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六十二話 「それがしは誠、人の縁には恵まれておるようでござる!」

 野真兎という国は島国であり、他地域からは暫く隔絶した環境にあった。

 ならばそこは平和であったか、といえば、全くそのようなことはない。

 寧ろ狭い地域の中で、何故そこまでと思われるほどの闘争を繰り広げられ続けた、他国から見れば「血塗られた歴史を持つ国」と呼ぶにふさわしい国であった。

 他国と国交が確立し、内乱が収まった今でさえ、野真兎の兵士、「サムライ」は、戦場においては恐れられる存在である。

 今は平和であるにも拘らず、「サムライ」達は牙を研ぎ続けている。

 もはやそういう種族であるといってもいいかもしれない。

 門土・常久も、そんな野真兎のサムライであった。


 もう、何年も前の話だ。

 門土はある老サムライの御付きとして、ある家に召抱えられた。

 サムライの家に生まれた門土だったが、五男である彼は言わばお荷物だった。

 けして裕福ではない家を少しでも楽にしようと、彼は奉公に出るつもりで家を出たのである。

 御付きといえば聞こえはいいが、仕える相手は現役を退いた老サムライだ。

 要するに、体のいい介護役である。

 勿論、門土の家人も、周りの人間も、皆そのことは分かっていた。

 門土を不憫に思うものも居たが、当の本人はそれほど悲観してはいなかった。

 本物の戦を知るサムライの下で働けるのだ。

 その思いが、寧ろ喜びを門土に与えていたのである。

 野真兎は、平和になってしまった。

 内戦もない。

 外との戦もない。

 戦争のない時代になったのだ。

 それは、戦に生きるものにとって、生きる意味のない時代と言っていい。

 サムライは戦をするだけのものでは、当然ない。

 民百姓が安全に生活するために魔獣や野盗と戦い、時に争いの仲裁をするのも、またサムライの務めだ。

 しかし、戦に生き、戦働きを誇るのもまた、サムライであった。

 平和な時代に合わないサムライは国を捨て、傭兵や冒険者として世界各地に散らばっていた。

 その活躍は、祖国である野真兎にまで響いている。

 国内での大戦が無くなり始めた頃に生まれた門土は、戦に出たことがなかった。

 大きくなれば、大人になれば、腕一本でのし上れる。

 そう思いながら、大人たちが戦に出かけていくのを見送ったことは何度もあった。

 だが、自身が戦場に立つことは、ついになかったのだ。

 それは幸せであるのか、不幸なことであるのか。

 門土には分からなかった。

 ただ、幾つもの武勲を打ち立てた老サムライに仕えることは、少しでも戦場に近づけることであるように思っていたのである。


「お前さん、人を斬った事がないねぇ」

 それが、老サムライが門土にいった最初の一言だった。

 心臓を掴まれたような気がした。

 息が止まり、どっと全身から汗が噴出した。

 老サムライはそんな門土を見て表情を崩すと、楽しそうに笑った。

「良い事だ。時代は変わったね」

 そういって笑う老サムライに、門土はぽかんとした表情をすることしか出来なかった。


 大きな戦がまだ度々起こっていた時代。

 その老サムライは“速駆け”とあだ名され、様々な戦場を巡った文字通りの猛将であった。

 有る時は少ない手勢を率いて敵陣に切り込み、あるときは殿を務め見事に味方を逃がして見せる。

 その働きはまさに獅子奮迅であったという。

 とはいえ、寄る年並みには勝てないものだ。

 門土が仕え始めた頃には、もう隠居生活をしていたのだった。

 話には、もう若い頃の勢いは無くなり、穏やかになったただの老人だと聞いていた。

 門土はその老サムライに直接会ったその瞬間、そういったものを殴り飛ばしたくなった。

 たしかに、見た目には穏やかで、にこやかな老人に見えるかもしれない。

 武術を嗜んだことの無い、ただの人にはたしかにそう見えるだろう。

 門土は物心着く前から刀を振り、サムライになる為に生きてきたような男だった。

 だからその老人のうちに潜むものに、気が付いてしまったのである。

 まず一見して門土が感じたのは、竜に睨み付けられたような威圧感だった。

 早まる鼓動が収まってきて、冷静さを取り戻してから気が付いたのは、その姿勢のよさだ。

 まっすぐに伸びた背に、そのしなやかな体。

 何より、その手と、足だ。

 兎人は、他の種族よりも遥かに脚が優れた種族だった。

 その脚力は、鍛えさえすればとてつもない力を見せる。

 跳ねれば十数mを軽く超え、走れば獣も追いつけぬ速さを誇る。

 その速さと力を合わせてこそ、兎人は刀という特殊な武器を扱いこなすことが出来るのだ。

 であるから、強靭な脚と、その足を使った移動の中で刀を取り落とさない為の手は、その兎人のサムライとしての強さを如実に表す部位だといわれている。

 この老サムライの手はどうだろう。

 指が僅かに曲がったままになっているのは、ずっと刀を握り続けたことによるものだろう。

 太く節くれだち、未だに力を滲ませる筋肉が浮き上がっている。

 脚はどうだ。

 大きく丸太のようでありながらも、動きにぎこちなさがまるで無い。

 筋肉という重い鎧を身につけながら、その動きは全く滑らかでしなやかだ。

 これぞまさに、サムライの理想とするところである。

 そう、幼い門土にすら分かるものだったのだ。

 この老サムライは、未だ戦場に名を轟かせていた頃の力を失っていない。

 にも拘らず、表面上は楽隠居を決め込んでいる。

 穏やかな笑顔と物腰の奥に、確かなサムライの証を持ちながら。

 疑問を抱えながらも、門土の老サムライの付き人としての生活が始まった。


 老サムライの付き人という仕事は、なかなかに忙しいものであった。

 まず、朝が早い。

 毎朝日の昇る頃には、老サムライは起きだしていた。

 そして、庭先で重しのついた木刀を振るっているのだ。

 最初はその鬼気迫る様子にはらはらしていた門土だったが、何時しか自身も一緒に木刀を振るうようになっていた。

 門土は実家暮らしをしていた頃、道場に通っていた。

 その頃からこの手の鍛錬はよくしていたので、仕えるようになってもそれができるのは嬉しかった。

 それにしても驚いたのは、老サムライの素振りの正確さと力強さだ。

 若く伸び盛りである門土よりもはるかに重い木刀を力強く振りぬきながらも、その切っ先は地面すれすれでぴったりと止まるのだ。

 それは、振り下ろした木刀の重さを、完全に押さえ込んでいることを意味する。

 刀をはじめて振るうものは、まず足を怪我するという。

 筋力が足らず、振りぬいた刀を止めることが出来ないからだ。

 この老サムライは、それをものの見事に御して見せている。

 これは、驚くべきことだ。

 この素振りは、朝日が昇り始めてから日が昇りきり街が起き出す頃まで続く。

 回数にすれば、数百回にも及ぶだろう。

 門土がふらふらになってきたころ、老サムライは素振りを止める。

「さて、飯にするか」

 この言葉で、ようやく朝の鍛錬は終わるのだ。


 老サムライは、まず家で飯を食うということをしない人物だった。

 必ず屋敷を出て、何処かの店に入り飯を食うのだ。

 野真兎は基本的に朝夕と、一日二回の食事が多い。

 肉体労働者や権力者は、三回の食事をすることも有った。

 そんななかでこの老サムライは、なんと一日三回の飯を食うのだ。

 これには門土は大いに驚いた。

 老サムライはたしかに権力者ではあるが、今は働いているわけではないのでそんなに飯を食う必要は無いように思われた。

 なのに、この老サムライは、とても年齢からは想像もできない量の飯を食うのだ。

 それも一汁一菜というような質素なものではなく、お造りや鍋等、貧乏暮らしだった門土には手の届かなかったようなものばかり。

 さらに驚いたのは、付き人である門土にもそれを食えということだった。

 実家の食い扶持を減らす為に家を出た自分が、家にいる頃の何倍も豪華な飯を、それも一日三度も食べることに成るとは。

 最初は遠慮していた門土だったが、老サムライのある言葉をきっかけにそれをやめることになった。

「サムライと言うのは、何時喰えるかわからぬ商売だ。食っておくのも仕事のうちぞ!」

 そういわれてしまっては是非もない。

 付き人として働いてはいるが、やはり門土の夢はサムライとして戦場に立つことなのだ。


 朝飯を食べ終わると、老サムライは山に入ることが多かった。

 街の近くの山には温泉がわいており、そこにつかりに行くのだ。

 ただ、老サムライは思わぬことを言い出すことが多かった。

 やれ、「温泉場へ行く道がぬかるんでいる」とか、「湯が漏れているから岩を持っていって塞ごう」とか。

 兎に角身体を動かすようなことを進んでするのだ。

 それも、それを門土にやれ、というのではない。

 自分でやると言い出すのだ。

 温泉へ行く道はそれなりに険しく、行き着くだけでもそれなりに難儀する。

 周りは木に囲まれており、道を直す道具も、下手をすれば岩すらも山に担いで上らなければ成らなかった。

 まさか自分は何も持たず、老サムライにそんなことをさせるわけには行かないだろう。

 門土が自分が持つと言うと、驚いたことに老サムライは「邪魔をするでない」というのだ。

 邪魔も何も、それが門土の勤めなのだからどうしようもない。

 なんとか説得して門土が荷物を持つ事になるのだが、いざ山に入ろうとすると、いつの間にか老サムライも同じような荷物を背負っているのだ。

 どうしたのかと門土が聞くと、こんな答えが返ってくる。

「二人で行くなら、二人分運べるだろう。仕事がはかどる」

 そういって険しい道を門土よりも速く登っていくのだから、是非もない。

 門土はその後を必死になって追いかけ、ふらふらになりながら温泉場に着くのだ。

 そして、温泉場の修繕や道の補修などを行う。

 ひと段落が着くと、ようやく温泉に入るのだ。


 山を降りると、また豪華な昼飯を食べ、今度は医療所へと足を運ぶ。

 老サムライがそこの老医師と懇意にしており、いつも茶を飲みに行くのだ。

 二人が話している間、門土はただ待つだけの時間になる。

 暇なだけというのもなんだろうと、老サムライは近くにある道場で見学でもしていろ、と言ってくれた。

 早速門土がその道場に行ってみると、どうやら既に話がついていたらしく、快く迎え入れてもらえた。

 ずっと武芸に親しんでいた門土であったから、道場での稽古を見ることができるというのは、実に嬉しいことだった。

 見稽古という言葉があるように、剣術とは練習風景を見るだけでも稽古になるものなのだ。

 しばらくは道場の隅でじっと稽古を見るだけだった門土だったが、あるとき、思いがけない言葉をかけられた。

 門弟に混ざり、稽古をしてみないかといわれたのだ。

 この提案に、門土は飛び上がって喜んだ。

 朝の稽古と昼の山での労働の事も忘れ、熱心に道場稽古に励んだ。

 稽古が終わり、井戸で汗を流して老医師の邸宅に戻ると、大体二人の話は終わっていた。

 そして、縁側で口喧嘩をしながら将棋を差しているのだ。

 待った、待たないで、あわやつかみ合いのけんかになりそうな剣幕だ。

 これには門土も苦笑するしかない。

 勝負がついたところで、老サムライは老医師の邸宅を後にする。

 明日は勝つだの、明日もボコボコにしてやるだのと言い合いながら別れるのだが、この二人はどういうわけか馬が合うらしい。

 将棋の事以外では実に息が合い仲がいいのだから、人間というのは分からないものである。

 この頃には既に日が傾いているので、後は何処かで夕飯を食べるだけだ。

 老サムライが選ぶ店はやはり豪華で、しゃれた店ばかりであった。

 一日の疲れを癒すように、老サムライも門土もよく食べた。

 腹が一杯になれば、もう後は寝るだけである。

 そんな生活が、一年は続いた。


 ある日のことだ。

 老サムライが倒れたのである。

 それまで全くいつもと変わらぬ様子であっただけに、門土は心底驚いた。

 そして、家人から聞かされた話に、さらに驚くことになった。

 老サムライは一年も前から、病を患っていたというのだ。

 それも、直すことの出来ない、不治の病を。

 そう、一年も前から、だ。

 それは丁度、門土が老サムライに仕え始めた頃である。

 一体それはどういうことなのか。

 疑問を抱く門土に、老サムライはこんなことを話した。


 ずっと戦場で生きてきて、まさか病で死ぬとは思わなかった。

 死ぬときは泥の上で、敵に切られて死ぬものだと思っていたが、どうやら畳の上で死ねるらしい。

 それも、死ぬまでに一年も合間があるという。

 人が不幸なことだといったが、自分にはとてつもない幸運に思えた。

 死ぬときが分かっているなら、それまで精々今まで戦場で溜め込んだ金を使い、楽しんでやろうと思ったからだ。

 したいと思っても、しなかったことをしてやろうと。

 まずは、飯だ。

 毎日美味いものを好きに食ってやろう。

 そう考え、街の飯屋を調べまわっている時だった。

 面白い子供を見つけたのだという。

 戦が終わり、平和な世だというのに、まるで敵でも探すかのように鋭い目つきで尖った気迫を発している子供だ。

 サムライには、そういう手合いが多かった。

 だが、そこまで殺気だった者は、殆ど国を出て傭兵にでもなっているものだった。

 子供だてらにそんな気迫を放つ子供が面白く、興味がわいた。

 調べてみれば、道場に通う五男坊だと言う。

 ならば、自分の手元において育ててみたい、そう思ったというのだ。

 いわずもがな、その子供というのは、門土の事である。

 自分につき合わせて剣を振るわせ、肉体労働で身体を鍛えさせ、知人の道場で稽古を付けさせた。

 勿論、本人にはそんなことは言わない。

 ただ、老人の道楽につき合わせるという形で、ばれぬようにとそれらをやってみたのである。

 理由は、面白そうだったから、だ。

 どうせ自分は死ぬ間際なのだ。

 そういう道楽があってもいいだろう。

 最初はその程度に思っていたが、実際にそうしてみれば、どうだ。

 元々本人の真面目な性格もあったのだろうが、見る見るうちに成長したではないか。

 今では立派な、サムライの顔になっている。

 若いというのはうらやましいものだ。

 だが、自分はもうすぐに死ぬ。

 そうしたら門土、お前にはいくらかの給金を与え、暇を出すように家人には言ってある。

 好きに生きろ。

 戦場に行くもよし、冒険者とか言うものになるもよし、何処かに仕官するもよし。

 その腕、その技、好きに活かせ


 それから数日して、老サムライは永い眠りについた。

 戦場を駆け回り、“速駆け”と呼ばれた男の最後は、実に穏やかなものであった。

 老サムライの言葉通り、門土にはかなりの金子が与えられ、暇を出された。

 ただ、渡されたものはそれだけではなかった。

 一振りの刀が、渡されたのである。

 それは老サムライが戦場を駆け巡っていた頃、腰に携えていたものであった。

 一年。

 短い時間ではあった。

 ただ、様々なことがあった時間でもあった。

 辺りの顔役のような存在であった老サムライの元には、様々な話や問題が飛び込んでくることが多々あった。

 それらを解決する手伝いをしたりするのも、門土の仕事の一つだった。

 慕われ、知己に富む老サムライを一番近くで見ていたのは、門土である。

 知らず、涙がこぼれていた。

 葬式の場でも、眠る老サムライの枕元でも流れなかった涙が、どういうわけが飯を食っているときに流れてきたのだ。

 老サムライが死んだという実感がずっとわかなかった。

 だが、飯を食べているときに、ふとそれに気が付いたのだ。

 考えてみれば、ここ一年、ずっと飯は老サムライと二人で食べていた。

 一人で飯を食べて、門土はようやく老サムライが死んだということを実感として感じていたのだ。

 涙を流しながら飯をかき込み、ふとあることを思い出した。

 飯のときに聞いた、老サムライの話である。

 世界には、いろいろな魔獣魔物がいて、それらと戦う連中もいる。

 様々な国があり、様々な妖術を使う。

 昔はそれらの国に行くことなどとてもとても出来なかったが、今では空を進む船もあり、簡単にいくことが出来る。

 実に恐ろしい時代になったものだ、と。

 飯を食い終わる頃には、門土の気持ちは決まっていた。

 自分の目で、世界を見てやろう。

 自分の目で、いろいろなものを見てやろう。

 その道中はそれなりに危険であろうし、何があるか分からないだろう。

 なに、自分には“速駆け”が認めてくれた腕ある。

 いかようにも成るだろう。

 これは自分のしたいことであり、初めて成したいと心から思ったことでもある。

 きっと老サムライも、後押しをしてくれるに違いない。

 思い立ったら吉日である。

 門土は老サムライの家人から受け取った金子を全て実家に置いて、刀一本だけを手に旅に出た。

 あての無い、いわば世界を見るための旅である。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 研ぎあがった刀を、「金物屋」の主人であるトナックはゆっくりと丁寧に鞘に戻した。

 近くで腰掛けていた門土にそれを渡すと、大きくため息を吐き出す。

「いや、驚いた。大業物だな。ここでそんな刀にお目にかかれるとは思わなかった」

「あっはっはっは! これはそれがしが人生の師から譲り受けたものでござってな! それがしのようなものには過ぎた刀でござる!」

 門土は刀を受け取ると、鞘から抜き放つ。

 ずっと作業工程を見ていたので確かめることも無いのだが、今一度磨き上げられた相棒を確認したくなったのだ。

「まさかこの地で刀を研げるとは思いませなんだ!」

「実は修業時代に野真兎にいったことがあってなぁ。そのときに覚えたんだよ。お前さんにゃぁ満足いかねぇ出来かも知れねぇが。まあ、勘弁してくれ」

「なんのなんの! いやいや素晴らしい出来でござるよ!」

 実際、その研ぎ上がりは十二分に満足のいくものだった。

 旅の道中あまりしっかりとした手入れをしてやれなかっただけに、ここでトナックのような職人に出会えたのは実に幸運だった。

 曇りも無く、水面の様に落ち着いた刀の表面が、トナックの腕が確かであることを門土に教えてくれる。

「なるほど、野真兎で修業を! では、この仕上がりも合点がいくと言うものでござるなぁ!」

「おお。あの国じゃあ随分いろいろ学ばせてもらった。最初はウナギなんてあんな気持ちの悪い魚を食うへんな連中だと思ってたけど」

「あっはっはっは! たしかに見た目は悪いでござるがな! アレの蒲焼はなかなかおつなのでござるぞ?」

「だな! 俺も実際食ってみてびっくりしたもんだ。この辺の川でも取れるのに、今じゃぁ食わねぇのが信じられねぇ!」

 二人の会話を聞いている妖精のバイキムは、嫌そうに顔をしかめていた。

 ウナギは地球とほぼ変わらない姿で、「海原と中原」にも生息している。

 バイキムは、アレを食うなんて信じられないといったような表情だ。

「初めて食ったのが、確かミツヤとかいう店でなぁ。すげぇ美味かったもんだ」

「ほぉ、三津屋でござるか! それはもしや、網手という街の桜川という川沿いの店ではござらぬか?!」

「そうそう! その通りだ! なんだ、お前さんも知ってる店か!」

「今しがた話した人生の師によく連れて行かれた店でござるよ! いやいやいや! これは、奇縁でござるな!」

「まったくだ! 今週は面白い週だな! 二人もサムライに会って、その一人は同じ店に行ったことがある男か!」

 二人も、というトナックの言葉に、門土が大げさな仕草で手を叩く。

「そうでござった! トナック殿! そのサムライはもしや、水彦殿という名ではござらぬか!」

「おおよ! その通りだ! なんでぇ、知り合いか?!」

「いやいや、実はその水彦殿を探す為にこの街に来た次第でござってな! まさかこんなにも早く知っておる御仁に出会えるとは!」

「なに、そいつもここの客でな! 寝床も知ってるから、すぐに会えるぞ! おい、バイキム! お前ひとっ走り行って呼んでこい!」

「へ、へい! 合点だっ!」

 げんなりしていたバイキムが、慌てたように飛び出していく。

 そんな様子を見て、門土は愉快そうに笑った。

「いや。それにしても、それがしは誠、人の縁には恵まれておるようでござる!」

 心底嬉しそうに笑いながら、門土は膝を叩いた。

門土さんの事情回という訳で。

次回は、世界各国の話しをちょこちょこ書こうと思います。

いくつかの国の話しを書くつもりなので、本当にちょこちょこ。

初お目見えの国も出てくる予定です。


今、一生懸命キャラクター名簿を作っているのですが、どういう形式でまとめていいかすげぇ悩んでおります。

やっぱり国別か・・・。

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