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『な、なんだ?…… て、敵か?』
劉・小狼は道端の茂みの動きに咄嗟に腰に携えている
龍牙神の柄を掴んで、身構えた。
「あ、兄者! やっと、抜けたよ!」
その道端の茂みからまだ幼き少年の二人が出てきた。
『な、なんだ。子供か……』
劉・小狼はホッとして、掴んでいた龍牙神の柄から
手を離した。
少年の一人・舜炎【しゅんえん】が小型ナイフのようなモノを
劉・小狼に突きつけながら
「なんだい? お前さんは?…… 旅人かい?
旅人なら、金を出しなぁ!」
劉・小狼のことを脅してきた。
『また、変なことに巻き込まれたなぁ……』
劉・小狼はそう思うと素早く動き、舜炎の向けていた
ナイフを奪い取ると殺気を帯びた気迫と共に舜炎の喉元に
奪い取ったナイフを突き立てた。
あまりにも劉・小狼の目にも止まらぬ速さに舜炎も
その舜炎の横にいた少年・尭閣【ぎょうかく】も
一歩も動くことが出来なかった。
「まだやるか?」
劉・小狼が尭閣らにそう言うと
「ま、まだ負けておらぬ!……」
舜炎は動き、劉・小狼に襲い掛かろうとした。
「やめておけ!舜炎。 お前ではそいつ【劉・小狼】には
勝てぬわ!」
尭閣はそう言い、舜炎の動きを制した。
「どうしてだ! 俺は……」
舜炎が尭閣にそう言うとしたが
「まだ、わからぬのか!舜炎……俺達はまるで
そいつ【劉・小狼】の動きがわからなかったのだぞ!……
あのまま、そいつ【劉・小狼】に戦いを挑んでも
俺達は負けていたぞ!」
尭閣を怖い顔で舜炎を睨み付けた。
舜炎は何も言わず、押し黙ってしまった。
尭閣は劉・小狼の前に歩み出ると
「すまなかったなぁ…… 弟【舜炎】が
失礼な事をして……」
素直に劉・小狼に謝ったがその時、尭閣が
周囲の異変に気が付いた。
「やばいぞ!……」
途端に尭閣の顔色が変わった。
「兄者。逃げよう!……」
舜炎は一目散に自分達が出てきた道端の茂みの中に隠れた。
それを追いかけるように尭閣も道端の茂みの中に隠れた。
『何事だ?……』
劉・小狼が訳もわからず、その場に立ち尽くしていると
道端の茂みの中から尭閣が出てきて、
「そこにいては危ない。こっちに来るんだ!」
劉・小狼の手を取り、道端の茂みの中へと隠れた。
劉・小狼が尭閣に連れられて、道端の茂みに隠れて、
暫くすると劉・小狼の隠れる茂みの前に
大きな土埃【つちぼこり】と共に怪しき黒の一団が現れた。
その様子を茂みの中から見ていた舜炎が思わず、
「ま、魔女の軍団だ!……」
と言った。
「魔女?……」
劉・小狼は初めて訊く”魔女”という言葉に訳が
わからなかった。
だが、劉・小狼がその”魔女”と言う怪しき黒の一団に
目をやった時、劉・小狼は自分の目を疑った。
その怪しき黒の一団の中にいたのは劉・小狼が
良く知る者達だった。