第4章 12
「(水蓮を)返せ!……」
劉・小狼は鉛のように重くなった龍牙神を持ったまま、
その場に座り込んだ。
すると、黄金に輝いている龍(聖龍王)のお腹が急に光り出し
、水蓮の姿が現れ
「小狼さま。そんなに哀しまないで!
私は常に小狼さまの傍に居るから……」
と言うと優しい眼差しで劉・小狼のことを見詰めた。
劉・小狼は黄金に輝いている龍(聖龍王)のお腹にいる
水蓮を悲しげに見詰めながら、
「行かないでくれ! 俺のそばにずっと、居てくれ!……」
と言ったが水蓮は劉・小狼と同じように
悲しげな顔をしながら
「ごめんなさい……」
というとその姿を幽霊のようにスーッと消した。
「す、水蓮を返せ!」
劉・小狼が俯き、小声で呟いている姿を
黄金に輝いている龍(聖龍王)はジーっと見詰めながら
「大事なモノを返してほしくば、この世界の歪みを正せ!……」
と言い、その姿を再び、零漸磁湖へと消した。
だが、劉・小狼にはそんな黄金に輝いている龍(聖龍王)の声は
届いていなかった。
「か……返せ! 返せ!……」
ついに劉・小狼の臨界点を超えた時……
劉・小狼の体から今まで比べモノにならないほどの
気の波動が溢れ出した。
その気の波動は辺りのモノを吹き飛ばし、零漸磁湖を
激しく、揺らした。
だが、劉・小狼の意識はなく、命を燃やし、
気の波動を撒き散らす、危険な怪物と化していた。
自分自身で制御が利かなくなった劉・小狼は
「水蓮を返せ!……」
と呟きながら、劉閣らが龍炎軍と戦っている方へと
彷徨うように歩き出した。
杜闑と郭瑜は零漸磁湖から異様な気を放ち、
自分らへと近付いてくる気配に気付いた。
杜闑は郭瑜の方を見ると
「き、気が付いたか?……」
と言うと郭瑜は頷き、
「ああぁ…… なんだ? この気配は?」
と零漸磁湖の方を見ると零漸磁湖から
凄まじいほどの突風が杜闑らがいる所へと
吹き抜けていった。
零漸磁湖から突然、吹き抜けてきた異様な突風に
前線にいた劉閣らが敵を倒し、慌てて、郭瑜と杜闑の
元に集まってきた。
「な、何事だ?……」
関遼は郭瑜に何事が起こったのかを訊いた。
郭瑜は着実に自分らに近付いてくる
異様な気配を感じながら
「さあ。我らにもわからぬ…… だが、異様な者が
我らの方に近付いてきているのは間違いない!」
と言った。
張爛は零漸磁湖の方を見ながら
「なら、ここにいたら、マズイんじゃないのか?」
と言うと零漸磁湖の方から一つの影が現れた。




