第5章 1
関遼らの前に現れたのは気を暴走した劉・小狼だった。
張爛は自分らの前に現れた劉・小狼に
「兄者!……」
と不用意に近付き、劉・小狼に触れようとした。
だが、張爛は劉・小狼の身体から溢れ出す
気で触れることなく、吹き飛んでいった。
張爛が吹き飛んだことで関遼らは一斉に劉・小狼に対して、
武器を構えた。
「な、何をなさるのですか? 小狼さま」
関遼は様子が可笑しい劉・小狼に話しかけた。
だが、意識を失い、暴走と化した劉・小狼は
「返せ! かえせ!……」
と呟きながら、更に先に歩みを進めようとした。
関遼らは劉・小狼の動きをとめようとしたが
気を振りまき、暴走する劉・小狼にはまるで効かず
、関遼らはそれぞれ倒され、劉・小狼によって、
吹き飛ばされた。
自分を邪魔する者がいなくなったのを確認した劉・小狼は
「す、水蓮を返せ!……」
と呟きながら、関遼らのもとから立ち去って行った。
前線で四死獣らと互角に戦っていた四仙獣らも
自分らに近付いてくる異様な気配に気が付いた。
四仙獣らは一旦、四死獣らから距離を取り、離れると
「おい。気が付いたか? なんだか、この状況、
やばくはないか?……」
白虎は後ろから近付いてくる異様な気配を気にしながら
他の四仙獣らに話しかけた。
四仙獣らの前に姿を現したのは気を振り撒き、
暴走をし彷徨える怪物と化した劉・小狼だった。
四仙獣の朱雀はそんな劉・小狼を見ながら
「しょ、小狼・……」
と放しかけようとした時……
「返せ!……」
劉・小狼はまた、そう呟くと四仙獣らに向かって、
攻撃を仕掛けた。
「な、何をする!……」
四仙獣らはそう言うと四方へと散らばったが
劉・小狼から溢れ出る気の波動によって、
四仙獣らは木の葉のように吹き飛んで行った。
「おっと、あぶない!……」
四死獣らは劉・小狼の気の波動を受けないように
四仙獣らのもとから離れ、少し小高い丘へと移動した。
暴走し、四仙獣らに襲い掛かる劉・小狼のことを
小高い丘の上から見物をしながら
「やはり、我らの計画通り、奴は暴走を始めたなぁ……」
薄笑みを浮かべながら、飛燕がそう言うと
四死獣の後ろから
「貴方らはこんな所にいて、宜しいのですか?
あの方が貴方らの活躍を見てますよ!」
という、荘仲の声が聴こえてきた。
四死獣らは後ろにいる荘仲の方を振り向くと
「良いのだ…… お互いに潰し合わせて、
最後に我らがトドメをさせば……」
飛燕は荘仲にそう言った。
荘仲は四仙獣らと戦っている劉・小狼のことを
見詰めながら
「それはどうかな?……」
と言うとその姿を何処かへと消し去った。




