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RPGのリアル事情  作者: カリウム
ゲームの世界のリアル事情
1/9

勇者のリアル事情

様子見で投稿します。


※分けました

 

【アルゼルト】


 アルゼルト…ソコはこの世界の《始まりの街》と言われている。

 賑やかで洋風な街並みに、石畳で敷き詰められた路をのんきに歩く人もいれば、約束に遅れたのだろうか、急いで走っている者もいる。


 辺りを見渡せば、レンガで造られた家が周りにたくさんあり、それぞれの家の形はどこも似ているが、その家の人の好みで、家の色を変えられることができるので、みていてとてもカラフルで綺麗だ。


 人が多く賑わっている所に足を運ぶと、街の中心に建てられた女性の像を囲むように、それぞれ色んなものを売っているお店が至るところに見える。

 果物の種類が豊富で、見たことのないような食べ物を売っているお店があれば、一見怪しそうな雰囲気が漂っていたお店ではあるが、実はすごくよく効く薬やポーションを売っていたりしているなど、この広場は市場のようになっている。



 遠いところから商売に来た人たちは、もちろん泊まるところが無いため宿に行く。宿といっても、安いお金でとめてもらえるところもあれば、高いお金で心地よいベットを用意してくれるところもある。

 それぞれの長所をいかして、宿で働いている人はお金を稼ぐのだ。



 ここの街には、レストランや病院、訓練所、酒場…そしてギルド。さまざまな建物が数多く存在している。



 そんな人で賑わっている街に、一つ、青い光が女性の像の前に突如現れた。

 目も眩むくらいに光輝いているが、慣れているのか街の住人は誰一人と驚かない。

 街の中心にある像で、とても目立つ場所なハズなのだが、たまたま通りかかった人がチラッと見る程度で気にするような様子は見られなかった。



 光は最後に大きくピカッ! っと光ってから、徐々に光る力を弱めて、ついには消えてしまった。そして、光が消えたあと、太陽に照らされたのは、丈夫そうな鎧を着込み、重そうな剣を背中に納めた男の人の姿だった。

 その人を一言で表すなら…それは……




『うわー、懐かしいなここっ!』


──勇者


 魔王を倒すことを目的とし、さまざまな困難を仲間と成し遂げ、日々道中で出くわす敵をたぎ倒しながら、困っている人たちを助けたり、敵を倒すことで経験値を得ることでレベルが上がっていく、あのRPGゲームの主人公──勇者だ。


 勇者(・・)は言葉を発することなく、ただ黙って突き進んでいく。

 ガジャッガジャッと歩くたびに、鎧どうしが擦れて、金属音をたてる。鋼でできている鎧と、太陽の光でギラリと光る銀色の鞘に納められた剣をみるだけで貫禄を感じるまでに、勇者は成長を遂げたらしい。


 兜をつけている訳では無いので、露になった茶髪の髪の毛が風に撫でられて揺れる。

 キリッとした顔つきではあるが、素晴らしくイケメンと言えない。しかし、どことなく中性的な顔つきだ。結論的に言うと、普通よりはいいと印象を与える程度だ。



 しかし、疲れているのか目の下には隈が出来ており、瞳は虹彩を失い黒ぐろと濁っている。顔も少し痩せこけており今にも倒れそうだ。

 傍からみたら、その鎧を着ているのが危うしく感じるほどである。



『えっと、教会ってどこだっけか?』


 何度も同じ路を繰り返し歩いては、突然走り始める勇者。ぐるぐると歩き回って約六分。像のすぐ後ろの方向にある教会をやっとのことで見つけ、中には入った。


 教会の中を歩き進むと、神父さんがノートを広げてその場に佇んでいる。そして、ニコニコとした笑みで話しかけられるのを待っていた。



[さて、今回はどういたしましたか? ……お祈りですね]


 神父さんはニコニコとした笑みを崩すことなく、お祈りを捧げる。そして、定番のあの言葉ですべてを締めくくらせた。


[あなたに神のご加護があらんことを!]


『よーし、今日はこれで終わりっと。さぁ、飯くおー』






















「………………」

「………………」


 取り残された神父と勇者は、その場に固まったままアイコンタクトをとった。

 そして、二人で頷きあうと、同じタイミングで息を吐きだす。


「「ふぅ~」」


 勇者は床にドサッと座り込んで両足を伸ばし、長く深い溜め息をついた。


「あー、疲れた~。俺、今日は何時間歩いたんだ? 十時間か? 十時間歩いたり走ったりしてんのか? あ"ーだりぃ……動きたくねぇ……やめてぇ、勇者やめてぇ……」


 勇者はそんなことをブツブツと呟きながら、自身についている鎧と剣を急いで取り外し、そこら辺にぶん投げた。



 それを見ていた神父は苦笑いを浮かべながら、だらしない姿になった勇者を見る。

 現在の勇者の姿は、白いTシャツと黒い短パンだけだ。もはや勇者の『勇』の文字をかき消すような酷い姿である。

 そんな勇者の頭に、片手で持てないくらいの分厚い本を神父は容赦なく振り下ろした。



「いったぃ……!?」



 ガゴンと、鈍い音が教会に響き渡る。

 勇者は両手で後頭部を必死におさえて悶絶していた。言葉を発するこすらできなく、掠れた声だけが口からでてくる。

 目には涙を溜めて、とにかく言葉にならない叫びをあげて、一生懸命に脚をバタバタさせて痛さを堪えている。


 ここでやっと、今まで黙っていた神父が、勇者に向かって喋り出した。






「さっさとカネを返せよコノヤロー。アァん? ぶん殴るぞ?」



 苦笑いから突然、真顔になる神父の顔と口調からは、本当に神父なのかと疑いたくなるような、とても汚い口調だった。

 神父は勇者と同様に、そこら辺に適当に靴を脱ぎ、神父なのにも関わらず教会の机の上で大の字になりくつろぐ。


「勇者はまだいい職業じゃねーか! オレをみてみろよボケが、ずっと同じ場所に突っ立ってんだぞ? どれだけキツイ作業だかわかってねぇーんだよオマエは。作り笑い浮かべながら待つのつれぇーんだからな! 死ぬぞ」



 神父もとい真腐(しんぷ)は、自分の着ている服を勇者のように急いで脱ぎ始めると、畳むことすらしないでその場に放置する。頭に被っているモノも服の上に放り投げた。


 すると、目に負担がかかるのではないかと思えるような、ギンギラギンな金髪が現れる。

 オールバックにしており、顔には髪の毛一本たりともかかっていない。しかし、そんな彼の顔は、あまりにも整いすぎている。


 つり上がった目の瞳は、誰が見ても美しいと思えるような、綺麗なライトグリーン。筋の通った鼻に、キュッと引き締まった口。顔全体のバランスもいい。背丈も高く、スラッとした体型。街中を歩いていたら、擦れ違った人が二度見ぐらいはするほどである。



 ──ただし、性格を除けばの話だが。



 そして、顔だけ神父…もとい真腐は愚痴り始める。


「そもそもよー、神様に祈ってるけどよー、実質ここの世界の神様は魔王だぜ? ここの世界の主導権はぜーんぶ魔王のモノだぜ? いいのか? 魔王をぶっ殺す勇者が魔王にお祈りしていいのかぁ? アァん?」

「知らないよそんなこと。俺に聞くな……そもそも何でそんな事までして神父なんかになったんだよ?」


 勇者が立ち上がり、自分で放り投げた鎧を一つずつ拾いながら、真腐に聞いた。


 真腐は教会の天井をぼーっとみながら、荒い口調と全然合っていない、とても低くて誰もがカッコイイと思うような声で、懐かしむように呟いた。



「そりゃー、憧れたからだよ」


 遠くを見つめるその瞳はキラキラと光輝き、希望に満ちた様に感じられる。

 そんな神父の意外な理由に、勇者も自分が何故勇者になりたかったのかを思い出し、懐かしさに浸った。それと同時に、神父に笑顔を向ける。


「そっか、神父も俺と同じだったんだな……」

「ホントか? オレ初めて知ったぜ……勇者って儲かるんだな! よし。オレ、神父辞めて勇者なるわ。だからその鎧をよこせ」

「はぁ!? やるわけないでしょ!!? それと、俺が感動した時間を返せ!」


 真腐の本当の理由を理解した勇者は、真顔でドン引きした。


 憧れた。と真腐は言ったものの、その憧れは『金』目当てだったことを知り、勇者は軽く裏切られた気分になり、少しでも真腐に共感した自分が馬鹿だったと後悔するはめになった。


「チッ、使えねー勇者だな」

「使えないのはお前自身だろっ!!」


 小さく舌打ちし、勇者を軽蔑しはじめた真腐に、自分の方が使えないだろと勇者は突っ込む。

 突っ込まれた真腐は無言で立ち上がり「飲みに行ってくるわ、アッチで何か奢れ」とだけ言い残すと、教会から出ていってしまった。


 取り残されてしまった勇者は、深々と溜息をつき、神父なのにも関わらず教会を好き勝手に散らかしていく、使えない顔だけ真腐の制服を手に、酒場に向かった。




ふと、あるゲームが終わった時に想像したら、面白そうだった。ので、投稿しました。

もし自分が勇者の立場だったら、そんな事を言いそうだなー。と、思いながら書きました。


次投稿するのは12月です。

これからも頑張るのでよろしくお願いします!


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