第5章 5
「七色に光り輝く大鳥の封印も永くは持たなかった。
漆黒の龍(邪悪龍)の体内で闇は膨れ上がり、
七色に光り輝く大鳥の封印から少しずつ、外へと漏れ出した。
外に漏れ出した闇は姿を変え、この世界へと害をなし始めた。
私は何とか、その闇を取り除こうとしたが
一度、漆黒の龍(邪悪龍)の体内の闇に取り込まれた私には
その闇をどうすることも出来ず、逆に私はその闇に取り込まれた。
後はお前達が知っている通りだ……」
杜闑は郭瑜に全ての事を話した。
郭瑜が杜闑の話に聞き入っている間に漆黒の龍(邪悪龍)と
劉・小狼の激しい激突により、辺りの空間は歪み、
真っ暗な無へとなっていた。
絶望に打ちひしがれている杜闑に郭瑜は
「ここは危ない…… 我らもここから退こう!……」
と言ったが杜闑は何も答えず、暴走する
劉・小狼のことを見詰めていた。
そんなところに民を避難させ終わった四仙獣らが
「全ての民の避難を終わりました。 郭瑜さまも避難を……」
と言い、郭瑜のもとに現れた。
「わ、わかった。 ここにいる者らも一緒に避難させよう!」
郭瑜は自分らを倒そうとした四死獣らも四仙獣らに水霞堯へと
避難させるように指示した。
四仙獣らは自分らを苦しめた四死獣らを助けるのを嫌がったが
郭瑜の強い希望を受け、劉・小狼らの攻撃の隙に四死獣らを
劉・小狼が激しく争っている場から救い出すと
郭瑜らと共に水霞堯に向かって、その場を退いた。
郭瑜らが劉・小狼らの前から退いた頃……
黄金に輝く龍(聖龍王)がいう零漸磁湖の底にも
異変が起こっていた。
零漸磁湖の底で暴走している劉・小狼の様子を伺っていた
黄金に輝く龍(聖龍王)が急に苦しみ出した。
水蓮を飲み込んでいた黄金に輝く龍(聖龍王)の
お腹が急に光り出した。
黄金に輝く龍(聖龍王)のお腹から飛び出した大鳥は
零漸磁湖から飛び去ると暴走して暴れている
劉・小狼の方へと向かって来た。
劉・小狼の上空へとやって来た大鳥は劉・小狼の上空で
旋回した。
次の瞬間……
暴走して暴れている劉・小狼の前に黄金に輝く龍(聖龍王)に
飲み込まれた姿が幽かな水蓮が現れた。
『小狼さま…… 落ち着いて!……』
水蓮は劉・小狼に話しかけてきた。
突然の聴こえてきた水蓮の声に
「す、水蓮……」
一瞬、劉・小狼は正気に戻った。
だが、すぐに劉・小狼は自分の内から溢れ出る気を
コントロールできずに再び、理性を失い、刻神の身体を
乗っ取った邪悪龍に向かい、目の前の幽かな水蓮の姿を
掻き消し、暴走し、暴れ始めた。
劉・小狼によって、掻き消された幽かな水蓮の姿は
再び、その姿を現すと
『どうしてしまったの? 小狼さま……』
と切ない顔で暴走する劉・小狼の後ろ姿を見送った。
そんな暴走する劉・小狼の姿を見守る者が他にもいた。
「どうする?兄者…… このままだと……」
堯閣は岩陰に隠れ、暴走して暴れまわっている
劉・小狼の姿を見ている舜炎にそう訊いた。




