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童にとっての野中の薔薇は

作者: ミスター
掲載日:2014/11/24

なんか思ってたのと全然違う作品ができたー!


まぁ、後書きでのんびりお話します。

「そんな…この世の終わりのような顔をするでない!ほら!顔を上げるのじゃ…」


「放っておいてよ!」


そう言って、差しのべられた手を弾く。


どうして…どうして…。


どうして?悲しくないの?


僕、遠くに引っ越すんだよ?


もう、会えないんだよ…?



お父さんから、引っ越しの話をされたのは、昨日のことだった。


病気で入院するお母さんのことを考えるとやむを得ないと、話をされた。


こんな田舎じゃ、満足な治療も受けられない上、移動にも負担がかかるから、というのが理由らしい。


理解もした。したつもりだった。


けど…。


「ひより!ひよりは…!?ひよりも、一緒だよね!?」


「…」


お父さんは口を閉じ、そのまま何も言わなくなった。


…それが答えだった。


ひより。


この古い家に住みついている、座敷童。


僕が生まれたころには既にいて、わいわい暮らしていた。


見た目は子供だけど、もう三桁年は生きている、とは本人談。


「わらわは、この家からは出れぬ。…もう、お別れじゃ」


そう言って、ひよりは笑って、僕の頭を軽く撫でる。


なんで…なんで笑えるの…?


「嫌だ!だったら、僕はここに残る!」


「バカなことを言うのはよしなさい!」


「―っ!」


どっちがバカか!と言い返してやりたい。


お父さんとは言え、そう、言ってやりたい…。


「部屋を整理しておくように!いいな」


それだけ言うと、お父さんはどこかへ出かけて言った。


車が遠ざかる音を確認すると、僕は床を思いきり殴った。



「昨日から、何も食べておらぬではないか」


ひよりから差し出された握り飯。


それすらも振り払う。


「ぁ…」


ひよりは小さく声を漏らす。


決して、ひよりの方は向かない。


どんな顔してるか、分からない。


「ほら!引っ越し先の座敷童の方が、わらわよりずっと優しいかも知れぬぞ!」


「…」


ひよりの呼びかけにも、答えない。


答えたくない。


「ひよりも…」


「ん?なんじゃ?」


「ひよりも来てよ!」


ここで、初めて振り向いた。


ひよりは、ただ悲しげに俯いていた。


「…わらわは座敷童。家を出れば、その家は不幸になってしまう…。幸と不幸は表裏一体なのじゃ…。故に、わらわはここからは出れぬ」


わかってる…。


分かってるよそんなこと…。


でもさ、でも…。


「好きな人が目の前からいなくなるのがこんなに辛いなら…誰も、好きにならなければ良かった…」


「何を言うか!」


「心なんて…持たなければ…誰にも、心を開かなければ…」


「もう、そのようなことを言うでない!」


「生まれてこなければ…こんなに辛いこと、経験しなくて良かったのかな…」


「-っ!」


その瞬間、パアンと大きな、乾いた音が響いた。


同時に、頬が熱い。痛みを感じる…。


…ひよりは、泣いていた。


「なんてこと言うのじゃ!この程度の辛さ!お主が生まれてきた喜びと比べれば、まこと小さきことと何故わからぬ!」


「…!」


「わらわは、お主が生まれた時…どれだけ嬉しかったことか!どれだけ!どれだけお主がいたことで、笑い、喜び、明るさを得たか!」


「…」


「それなのに、生まれてこない方がよかったと、なぜ言える!心を持たぬ方が良かったと、なぜそのようなことが言えるのじゃ!」


…言い返せない。


「わらわは…お主が生まれてきてくれて良かったと、本当に幸せだったと…そう思っている!お主は!わらわのこの気持ちすらも無い方が良かったと申すか!」


そのまま、ひよりは続ける。


「これまでの喜びと、此度の別れ。どちらが大きいかなど、比べるまでも無かろう!それに…」


すこしの沈黙…。


僕は暫く、あっけにとられていた。


「好きな人に『生まれてこなればよかった』などと言われるなど…!我慢できんのじゃ!」


はっとする。


見た目は僕と同じ、10歳に満たないくらいなのに…。


僕よりずっと、大人なんだな…ひよりは…。


「遠くの地にて、頭を冷やして参れ!わらわは…いつまででも、お主を見ておる…」


その言葉に、顔を上げる。


ひよりは…笑っていた。




それから、僕は引っ越した。


大きな病院のすぐ近くの家。


引っ越し先の座敷童も、ひよりの言うように優しかった。


けど、ひよりの温もりは、いつまでも消えることは無かった。



3年の闘病の末、お母さんは完治した。


それでも、弱った体には都会は不都合と言うことで、また引っ越しすることになった。


戻れる。元いた家に、僕の、故郷に。



「ただいまー!」


わざと、大声で玄関を開けた。


…彼女の声を聞けることを信じて。


埃一つ落ちていない、3年も人が住んでいなかったとは信じられない、この家。


直感する。


「…ひよりか」


それだけなのに、この安心感はなんだろう。


胸の鼓動が追い付き始めたその時、家の奥からダッシュで駆け寄ってくる足音が響いた。


再び鼓動が速くなる。


そして、待望のその時が来た!


「おかえり!」


「ただいま!ひより!」


僕はぴょんと抱き着いてきたひよりを、強く、強く抱きしめた。


今ではもう、僕の方が大きくなっていたけど、、ひよりはそのままの姿で、僕をぎゅっと抱きしめ返してくれるのだった。

書き上げてみれば、主人公の名前も出てこないし、見た目の描写も皆無という恐ろしい作品に。


「古い感じの日本語喋る少女可愛い」から書き始めた作品ですが、まさかこんなになろうとは…。


というか、もともとヒロインは座敷童ではなかったという衝撃の真実。


「ヘビだ!ヘビ!ヘビ擬人化して家に住まわせて感動系にしよう!」という無謀極まりない内容でした。


ヤマカガシにしてツンデレにするか、ジムグリにしておっとり系で行くか~…とか悩んだ末断念。


座敷童に変更してからも、「いっそ母親死なせちゃおうかなー」とか「座敷童は家の主がいなくなったら消滅する設定にしようか」とか『人が死ねば感動になる』と考えてる頭の悪い作品になりかけました。


しかしまぁ、友達から「お前結構人殺すよね」と言われたので変更。


めでたしめでたしな感じにしました。


是非ともヘビの擬人化やりたいなー…。


ギャグでやろうかな…。


そんなわけで、全然思ったのと違う作品になったわけでした!

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