英傑とええケツ
はじめまして。蒼乃鳥兎と申します。
正直なところ商業的なものではないので、設定とかもほとんど考えてませんし、以降の展開など全く想像もついていないので上手な創造が出来るのか不安たらたらで書かせて頂きます。
最初の投稿はとりあえず伏線を多少いれながら、これからの指針になるように書いただけなので、話は短いし、読まれる方はいまいち盛り上がりのない話だなと思われると思われます。
なので、次も読もうという意欲が生まれるかどうかは、ぶっちゃけ読まれる方の責任でお願いします。
別にプロでもなければ一流小説家でもないですし。笑
しかし、一応物語を作り始めたので、これから登場する人物達も含め、愛をもってこの作品に向き合っていこうと思います。
それではつまらない前書きはこの辺にして、ライトニング・インフィニティをゆっくり、だらだら読んで下さい。ではでは。
P.S
馬鹿でお茶目な主人公共々、何卒細い目で見守って頂けたら幸いです。
どこで読んだか忘れたけれど、随分昔に古い絵本を読んだことがある。
題名も作者もわからないが、とにかくそれは僕にとって大切な記憶として今も思い出すたびに胸の鼓動が速くさせる。
だけれど、いつもある場面で記憶が途切れてしまい、その続きを思い起こそうとしても激しい目眩と強烈な吐き気がして諦めてしまう。
そんな日々を過ごしながら、いつしか時は流れ、気づけば僕は『英傑:えいけつ』と呼ばれていた。
『英傑』というのは、この世界を蹂躙していた悪の聖典、カトラス・エグナイル率いる魔神達を滅ぼした者に授けられる称号であり、僕を含め十三人の騎士達がこの称号を名乗ることができる。
今では世界は十二の国に分けられ、十二人の騎士は各々の国の国王となり、自国の文化を築き上げている。
そして、『英傑』の中でも一番名誉なことである、二つ名を与えられた僕、ライオネル・エクターの現在はというと……。
「い、一万ルナだって!!?ぼったくりだろそんな値段!僕はそんな高価なもん食べてないぞ!!」
「んだとコラ、食い逃げしようとした分際でよくもまぁ被害者ぶったこと言えんなテメー」
こんな感じで生きている。いや、というか今にも目の前で指をバキバキいわしている厳つい店主に殺されそうなわけだが、こんな路地裏で生涯の幕を閉じるなど真っ平ごめんなので、とにかくこの場を上手く取り繕うことにしよう。
「あの、実は僕、昨日の晩、複数の男に裸にされて襲われた結果、色々なくしてしまって……」
……あれ?僕は何を言っているんだ?僕が言いたかったのは、昨日の晩、複数の盗賊達に寝込みを襲われて、金品や食料を奪われたことであって、まるで僕が盗賊に襲われて男の尊厳を失ったみたいな説明になってるし。そのせいで、さっきまで蛙を睨む蛇みたいな眼をしていた店主も今はホモを哀れむ人みたいな目をしているではないか。
「この辺は盗賊も多い、あんた……大変だったな」
「あ、いや、違うんです。僕が言いたいのは」
「何もいうな。新たな道が開いた、それだけのことだろ……」
やめて、お願いだからその悟ったような顔で涙を拭わないで。いっそこの場で僕を殺して下さい。
昔から口下手なせいか、どうにも僕は相手に対して正しい表現が出来ない。おかげで、これまでの人生もろくなことがなかった。
「あんた、今日はどこか泊まる場所はあるのかい?」
……あれ?なんだこの展開。まさか、この感じは今日は野宿をしなくて済みそうな気がする。
どうやら誤解されるのも、たまには役に立つようだ。しかし、ここで軽い感じで返事をするのは相手に事実を悟られそうだし、ここは一つ悲劇の主人公になりきるか。
「実は今日も泊まる場所もなくて、ほとほと困っているんです」
よし、今のは上手く言えただろう。あとは店主のご厚意で寝床と食料の提供を待つばかりだ。出来れば一ヶ月風呂に入ってないから浴場を貸してもらえたらいうことなしだな。
「なら、うちに泊まってけ。飯もつけてやる、あと、あんた臭うな。風呂もあるから体も洗え」
やった!まさかこんなに上手くことが進むとは、神様ってやっぱりどんな人間にも平等に見てくれてるんだなぁ。
「すみません。じゃあお言葉に甘えて……」
「ああ、あんた俺好みの美男子だからな、今晩はゆっくりベッドの上で慰めてやろうじゃないか」
「……………………………………」
え?このハゲ店主、今何ていった?
俺好み?美男子?ベッド?慰める?
多分僕がこの言葉を理解するのには二秒くらいはかかっただろう。そしてそこから自分なりの解釈と次への行動を考えるのに一秒、ここで三秒のタイムロス。しかし、やはりというべきか、魔神達との激闘を経て培われた経験は伊達ではない。
自分の置かれた状況を把握した僕の四肢は、次への行動を脳が考えつく前に素早く動いた。
それは刹那の出来事だった。店主が僕の尻を触ろうとしながら、ええケツだ。と言った瞬間、僕の右足は地面を力強く踏み、身体は軽く宙に浮きながら軸を右側に流し、左足は瞬時に膝を曲げ大きな溜めをつくり、ここでようやく脳が身体に追いつき、僕のくちは腹の底から拒絶を吐く。
「僕は男色でもなければ、男食でもない!」
それと同時に大きく溜めをつくっていた左足を思いっきり伸ばしながら店主のこめかみに食らわし、僕は右手を地面について舵をとり、上手く着地した。店主は何が起きたのかもわからないまま、ただただにやけた顔で地面に崩れ落ちた。
「あと、僕はええケツじゃなくて、英傑にして先代英傑から二つ名を授かりし者、“戦光の罰”ライオネル・エクターだ」
と、言ってみたものの店主は完全にのびきっている上に飯代も払えない。なんとも格好がつかないが、とりあえず……。逃げるか。