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外伝 とっても最高神 がんばれアンバレンスさん!

 最高神の仕事には、ほかの世界との外交も含まれる。

 外交と一口に言っても内容はさまざまで、端から見れば雑談をしているようにしか見えないものも存在する。

 だが、実際には世界間の魂の循環などの高度な政治的、神域的問題に必要であることが多い。

 そう、たとえ一般社会における普通の会社員同士の会話に見えても、それは人間には理解し得ない高度に神様的な会話で有ったりするのだ。




 その日アンバレンスは、「海原と中原」の近くに存在する世界「異聞域」に来ていた。

 そこは基本的に科学を発達させている世界であり、独自のエネルギー「高光力」を原動力として使っている。

 これは地球で言うところの「電気」のようなものであり、使っている当人たちにとっては当たり前で有って当然で珍しくもなんともない宇宙の成り立ちの一部なのであるが、別の世界から見ると「なにそのちーとエネルギーバロスwww」といわれるようなものである。

 使ってるやつらはそれがいかにすごいものなのか気がつかないものなのだ。

 科学世界と魔法世界の違いのひとつに、「科学」の力を使ってるやつらはそれに感謝しないというのがある。

 魔法世界では大体魔法の力は神に与えられたとか考えられていて、使えるだけで神様は何にもしなくても大体すごく感謝されるのだ。

 お布施とか感謝のお参りとかもすごくしてもらえる。

 それに便乗して宗教団体が勢力を伸ばすのがうざったかったりもするが、まあそれはそれで便利なこともあるから、世の中何事もよしあしである。

 とにかく、アンバレンスはSF系世界の「異聞域」というところに来ているのである。

 そこの最高神である「コウテンノシンカミ」との会談が、今回の目的だ。


「いやぁー、ご無沙汰してますー! いつもおせわになってー!」

「いやいやいや、こちらこそ! なんか母神さんが新しい世界作ったとかで! 忙しいのにわざわざどうも!」

「そんな! もうご挨拶が遅れちゃってほんとすみません!」

「またまたまた! 全然そんなことないですって! もう! 今一番大変なときでしょう?」

 完全に会社員ぽい会話では有るが、忘れてはいけない。

 彼らはお互い各世界の最高責任者なのだ。

 実は二人は年齢が近く、同じ太陽神であるところから仲がよかった。

 境遇も似たところがあり、コウテンノシンカミの親である神は三万年ほど前に消滅していたりする。

 実際は世界を作ったとたん「しゃべぇ、SFんなっちった。俺ファンタジー専なんだよね」と、息子に世界を押し付けて出奔していたりするのだが。

 とてもではないがその世界に生きる生物にそんなことはいえないので、世界の安定のために身をささげたという設定になっている。

「いやー、ほんとわざわざ来てもらっちゃって! 久しぶりじゃない?」

「かれこれ200年ぐらい? かな?」

「あー、経ちますねぇー」

「で、どうしたんすか? 今日は」

「いや、じつわね。すんげー頼みにくいっていうか、マジ申し訳ないんだけど。こんなことアンちゃんにしか相談できなくってさ」

「なになになに。え、怖いなぁ。言ってみてよ。俺とコウちゃんの仲じゃないの」

 とりあえずの挨拶を済ませ、二人は本来の口調に戻っていた。

 ここからが深刻な話になる合図でもある。

 ある程度でもまじめな口調で話をすると、腹が割れないし疲れるのだ。

 普段自分たちの世界では威厳を保たなくてはならない、彼等のストレス発散法でもある。

「いやー。実はさ。うちのほら、時間のやつがね? ちょーっと借り作っちゃった魂があってさ」

「うっわ、マジか」

 時間の神というのはかなり高位の神である。

 会社でいうと経理とかぐらい権限が強い。

 怒らせるとシャーペンの芯すら買ってもらえなくなるのだ。

「え、まさか、あれ? 転生?」

「なのよ。なんかファンタジー世界に転生したいとかほざいてて」

「うっわ。まっじか。ばっかでぇー」

「だよなぁー。どこもあまくねぇっつーの」

 よく勘違いされがちだが、魔法も才能がないと使えない。

 魔法の才能は後付できたりしやすいと思われがちだが、計算機なしでPCより早く計算ができるような脳みそが必要になるので、人格をそのまま保って転生させると思考に齟齬が出たりする。

 あほの子を突然高スペックな体に入れても、脳みそに追いつけずに元の記憶や人格が霧散消滅するのだ。

「えー。またあれか。能力高くしろ的な?」

「なのよー。でも約束しちゃったからマジでさーあー」

「あーあー。まじかー。えー、でも知ってるでしょコウちゃん。うちの世界そういうの無理線よー?」

「だーよーねー。アンちゃんとこスペック高すぎじゃん?」

「っだよ。まじ無理だよ?」

「どーしよー。来週なんだよ転生させるの」

「あー、んー」

 アンバレンスはあごに手を当てると、しばらくうなった後で手を叩いた。

「俺の知り合いにあれだ、どうぶつばっか的な世界のやつがいるわ。そこなら何とかなるんじゃね?」

「え、マジか。頼めるの?」

「たぶんいける。この間ほら、大量に罪抱えた魂さばいたことあったじゃん。あの時うち、一万ケース中二千ケース引き取って貸しが有るから」

「うっわひくわ。そんな引き取ったらバランス崩壊しない?」

「まぁまぁ。うちはそういうの得意だから」

「マジか。うらやましいわぁー」

「とにかくあれだ。連絡とって見るから。期待しないで待ってて」

「たすかるぅー! 今日これからいくカラオケおごるわぁー!」

「まてまてまて。割り勘のつもりだったのかよ」

「てへぺろ?」

「うっわ。男がやっていいアクションじゃねぇー!」


 結局、件の転生魂は北海道に北極熊として転生する程度の転生ちーとを授かり、同族のメスでハーレムをこさえて満足して天寿を全うした。

 その間、その魂がコウテンノシンカミやアンバレンスに感謝することは一度たりともなかった。

 せいぜい最初のうち、件の時間の神に感謝したぐらいである。

 それでも、アンバレンスは今日もお仕事を続けるのだ。

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