10
劉・小狼は岩陰から小高い丘の上にいる趙燕と孫嘉の様子を
伺いながら
「よし。俺が切り込む。 後の援護を頼む!……」
堯閣に言うなり、小高い丘の上にいる趙燕と孫嘉に
気付かれないように遠回りし彼らに迫った。
その様子に気付いた孫嘉は朱雀の戦いぶりを見ている
趙燕に近づき、
「後方から敵が迫っております!」
と耳元で囁いた。
劉・小狼はそんなことは知らず、遠回りをし、
趙燕らの後ろに廻り込んだ。
劉・小狼は趙燕らに気付かれないように堯閣に合図を送ると
堯閣と一緒に趙燕と孫嘉に襲い掛かった。
劉・小狼の攻撃は趙燕と孫嘉に気付かれていた。
『これでも喰らえ!』
趙燕は持っていた槍で劉・小狼に攻撃を仕掛けてきた。
劉・小狼は辛うじて、趙燕の槍を受け止めたが
その威力は凄まじく、後方へと吹き飛ばされた。
劉・小狼が吹き飛ばされたのを見て、
『これはやばい!……』
堯閣は慌てて、趙燕に向かって、持ってきた矢を射掛けた。
だが、趙燕の当たる寸前のところで堯閣の放った矢は
まるでバリア【結界】に阻まれたかのように全て、弾かれた。
大方、魔女の兵を倒した朱雀は趙燕らと劉・小狼らの間に
割って入り、趙燕らに向かって、自分が持っている剣を身構えた。
朱雀は目の前の趙燕らを気にしながら
「お前ら、ここで何をしておる! 貴様らがかなう相手じゃない!
下がれ!……」
劉・小狼に言った。
「逃がさぬ!……」
趙燕は劉・小狼らを逃がさぬように自分が持っている剣で
朱雀と劉・小狼らに切りかかってきた。
その威力はつい、最近、朱雀が趙燕の攻撃と受けたものとは
まるで違っていた。
朱雀は自分の持っている剣で受け止めるのが精一杯だった。
朱雀が趙燕と孫嘉の攻撃を交わしているのを劉・小狼が
見詰めていると何処からともなく、
『もっと、自分の力を信じよ!…… その力を持って、
闇に囚われた友を救え!』
という声が聞こえてきた。
『え? 誰だ?……』
劉・小狼がその声の主を探そうと辺りを見廻したが
その声の主は何処にもいなかった。
だが、劉・小狼の龍神眼は眩いばかりの光を放っていた。
『ど、どういうことだ?……』
劉・小狼がそう思いながら、龍神眼に手をかけると
更に龍神眼は強い光を放ち、その姿を変化させ、
龍聖光【りゅうせいこう】へと変えた。
『さあ。我の力で友を救え!……』
再び、劉・小狼に不思議な声が聞こえてきた。
それと同時に龍聖光は強い光を放った。
『俺に出来るのか?……』
劉・小狼は少し迷いながらも龍聖光の柄を掴むと
自分の中に暖かい力【気】が流れ込んできた。
『これなら、いける!……』
そう感じた劉・小狼は勢いよく、龍聖光を鞘から引き抜いた。
たちまち、辺りに光の波が吹き溢れた。
「これで最後だ!…… 朱雀!」
趙燕がまさに朱雀にとどめを刺そうとしたその時……
趙燕は龍聖光から放たれた光の波によって、吹き飛ばされた。