変態とケツ穴
美しき巨乳美女はディアンヌ・グランツェと名乗り、部屋の隅に置いてあった椅子をベッドの横に置き、僕をなめ回すように見つめたあと話を続ける。
「とりあえず自己紹介っつーことで、あたいはこの湿気た街で鉱物を売ったりしながら食い繋いでるしがない街娘だ」
そう言いながら後ろに垂れた長い黒髪をなびかせ、ディアンヌは更に話を進めようとするが、僕はどうしても気になることがあり、彼女の目の前に手をやり静止を促す。
「ちょっと待ってください。お姉さま」
するとディアンヌは少し眉をひそめ、首を傾げる。というか、どの動作をしても大人びた仕草に見える彼女に対してまた消えかかった欲情の火が再燃しそうなのだが、今はそれをシーツの下でぐっと堪えて僕は疑問を口にする。
「あのですね。なんというか、どうして僕はまだ男の尊厳を持てているのでしょうか?」
「あん?んなの見りゃわかるだろ?あたいが割ってはいったから、あんたのケツ穴は守られた。そうだろ?」
「け、ケケ、ケツ穴って。そんなことを女性がいうのもどうかと……」
「ケツ穴はケツ穴だろうが。んなもん女だろうが、なんだろうが口にして当たり前だろう」
唯我独尊とはこのことか、いや、猪突猛進というべきか。この褐色下品美女はどうにも自分の主張は曲げないし、感情に素直なようだ。まぁ、パンツ一丁で彼女に本能のまま襲いかかろうとした僕がいうのもあれなんだが、とにかく今ノーパンと目の前の美女がケツ穴などと連呼することによって、肉眼でも敏感になっている下腹部が確認できるのが僕がまだ女性好きなのがわかり安堵する。
「いや、僕が言いたいのはどうしてお姉さまがここに来たのか、ということなんですけど」
あの店主が立ち去ったあと、ここが店主の家だということはわかったが、どうして彼女が他人の家に上がり込んだのか、そして、どうして僕を助けようとしたのかが見当がつかない僕にディアンヌは軽い口調で答えに導く。
「ん~、簡単に言えば昼間あたいがあんたをぶっ倒したあと、あのハゲがあんたを探してたなんて言ってたからよ。そのまま引き渡したんだよ。確かぁ、『俺の恋人なんだ』とか言ってたよ」
背筋が凍る。いや、むしろ変態店主の一言で萎えた。なにかが萎えた。
「それでよ、あたいもあんたみたいなパンツマンなんか触りたくもなかったから言う通りにして、また商いに精出してたんだけどさ、すぐに変な奴等がきたんだよ」
「変な奴等……?」
変な奴等と言われてノーパンの僕は一瞬肩をあげるが、どうやら僕ではないらしく、彼女はなおも軽い口調で話を続ける。
「それがよ。最近になってこの辺りをうろつくようになった盗賊舘が、あたいを質屋かなんたかと誤解して、盗んだ物を売りに来やがったんだ」
盗賊と言われてまたもや一瞬肩を上げた僕は、昨夜の出来事を思い出す。