六十四話 「やっぱりもう少し時間がかかりそうだよ、姉さん……」
シェルブレンが騎士としての勤務を終え帰宅した頃には、既に深夜になっていた。
自動生体認証の扉をいくつか潜り、その間に制服を脱いでいく。
廊下を動き回っていた円柱形の家事用無人機に、上着と洗濯物を渡す。
既に基地でシャワーを浴びていたので、下着などの着替えは済ませていたのだ。
無人機は甲高い機械音を鳴らし、洗濯場へと移動していく。
それを見送りながら、シェルブレンは家の奥へと歩いていった。
居間に入り、奥にある扉に近付く。
壁にはめ込まれたガラス質の板に手をかざすと、下から上へ、右から左へと青い光の筋が通っていった。
生体認証装置の一種であるらしいその光が消えると、扉が中央から開く。
扉の奥には更に二つの扉があったのだが、それらも連動するように開いていく。
扉が開ききると、今度は室内の明りが自動的についていった。
シェルブレンは扉の近くにあるテーブルに近付くと、そこに載せてある眼鏡を手に取った。
それをかけながら、部屋の奥へと歩いていく。
部屋の中はかなり広く、様々な機材が並んでいた。
どれもこれも、最新の魔法機械であり、高価なものばかりだ。
扉が閉まりきるのとほぼ同時に、シェルブレンはパンパンと手を叩いた。
それを合図に、魔法機械が起動し始める。
「こんばんは、シェルブレン団長。一日の勤務、お疲れ様でした」
シェルブレン以外誰も居ないはずの室内に響いたのは、合成音声と思しき声だった。
突然聞こえた声にも拘らず、シェルブレンは驚くそぶりも見せない。
それもそのはずだ。
この声は、この部屋の主のものなのだから。
「まだ終わらんぞ、シルヴリントップ。鎧の兵器レイアウトと管制を見直す。データを出せ」
シルヴリントップとは、シェルブレンの愛機の名であった。
設計から搭載兵器の開発までをシェルブレンが手がけた、戦車だ。
シェルブレンが団長を務める鉄車輪騎士団は、その名の通り鉄の車輪を備えた魔道兵器「戦車」を駆る騎士団だ。
メテルマギト独自の魔法である「彫鉄魔法」の粋を集めたそれは、一機で戦場をひっくり返すほどの破壊力を持っている。
ただ、運用の為には尋常ならざる魔力が必要であった。
高い戦闘能力を発揮する為にありとあらゆる魔法が施された戦車を戦闘で運用するには、エルフの膨大な魔力保有量を必要とするのだ。
そんな戦車の中でも、シルヴリントップはまさに異常という言葉がぴったりとあてはまる機体であった。
只管に性能のみを追い求めたせいで、必要とする魔力がとてつもないものとなってしまったのだ。
この機体を操れるのは、専用機ということを差し引いても名実共にシェルブレンだけである。
「働きすぎです、団長。適度な休息も騎士の勤めの一つです」
シルヴリントップの言葉に、シェルブレンは眉をひそめた。
今こうして会話をしている人工知能の設計開発にも、シェルブレンはかかわっていた。
第一声が口答えになるような設定にはしていなかったはずなのだがと考え、頭の中でその原因を探る。
一つの原因に思い至り、口を開く。
「最後に寝たのはどのぐらい前になる?」
「五日前です、団長」
なるほど、たしかにそれは注意のひとつもされるはずだ。
シェルブレン自身もそれだけの間寝ていない団員が居たら、無理にでも休ませるだろう。
人間と体の構造を違えるエルフは、睡眠による記憶整理などは行わない。
そのため睡眠は純粋に疲労回復だけに当てられるものであり、極論疲れさえしなければ睡眠は必要なかった。
とはいえ、騎士団長の仕事というのは控えめに言っても激務だ。
休息は必要なものである。
シェルブレンは体が丈夫なほうではあるが、それでも僅かに疲れを感じてはいた。
少し休むべきだろうか。
だが、すぐにその考えを頭を振って振り払う。
「いや。鎧のデータを出せ。紙雪斎を殺しきるには今の鎧と戦車では駄目だ。新しいのを作る。魔法も新造するぞ」
「了解しました」
次の瞬間、部屋中を青白い光が走り回り始めた。
空中には光の粒子が飛び交い、それらが意思を持ったものの様に集まり始める。
形作られていくのは、幾つものモニタとキーボード等だ。
部屋の中は瞬く間に中空に浮かぶモニタと、それを操る為のコンソールに埋め尽くされた。
「さて、はじめるか……」
シェルブレンは首をコキリと鳴らすと、中空に浮かぶコンソールへと手を伸ばした。
シェルブレンは、彫鉄魔法や医学に関するいくつかの資格や博士号を持っていた。
彼は魔法開発者であり、兵器設計者であり、医者であり、医学研究者なのだ。
現役騎士でありながら、これほど多彩な資格、知識を持つ人間は他にはいない。
そのシェルブレンが作り上げる兵器は、どれも奇抜でありながら実戦で使われること念頭に置いたもので、兵や騎士からの評価が高い。
それも無理からぬことだろう。
シェルブレンは自分で実戦に立ち、そこで欲しいと思った装備を開発するのだ。
実戦場で必要とされる武器ほど、兵や騎士が欲しがるものは無いだろう。
そんな彼が今現在手がけているのは、自身専用の新しい鎧と戦車の開発だった。
開発を始めたきっかけは、アインファーブルでの紙雪斎との接触だ。
お互い、手の内は殆ど晒していない。
あの時、シェルブレンは一般に出回っている携帯用の武器に専用カスタマイズを施したものを使い、紙雪斎もまた術を一部しか持ち合わせていなかった。
どちらも全戦力を出しているといえる状況ではなかったが、それでもシェルブレンにははっきりと認識できたことがあった。
今のままの装備では、本領を発揮した状態の“紙屑の”紙雪斎は殺しきれない。
ステングレアを仮想敵としていない、少し以前の情勢であればそれでも問題は無かった。
だが、今は違う。
アグニーに、というよりも、見放された土地近くに手を出したその瞬間から、メテルマギトにとってステングレアは敵になった。
仮想敵でも想定される敵でもなく、敵だ。
状況によっては、直にでも戦線が開かれるかもしれない。
ならば、それを倒しきるに足る戦力は整えなければ成らない。
この世界の国々には、規格外の戦力を持つ人間が一人や二人は必ず存在している。
それは一人で正規の軍隊に所属する一個小隊を壊滅させる力を持ち、戦場を切り裂くに足る能力を持ち、抑止力になるに十分な武力を持つ。
ステングレアにおけるその存在は、“紙屑の”紙雪斎である。
そして、メテルマギトのそれは“鋼鉄の”シェルブレン・グロッソだ。
もしシェルブレンが紙雪斎を止められなければ、メテルマギトは何百という兵をぶつけて紙雪斎を止めなければ成らなくなる。
その多くは、命を落とすことになるだろう。
逆に言えば、シェルブレンが止める事さえ出来れば、その命は散らずに済む。
戦時において彼等のような過剰戦力保有者は、まさに切り札だ。
その運用一つで、戦争の勝敗が決まることもある。
だからこそ。
“鋼鉄の”シェルブレンが、“紙屑の”紙雪斎を殺しきれないなどということはあってはならない。
それは一兵士同士の話ではなく、明らかな国有戦力の差になってしまうからだ。
メテルマギトが、ステングレアに劣るということになってしまう。
そうなれば、国に住む民が危険に晒されることになる。
メテルマギトに住む国民のほとんどはエルフだ。
敗戦国の国民がどんな扱われ方をするか。
孤児であったシェルブレンは、それを良く知っていた。
シェルブレンが昔住んでいた国でのエルフの立場は、実に悲惨だった。
敗戦国の民であったということを差し引いても、許容できる扱いではなかった。
メテルマギトが敗戦したならば。
恐らく、いや、十中八九あのときの様になるだろう。
そう、シェルブレンは考えていた。
それは、許容できることではない。
絶対に避けなければならない。
そんな思いが、シェルブレンの心にはあったのだ。
それが、シェルブレンに自分専用鎧の開発を急がせる原因になっているのだ。
「違う、この術式じゃない。もっと高威力の奴だ」
画面上にリストアップされる魔法を見て、シェルブレンは顔をしかめる。
瞳をせわしなく動かして、一つ一つの魔法の性能を比較していく。
彼がかけている眼鏡は特別製で、視線の位置を自動的に検出する入力器になっているのだ。
「残念ですが、現在ステングレア政府の最高機密級情報の中にも、これ以上のエリアルハンマーの情報はありません」
「民間の企業や個人所有は?」
「可能な限り侵入調査しましたが、リストにあるものが全てです。この調査のために、違法侵入を行いましたが、宜しかったのでしょうか?」
「構わない。ばれない様にやれ」
「了解しました」
さらりととんでもない会話が交わされる。
シルヴリントップは、あくまで人工知能だ。
それも、シェルブレン本人の設計開発したものである。
言わばシェルブレンは、シルヴリントップの親なのだ。
親の指示であれば、子は素直に従うだろう。
「仕方ない。エリアルハンマーを改良するぞ。立体映像を出せ」
「了解しました」
再び、部屋の中に光の粒子が漏れ始めた。
それはすぐさま形を成し始め、空中に光の線で作られた複雑な模様を描き出す。
彫鉄魔法エリアルハンマーの術式だ。
「さて。出力と発動スピードと、効果範囲だな。折角だから全体的に弄ってみるか。一時間もあればいけるだろう」
そういうと、シェルブレンはパキパキと指を鳴らした。
本来術の組み換えというのは、何ヶ月もかけて専門の技師が行うものだ。
魔法とはそれ自体が兵器であり、魔力というエネルギーを運用する為のプログラムだ。
改良にも改造にも時間がかかって当たり前である。
それを、シェルブレンは一時間もあれば出来ると言い放ったのだ。
だが、実際シェルブレンはその時間があればそれをやってのけてしまう。
それだけの知識とノウハウとセンスが、彼にはあったのだ。
早速作業にとりか掛かろうと、シェルブレンが手を伸ばしたときだった。
ピピピという、甲高い機械音が室内に響いた。
「ご友人の、マギナ様からの着信です」
「マギナ?」
シェルブレンは怪訝な顔をしながら、壁にかけてある時計に目を向けた。
やはりもう夜中を過ぎた、深夜や明け方前といったような時間帯だ。
気軽に連絡をとってくるような時間ではないだろう。
「繋げろ」
「了解しました」
「よう、シェルブレン。久しぶり」
シルヴリントップの声に続いて聞こえてきたのは、男性の声だった。
遅い時間にも拘らず元気そうであり、切迫した感は無い。
どうやらただ単に連絡を取ってきただけのようであった。
「どうしたんだこんな時間に。夜中の三時過ぎだぞ」
「いやぁ、お前普段仕事で居ないだろ? こんな時間じゃないと繋がらないからさ!」
悪びれる様子も無い友人の言葉に、シェルブレンは肩をすくめた。
ため息をつきながらも、空中に浮いた光の魔法陣へと手を伸ばす。
どうやら会話をしながら術式の改良をするつもりのようだ。
「それで、何のようなんだ?」
「いや、実はね。ようやくアグニープロジェクトへの参加の許可が出てね。医師兼研究者として、例の浮遊島に行くことになったんだよ」
「浮遊島? ケルプトへの入島許可が下りたのか」
ケルプトとは、現在メテルマギトがアグニー達を住まわせている、空に浮かぶ人工島だ。
今現在そこに入ることが許されるのは、極々限られたものだけだった。
エルフたちから見たアグニーの価値を考えれば、手厚く保護するのは当然だろう。
「ああ。それで、一応報告をとおもってね。読んだよ、お前の意見書。っていうか、半分論文みたいになってたけどな。お前の卒論思い出したよ」
シェルブレンとマギナという名のこの男性は、同じ大学の医学部を卒業した同期生であった。
もっとも、シェルブレンは本来四年掛かるはずの過程を飛び級で一年で卒業している為、在学期間は極短いのだが。
にもかかわらずシェルブレンとマギナが今も親しくしているのは、研究分野が同じだったことが関係していた。
二人とも、老化防止についての魔法による治療を含めた研究をしていたのだ。
「個体差があるはずの生物が、同じように魔法的効果で老いないのはどういうことなのか、個体数を増やしつつ長時間かけて観察する必要がある。か。たしかにおれもデータ見てびっくりしたよ。ここまで魔力的に個体差が無い人族生物も珍しいもんな」
メテルマギトが向こう百年間アグニー族を傷つけないと決定するまでには、様々な議論が交わされていた。
すぐさま研究を開始すべきだという意見もあったものの、多くの学者がそれに反対していた。
研究と言っても腹を物理的に開けて見るようなことは殆どないのだが、それでもアグニーに強い負担やストレスを与えることは否めない。
希少種族であり、研究対象であるアグニー族は、手厚く保護すべきだという意見が大半だったのだ。
多くの学者がそういった意見書や発言をし、現在のアグニー族の待遇が決まっていた。
その意見書を出した一人が、シェルブレンだったのだ。
「当然だろ。彼らは希少種族だ。それに、もし彼等を解析することで永続的な若さを得られるようであれば、エルフはアグニー族に途轍もない借りが出来ることになるんだ。借りは少ないほうがいいだろう」
「まぁまぁ。よく言うわ。相変わらずやさしいねぇ。お前もお前の姉さんも」
シェルブレンも、その姉も孤児であった。
別の国からメテルマギトに保護され、二人とも国に恩を返す為に必死になって勉強をし、社会貢献に尽くした。
シェルブレンは騎士として、そして姉は、医者として。
その姉に影響され、シェルブレンも医学を学ぶようになったのだ。
とはいえ、生まれ持ったものがどうやら騎士に向いているらしいと分かり、シェルブレンは今の職についたわけだが。
「で、どうして連絡してきたんだ。こんな時間に」
「随分だなぁ。お前がなかなか捕まらないからこんな時間に電話したんだろ? お前がかかわったアグニープロジェクトへの着任連絡だよ。それと、もう一つ。第一陣な、完成したらしいぞ」
「ああ?」
「老化防止。ていうか、実際完成したのは外年齢を変化させる魔法だったらしいけど」
忙しなく動いていたシェルブレンの手が止まった。
「なんだと?」
「アグニーの体内魔法の一部の解析が完了してな。外見だけだが、変化させる魔法が完成したんだよ。光の屈折の調整とかじゃなくて、体細胞の配列を変えての物質的な見た目の変化だ。とはいえ、まだ外見を変えるだけで内臓などの実質的な若返りは無理だけどな。お偉い年寄り連中がそれだけでも、って急がせたらしいぞ?」
「それ、機密情報なんじゃないのか」
「お前のシルヴリントップがクラッキングすれば直に分かる情報だろ? それを教えるだけで売れる恩なら売っておきましょう?」
冗談めかしての台詞だったが、大半は本気だろう。
シェルブレンは恐ろしく律儀な男だ。
借りた恩は必ず返す。
「分かった。一つ借りだな」
「はっはっは! まあ、いつか返してくれよ。じゃ、夜中に電話して悪かったな。それだけ伝えたかっただけだから。お休み」
「ああ、お休み」
小さな機械音が響き、通話が切れたことを知らせる。
シェルブレンは小さくため息を吐き出すと、かけていた眼鏡を外した。
両手で目を覆い、近くの机に突っ伏した。
「外見だけ、か。やっぱりもう少し時間がかかりそうだよ、姉さん……」
目的の達成には、まだまだ遠く及ばない。
それでも、着実に前進はしている。
もう一度ため息を吐き顔を上げると、シェルブレンは五日ぶりになる睡眠をとることにした。
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ステングレア王立魔道院は、機密諜報部隊のような役割を持っていた。
幾人もの隠密を抱え、それらが集めた情報を集約する。
国王直属であるから、その報告は国王へと直で行われる。
それらを精査した結論を元に、国王や様々な大臣、官僚が決定を下すのだ。
また、現場判断の裁量権も与えられており、場合によっては自分達で実力行使をすることもある。
その強硬な態度と組織力から、国内外から恐れられる集団であった。
何より恐れられているのは、彼等が保有する魔法の豊富さだ。
ステングレアは「魔道国家」と呼ばれることがあるように、長い歴史の中で幾億もの魔法を作り上げてきた。
王立魔道院はそれら全てを所有、保存しているのだ。
魔法とは武器であり、兵器だ。
それらを所有しているということは、それだけの武力を持っているということに他ならない。
世界有数の魔法技術を持つ国にあって、その国内にある全ての魔法を保有する実戦機密諜報機関。
それが、ステングレア王立魔道院なのである。
王立魔道院が保有する施設の一つに、「黒岩塔」と呼ばれるものがあった。
鉱石を魔法で押し固めて作り上げられたその外観は、名前の通り黒い岩をくりぬいて作られたようであった。
人里離れた山奥に作られたそれは、周りに比較になる建造物が無いにもかかわらず、一目で巨大と分かる異形を誇っている。
全長にして、優に300m以上。
建築されたのは数百年前であるにも拘らず、その姿は作られた当時とさして変わっていなかった。
この黒岩塔こそが、王立魔道院の本拠地なのだ。
その中を、一人の少女が足早に歩いていた。
少し気の強そうな釣りあがった目が印象的なその少女は、この伏魔殿とも言うべき場所には似つかわしくないように見える。
しかし、それは大きな間違いであった。
彼女の名は“蛍火の”マイン・ボマー。
ステングレアの軍事の名門ボマー家の娘であり、溢れんばかりの才能を有した少女だ。
魔力だけでなく、肉体的にも高いレベルにある彼女は、今現在ですら国内有数の実力を持っていた。
大国と呼ばれるステングレア国内で有数ということはつまり、世界でもトップレベルであるということだ。
実際、彼女の実力は、彼女の師である先代紙雪斎に近いものであった。
ある部分においては、超えてすら居るだろう。
そんな彼女では有ったが、紙雪斎の名を継ぐ事は無かった。
紙雪斎とは、王立魔道院の筆頭に代々引き継がれてきた、最高の紙陣魔法使いであることを示す名前だ。
王立魔道院の中で、もっとも優れた魔法使いに送られる名前である。
なぜ、それがマインのものにならなかったのか。
簡単だ。
彼女を遥かに凌駕した男が居たからである。
そう、現在の紙雪斎。
“紙屑の”紙雪斎だ。
本名を捨て、今は紙雪斎と言う名だけになった狼人族の青年は、全く規格外の力を有していた。
腕力と再生力で名を轟かせる狼人族の中でも、桁外れの腕力と丈夫さ。
魔力の権化とも言うべきエルフをも超える保有魔力。
全てが、異常であった。
マインは生まれてからずっと、天才だといわれて過ごしてきていた。
物心つく頃には簡単な紙陣魔法を操り、紙に陣を描くことすらやってのけていた。
子供の頃から大人に混じり訓練をして居たし、その大人達でさえ舌を巻くような才能を見せ付けていた。
魔法学校や大学を主席で卒業し、学校始まって以来の天才だと言われてきた。
実際、彼女が戦場に出れば、その実力は敵味方両軍に恐怖を与えることに成るだろう。
それに足るだけの才能が、彼女にはあるのだ。
そのまま行けば間違いなく紙雪斎の名を継ぐだろうといわれていたマインの前に、初めて立ちはだかった壁。
それが、今の紙雪斎であったのだ。
彼女が王立魔道院に入り、初めて先代の紙雪斎と顔を合わせたとき、彼女は数年の修業で追いつけるレベルであると認識していた。
国内最高峰である王立魔道院の当時の長でさえ、マインにとっては乗り越えることが出来る手近な壁でしかなかったのだ。
こんなものか。
それが、マインの正直な想いだった。
慢心であるということができるものは居ないだろう。
井の中の蛙であると、言うことができるものも居ないだろう。
ステングレアの王立魔道院は間違いなく世界最高峰の魔道組織であり、その長である紙雪斎は指折りの魔法使いで間違いない。
だが、事実として、その当時のマインとその時の紙雪斎の間には、さしたる差は無かったのだ。
ましてマインはまだ若く伸び盛りであった。
必ず超えられる壁を目標にするほど、志が低いわけでもなかった。
さほど関心も無く挨拶を終えたマインだったが、その後、直に衝撃を受けることになった。
弟子であると紹介された男を前にした瞬間、今まで生きてきた中ではじめて感じる敗北感を味わうことに成ったのだ。
マインは、井の中の蛙ではなかった。
間違いなく、大海を泳ぐ大魚であった。
広い世界を知り、その上で自分が十二分に強いことを認識していたのだ。
しかし、目の前に現れた男は、文字通り次元が違った。
マインが大海を泳ぐ大魚であったとするならば、その男は宇宙の大海原で星々の間を泳ぎ渡る化け物のような存在であったのだ。
それまでも、マインは負けたことは何度かあった。
いつか超えられると分かっている相手に、今の実力では及ばず負けたのだ。
それは絶対に越えられる壁であり、そのときの実力では勝てないというだけであって、糧になる敗北であった。
五歳の子供が、十歳の子供に負けるようなものだ。
だが、その目の前に現れた男に感じた敗北感は、そういうレベルのものではなかったのだ。
強いとか弱いとか、そういう次元のものではない。
自分と相手を比べること自体が間違っている。
そういう格の違いを、マインは男に感じたのだ。
あまりに差が有りすぎると、もはや敗北感も感じなくなるものらしい。
マインが生まれて初めて感じた絶望的な敗北感は、ほんの一瞬で霧散してしまった。
次に感じたのは、同じく生まれて初めて感じる類の、強者への憧れだった。
ただそれは、何時か自分もそうなりたいというような種類のものではなかった。
人が獅子や竜に抱くような、圧倒的な力へ対する畏怖にも似た憧れだったのだ。
その憧れは何時しか尊敬になり、今では崇拝へと変化していた。
先代の紙雪斎が死に、今の紙雪斎がその名を継いだとき、マインは嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
何時か自分が継ぐはずだと思っていた名を奪われたとか、そんな嫉妬の心は微塵も生まれなかった。
この方こそが、「紙雪斎」なのだ。
この方以上に「紙雪斎」という名にふさわしい方など、存在しない。
そう、マインは強く思っていた。
先代の紙雪斎など、マインにとってはただの邪魔者でしかなかったのだ。
随分と長生きして紙雪斎の名を手放さない先代紙雪斎だったが、数年前にようやく任務中の戦闘で死んでくれた。
正しい名が、正しい持ち主に伝承されたのだ。
紙雪斎の名に相応しいのは、今代である“紙屑の”紙雪斎を置いて他にはいない。
それ以外は、存在する必要がない。
そう、マインは心のそこから思っていた。
黒岩塔の中を歩くマインが目指しているのは、「大書庫」と呼ばれる保管施設だった。
紙に陣を描き魔法を発動させるステングレアにとって、書とはつまり魔法の事である。
王立魔道院の大書庫には、国中の魔法が本や巻物などといった形で保管されていた。
それを然るべき手段で紙に書き写し魔力を流せば、すぐさま効果を発揮することになる。
つまるところ、その場所は兵器保管施設のようなものなのだ。
マインがその場所を目指しているのは、崇拝してやまない人物を探す為であった。
「ん?」
歩いているマインの目の端に、ちらりと何かが横切った。
小さな小さな白いごみの様な物が転がっていくのが見えたのだ。
一瞬いぶかしんだマインだったが、ただのごみだろうと判断した。
近くの窓から風が吹き込んでいたし、あそこまで小さくては何が出来るということでもないだろう。
何より、魔力の残滓を感じなかったことが大きかった。
何かしらの魔法的なものであるならば、魔力が漏れるなどの痕跡が残るはずなのだ。
だが、その白いものからはそれを感じることができなかった。
マインは転がっていくごみから視線を外すと、再び目的地に向かって歩き始めた。
大書庫に近付くにつれ、見張りの数は多くなっていく。
錫杖を持った魔法使い達は、マインが近付くと礼をとった。
それに片手を上げて返しながら、ずんずんと進んでいく。
マインは王立魔道院の次席、つまりNO2の立場であった。
王立魔道院に所属するものは皆、マインに礼を払う。
それに対して、マインは相応に応える義務があった。
本当は紙雪斎以外の人間の事は棒切れ程度にしか思っていないマインだったが、王立魔道院は紙雪斎が長を務める組織である。
王立魔道院を正しく機能させることは、すなわち紙雪斎のためでもあるのだ。
故に、マインは王立魔道院の責務を果たすことに全力を傾けていた。
下の者に対しての態度や、こうしてゆったりと歩く態度も、王立魔道院の幹部としての正しい姿を示す為のものであった。
本当であれば、全力で駆け回り今すぐにでも紙雪斎の下へ行きたかった。
持てる魔法技術の全てをつぎ込んで、今すぐにでも紙雪斎に会いに行きたかった。
だが、そんな姿は紙雪斎が長を務める王立魔道院の幹部たるものにはふさわしくない。
落ち着き、冷静で、優雅で、気品に満ちた、素晴らしいものでなくてはいけないのだ。
すべては、崇拝して止まない“紙屑の”紙雪斎のためである。
ようやく、マインは大書庫の入り口近くにやってきた。
そのマインの目に、入り口の左右についた門番が左右から扉を開けているのが見えた。
大書庫は特別な許可があるものか、地位の高い人間にしか入ることが許されない場所だ。
タイミングから考えて、マインよりも前に誰かが入るか、誰かが出てくるかといったところだろう。
門番がマインを見れば扉を開けただろうが、それにしては速すぎる。
周りに目を向けても、入る様子のあるものはいなかった。
一体誰が出て来るのだろう。
もしや、紙雪斎様がお出になるのだろうか。
そう考えたマインだったが、入り口の前まで来ても、誰も出てくる様子は見られなかった。
誰も通らない扉をいぶかしげに見るマイン。
そんな彼女に、門番が声をかける。
「もう少ししたらマイン様がお出でに成るゆえ、門を開けよとのお達しでした」
そんな指示を出せるほど地位が高い人物は、そうそう居るものではない。
ましてそんな人物がこの黒岩塔に来ているのであれば、マインの耳にも入っているはずである。
だが、そんな人物に心当たりは無い。
居るとすれば、たった一人だけだ。
「紙雪斎様が中にいらっしゃるのですね?」
「はい。随分前から。どうやら写陣をなさっているようです」
写陣とは、本や巻物などの手本から、紙陣魔法の陣を紙に写す作業の事をさす言葉だ。
紙雪斎は大書庫の中で魔法の準備をしているらしい。
「分かりました、ありがとう」
マインは礼を言うと、扉の中へと入っていった。
門番たちは礼を取ると、すぐさま扉を閉じに掛かる。
この扉を開けるには、専用の魔法による干渉が必要だった。
開けるのにも、閉めるのにも、それぞれ専用の魔法があるのだ。
それらは発動に時間がかかり、どうしても入るには少し間が空いてしまう。
どうやら紙雪斎はその手間をマインに掛けさせまいとしたらしい。
そんな心遣いを感じたマインは、思わずその場で転げまわりそうになった。
一番手近に居る門番達に、如何に紙雪斎が強く逞しく素晴らしい人物であるかを小一時間語って聞かせそうになっていた。
だが、マインはその衝動をぐっと堪えた。
あれほどの力を持ちながら一切奢ることなく、自分のようなものにまで気を配って下さる紙雪斎の優しさを世界中に配信したかった。
だが、何とかその思いを飲み込んだ。
その行動は、マインが思う紙雪斎が長を務める王立魔道院幹部の姿として相応しくなかったからだ。
王立魔道院は、厳粛で、厳格で、秩序を重んじる組織で無ければならない。
そうでなければ、紙雪斎が長であるに相応しくない。
そう、マインは思っているのだ。
扉が閉まる音が聞こえても、マインは態度を一切崩さなかった。
大書庫の中は広く、本棚が乱立している為、未だ紙雪斎の姿は見えない。
だが、どのタイミングで顔を合わせることになるかわからない。
紙雪斎に会うに、相応しい姿と態度で無ければならない。
マインは早鐘の様に高鳴る鼓動を深呼吸で落ち着け、大書庫の中を歩き始めた。
大書庫には、様々な紙陣が収められている。
中にはそこから持ち出すことを禁止された、禁術や秘術もあった。
それらを扱うものは、大書庫の中で紙に書き写すしかない。
その為にいくつか机等が置かれているのだが、如何せん大書庫内は広く、紙雪斎がどこで作業をしているかの見当は付かなかった。
辺りを見回しながら歩くマインだったが、ふと足元に小さな白い紙片が転がっているのに気が付いた。
極々小さなそれは、ころころと床の上を転がっているのだ。
それを見たマインは、鋭く目を細める。
大書庫は気温や湿度を厳しく管理されており、内部で風が吹くことなどありえない。
にも拘らず、紙片はかなりの速さでころころと転がっているのだ。
「これは……」
思わず呟いたマインの言葉を合図にしたように、紙片がふわりと宙に浮かび上がった。
ヒラヒラと飛んで行くそれを、マインは歩いて追いかけた。
まるでマインの歩幅にあわせるような速度で飛ぶ紙片は、案内をするように廊下を進む。
いくつか目の角を曲がったとき、マインはようやく目当ての人物を見つけることが出来た。
「すまん。俺が行けば良かったのだが、これを仕上げてしまいたくてな」
手元から目線を外さずそういうその姿に、マインは思わずため息をこぼす。
マインにとって何よりも尊い存在であるその人物の姿に、見惚れてしまったからだ。
獣らしい大きな三角形の耳は、灰色の毛に覆われている。
普段よりも頭髪が長く伸びていて、その毛質も変わっているように見受けられた。
野真兎の衣服である着流しを着ているためよく見ることが出来るうなじと背中には、頭髪と同じ質の毛が生え揃っている。
肘から先の手の部分もやはり同じような質の毛に覆われていて、爪は人間のものではなく鉤爪に変わっていた。
それは普段はけっして見せることの無い、狼人族である紙雪斎の半獣化した姿であった。
紙雪斎は、自分が魔法使いであることに誇りを持っていた。
そのせいか、戦士として優れる半獣化した姿を人に見せるのを嫌う傾向があったのだ。
ただ、狼人族はその半獣化した姿のほうが自然体であり、リラックスした姿であった。
そのため、紙雪斎は気を許した人間の前では、その姿で居ることがあるのだ。
その中の一人が、マインであった。
紙雪斎の横顔を見ただけで、マインは胸がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。
自分しか知らない特別な紙雪斎の一面を前に、胸がときめいてしまったのだ。
別にマインしか知らないわけではないのだが、今のマインにそんなことは関係なかった。
自分が紙雪斎にとってある意味特別であるということのほうが重要だったのだ。
「いいえ。御気になさらないで下さい。紙陣の支度をして居ると言うのは知っておりましたから」
内心を完全に覆い隠し、マインはいつもの調子で返す。
動揺している姿は、王立魔道院の幹部に相応しくないと思っているからだ。
そんなマインの気持ちを知ってか知らずか、紙雪斎は陣を書き終えると、マインのほうへと向き直った。
ゆるく着流しを羽織っている為か、胸元は大きくはだけている。
その表情は穏やかで、普段の張り詰めた鋭い刃のような様子は微塵もうかがえない。
このとき、マインの中にあるアイディアが浮かんだ。
咄嗟に思いついたにしては、なかなか素晴らしいアイディアであるようにマインは思った。
まず、理性をかなぐり捨てて紙雪斎の胸に飛び込む。
あの少しはだけた着流しに顔を突っ込み、恐らく蒸れてこもっているであろう紙雪斎の匂いを全力で胸いっぱいに吸い込む。
そして、背中に手を回し、ぎゅーっとだきつくのだ。
マインは紙雪斎に近付いたときに感じることができる匂いだけで、ごはんが六杯はいける猛者であった。
それほどまでに紙雪斎を感じてしまったら、良くて鼻血、悪くすれば気絶してしまうかもしれない。
だが、どちらに転んでも恐らく紙雪斎はマインにあの手で触れてくれることだろう。
もしかしたら抱え上げてくれるかもしれない。
もしかしたら頭に触ってくれるかもしれない。
もしかしたらなでなでしてくれるかもしれない。
もしかしたら抱きしめてくれるかもしれない。
もしかしたら、お姫様抱っこしてくれるかもしれない。
マインは紙雪斎にお姫様抱っこされている自分を妄想した。
「軽いな。何時まで抱いていても疲れそうに無い」
紙雪斎が優しげな笑顔で、そんなことを告げる。
勿論マインの脳内での話しだ。
何時までも抱いていても疲れそうに無い。
それは何時まで抱いていてもいいということだろうか。
何時までも抱いていたいということかもしれない。
多分そうなのではなかろうか。
きっとそうだろう。
いや、そうに違いない。
つまり紙雪斎は「お前を何時までも抱きしめていたい」といったのだ。
勿論、マインの脳内での話である。
「秘術を用意するついでに、監視用の魔術を試していてな。紙片に白い墨で陣を書いたのだが、上手く魔力を流せば気取られずに監視が出来るのだ。これでお前の事も見つけてな。ん? どうした?」
「はっ。いつもながら見事な陣。見惚れておりました。私も見習いたいものです」
いぶかしげに眉をひそめた紙雪斎の言葉に、マインはすぐに返事を返す。
もう少し声をかけられるのが遅ければ、煩悩に負けていたかもしれない。
内心で冷や汗を拭いながら、マインは顔には一切出さずに心の中で自分を戒めた。
欲望に屈するようなものは、紙雪斎様のお側近くに仕えるのに相応しくない。
もっと気を引き締めねば、と。
マインの言葉に、紙雪斎は苦笑をもらす。
「俺はこれしか能が無い。お前の様に策を考えることも状況を精査することも出来なんだ。先の会議でのお前のアグニー族への対応の提案。あれには唸らされた。やはり俺は頭を使うのは向かん。頼りきりになってしまうな」
「そのような。紙雪斎様の役に立つ為に私は居るのです。どうぞご存分に使い潰し下さい」
「うれしい言葉だが、かわいい妹弟子に苦労をかけるのもな?」
肩をすくめていう紙雪斎。
その「かわいい」という単語は、一瞬でマインの脳内レコーダーに保存された。
今まで保存してきた妄想映像や他の保存音声と組み合わせ、脳内シチュエーションホルダを更に充実させそうになるマインだったが、寸前の所で正気に返ることが出来た。
危ないところであったが、今のは紙雪斎がいけないのだ。
マインの前でしか見せない一人称「俺」とマインの事を「お前」と呼ぶ流れでキュンキュン来ている所に、不意打ちで「かわいい」という単語をぶち込んできたのだから。
良く訓練しているマインだから良かったものの、一般の人間であれば間違いなく理性を崩壊させていたに違いない。
そんな考えが、マインの頭の中を乱舞していた。
一般の人間ならばそのぐらいでどうこうならないのだが、今のマインにそんな瑣末なことはどうでもいいことだったのだ。
「ん、そうだ。用が有るのだろう? 各地に放つ隠密の件か?」
「はっ。人員の選抜と、派遣する場所の草案を纏めましたので、確認頂こうかと思いまして」
「よい。お前の目は信頼している。俺が確認することもあるまい」
「そんな!」
「それよりも……」
突然鋭く細められた目に、マインは思わず口を噤む。
一瞬で引き締められた紙雪斎の表情に、気圧されたのだ。
「俺は今一度アインファーブルに行かねばならん。今あの土地では何があるか分らぬ故な。あそこを拠点にすれば、いくつかアグニー族を囲っておるといううわさの場所へ行くのにも都合が良いしな。最も一番気になるのは、“鋼鉄の”シェルブレンの事ではあるがな。やはり、戦うのであれば直接某が赴かねばなるまいよ」
半獣だった紙雪斎の姿が、徐々に人のものへと変わっていく。
シェルブレンの名を口にしただけで、相当に気が引き締まったらしい。
先ほどまでのリラックスした様子が嘘の様に、普段見せる王立魔道院筆頭の顔へと変化していく。
「貴様も存分に力を振るってもらうぞ。覚悟しておけ」
「はっ!」
反射的に、マインは片膝と拳を地面に付き、頭を下げた。
背中に冷たいものが流れるのを感じてしまう。
それが自分に向けられたものではないと分かっていても、紙雪斎の体から漏れる殺気は恐ろしいものなのだ。
そんなマインの様子に気が付いたのか、紙雪斎の殺気が消える。
それにあわせて顔を上げたマインに、紙雪斎は再び僅かに微笑んで見せた。
「頼りにしているぞ、マイン」
「はっ! お任せを!」
この後、大書庫を出たところで限界を迎えたマインが鼻血を噴いて門番が大いに慌てることになるのだが、当然紙雪斎がそれを知ることは無かった。
ちょうなげぇ。
色々書いてたら超長くなった・・・。
まあいいか。
次回はアグニー村についに名前がつきます。
エルトヴァエルさんと土彦がまた内臓系の病にかかりそうです。
赤鞘はどうなるんでしょうか。
あと全然関係ないんですが、毎回自分で読み直してるんですが相変わらずマジで誤字を見つけられません。
別に認識障害ってわけでもないみたいなんですがなんなんですかね。
仕事の後に酒飲みながら書いてるのが悪いんでしょうか。
となると悪いのは酒か。
おのれ酒め・・・!
次回「いくら私を馬鹿にしてもかまわないが、男の子にブルマーを履かせるのを邪魔するのだけは絶対に許さない」
どうぞお楽しみに。




