第2章 5
劉・小狼と堯閣が近くの村で見たのは荒れ果てて、
静まり返った村の風景だった。
『な、なんだ? これは?……』
驚いた顔でその場に立ち尽くす劉・小狼を無視して、
堯閣は慣れたように
「ここに居ろよ!俺が村の様子を見てくるから……」
劉・小狼に言うと村の中へと消えていった。
暫く、劉・小狼が村の入り口で堯閣が戻ってくるのを
待っていると劉・小狼の周りを蠢【うごめ】く人の気配を感じた。
闇の中に蠢く人の気配に劉・小狼は龍牙神に手をかけ、
身構えた。
「すまん。待たせたなぁ……」
堯閣のそんな声と共に劉・小狼の周りを取り囲んで蠢いていた
人の気配は突然、消え去った。
「さあ。帰ろうか?……」
堯閣は集めてきた食料などが入った袋を劉・小狼にそう言うと
村の外へと歩き出した。
劉・小狼はさっき、自分の周りを取り囲んで蠢いていた
人の気配のことを気にしながらも
「ああぁ……」
と言い、堯閣の後を追いかけて、村の外へと歩き出した。
だが、次の瞬間。 劉・小狼と堯閣は再び、村の中にいた。
「あれ? なんで?……」
堯閣は再び、村の外へと向かって、歩き出したが
やはり、次の瞬間、劉・小狼の横に戻っていた。
「何か、まずいぞ!……」
劉・小狼は龍牙神に手をかけ、辺りを警戒した。
「まずいなぁ…… 閉じ込められた!」
堯閣も辺りを警戒しながら、辺りを見回した。
すると、村の闇から劉・小狼と堯閣を見詰める
人の気配を感じた。
「ま、まただ!……」
劉・小狼がそう呟くと堯閣は劉・小狼と背中を合わせ、
辺りを警戒するように見回しながら
「ど、どういうことだ?……」
劉・小狼に言った。
「じ、実はなぁ……」
劉・小狼は堯閣に堯閣が村に行っている間に
自分が体験したことを堯閣に話した。
「……それは闇の者達だ……」
堯閣は劉・小狼にそう呟いた。
「闇の者達?……」
劉・小狼が頭を傾げていると堯閣は辺りを気にしながら
「話は後だ! 一先ず、村の中へと退くぞ!……」
堯閣はそう言うと村の中へと歩き出したが
突然、現われた真っ黒い人の形をした影に
劉・小狼と堯閣は取り囲まれてしまった。
「おい。どうする?……」
堯閣は自分らの周りを取り囲んでいる
真っ黒な人の形をした者達を警戒しながら、
劉・小狼にそう話しかけてきた。
劉・小狼も龍牙神に手をかけ、周りを取り囲んでいる
真っ黒な人の形をした者達を経過していると家の影から
一人の老人が
「こっちだ!……」
劉・小狼と堯閣に手招きをしてきた。
『怪しい!……』
劉・小狼は突然、現われたその老人のことを怪しがったが
この危機を逃れるためにとりあえず、その老人の手招きに
応じることにした。