第5章 8
漆黒の龍(邪悪龍)の体内から引き出した
自分の分身を取り込んだ曹虎は力を漲らせ、
気の波動を撒き散らかした。
郭瑜は結界で曹虎の撒き散らした
気の波動を交わしながら
「化け物が……」
と曹虎を見詰め、呟くと曹虎は郭瑜のことを
睨み付けながら
「まだまだ……」
というと世界に散らばらせた自分の分身(影)を
自分の元に引き寄せ、吸収し始め、力を
増幅させていった。
関遼と共に対峙していた劉・小狼の中からも同じように
曹虎の分身(影)が抜け出した。
その途端、劉・小狼の中で暴走させていたモノがなくなり、
劉・小狼は気を失い、崩れるように倒れ込んだ。
世界中に散らばらせていた自分の分身(影)を引き寄せ、
吸収した曹虎は更に力を上げ、
その姿を漆黒の肌をしたグロテクスな怪物へと姿を変えた。
グロテクスな化け物へと姿を変えた曹虎は気の波動を
周囲に撒き散らせながら
「全てよ! 無へと返れ!……」
と言った。
グロテクスな化け物へと姿を変えた曹虎の放った気の波動で
郭瑜が吹き飛ばされようとした
その時……
急に郭瑜に当たる気の波動が弱まった。
「郭瑜!お主も歳を取ったの…… これしきの事で……」
と言う声と共に郭瑜の横に庖悦が現れ、郭瑜と同じように
結界を張っていた。
『な、なんで?……』
郭瑜が突然、現れた庖悦にびっくりしていると
「わしだけじゃないぞ……」
と庖悦が言った後に辺りを見回すと庖悦の他にも
張爛ら、劉・小狼の仲間が全て、郭瑜の近くに集っていた。
趙燕は槍の武器を構えると
「郭瑜さま。ご指示を……」
というと趙燕の傍にいた張爛は慌てて、武器を構えると
「もう……趙燕。俺が言おうとしたのに……」
と言うと張爛が言った事に郭瑜は吹き出しながらも
『俺は一人じゃなかったんだ……』
と思い、微かに泪を滲ませた。
郭瑜が溢れ出る泪を必死に堪えていると
一瞬、気がついた劉・小狼は郭瑜に
「郭瑜。わしの代わりに指揮を執れ!……」
と言うと再び、気を失った。
郭瑜は再び、こみ上がる泪を堪えながら
「張爛殿。お主は関遼殿と共に化け物の曹虎を
食い止めよ!」
と言うと張爛は嬉しそうに武器を一振りすると
「わ、わかったぜ!……」
と言うと化け物と化した曹虎を一人で相手している
関遼のもとに向かった。
「孫嘉殿は小狼さまの介護へと……
趙燕はその孫嘉の護衛を……」
郭瑜が続いて、孫嘉と趙燕にそう命令を出すと
孫嘉と趙燕は
「はい……」
と言うと素早く、劉・小狼のもとにやって来た。




