて仕方がない……」

「まあ、社長を近くて見れたから良しとしようじゃないか」



 秘密その三、オープニングに出てくるモンスターは、着ぐるみを着た会社員。

 ちなみに、着ぐるみを着るのはオープニングだけであって、通常のモンスターなどは、全てCGである。


「もうこの刺さった腕、抜いてもいいよね?」

「いいけど、それで遊ぶなよー」



 秘密その四、剣や腕はプラスティックでできている。(ようはただの玩具)

 百円ショップに売っているような剣と腕でできている。また、貫通しているように見えるのは、ハロウィンとかでよく見る、頭に包丁が刺さったように見える飾りと同じものを使用している。


「みなのものよく聞け、今から大掃除を始めるぞ! ブラシを片手に、ゆくぞ!」

「「「おぉー!!」」」




 兜を取った魔王は、風に黒髪をなびかせながら、左手にモップをもってペンキで赤く染まってしまったアルゼルトを指差し、大声で叫んだのだった。




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