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百三十三話 「お、いたいた。おーい、門土さーん、水彦さーん! 模擬戦やろうぜぇーい!」

 バタルーダ・ディデという国は、これといった特徴のない国である。

 いわゆる「人間種」が主体となっている国にはありがちな「人間至上主義」国家であり、それなりの魔法技術を持っている。

 他国に突然滅ぼされない程度の軍事力を有するものの、他国を完全に圧倒しきるほどの戦力は持っていない。

 外交は可もなく不可もなく、周辺諸国とは根本的にはいがみ合っているものの、それなりに折り合いをつけて「笑顔で握手しつつ心の中で中指を立てる」関係に落ちつけている。

 少し前に戦争を体験しているものの、現在は火種は抱えつつもおおむね平和。

 周辺諸国はバチバチに戦時中であるにもかかわらず、国民は「今は平和な世の中だ」と自国だけを見て考えており。

 王族や貴族といった国の運営にかかわる人間は、「今の状態がいつ崩れるのか」とびくびくしている。

 実によくある、「平和を謳歌している普通の国」であった。


 このバタルーダ・ディデは、海に面した国であった。

 周辺は地続きで外国と接しているものの、一面は海といった地形だ。

 今のところ平和を謳歌しつつも、周辺諸国はきな臭い。

 そんな状況と地形を、バタルーダ・ディデは大いに利用することにした。

 海に面した土地を運送国家諸国に貸し出し、そこから利益を吸い上げることにしたのだ。

 戦争というのは、金も物も消費する、巨大消費事業である。

 物資はいくらあっても足りず、物によっては外国から取り寄せるしかないものも少なくない。

 そうなれば、当然買い付けて輸送してくる必要があるわけだが、この世界に置いてはその「輸送」が鬼門になる。

 大量の物資を運ぶには特殊な技術が必要で、それを持っているのはおおよそ「輸送国家」に限られてくるのだ。

 商売上手な輸送国家諸国が、これを見逃すはずもない。

 バタルーダ・ディデは、そんな彼らに「平和」で戦争をしていない、戦争をしている国の近くの土地を貸し出すことで、利益を得ている、というわけだ。

 国民は、平和と戦争反対を叫びながらも、その実、周辺諸国がほかに戦争を抱えているから見向きもされず、その周辺諸国に物資を売っているから自分達が潤っているということに目を向けることもない。

 実に、エルトヴァエルあたりが好みそうな話である。


 そんな状況も手伝ってか、「物資の一種」である「奴隷」の売買も、バタルーダ・ディデではそこそこに繁盛していた。

 アグニーを手に入れたのは、そんなそこそこの繁盛に乗っかった、奴隷商人の一人というわけだ。

 メテルマギトがアグニーを求めていると察知し、何とかしてアグニーを手に入れたのだろう。

 だが、自国が「人間至上主義」国家であったことが災いした。

 メテルマギトに、コネクションを持っていなかったのである。

 何とも気の抜ける話であるが、とりあえず商品を確保しようとした商人が間違っているとは言いにくいだろう。

 商品を確保できないのであれば、そもそも売ることなどできないのだ。

 いつ手に入れられるかわからないものを、とにかく確保しておく、というのも、考え方としては正しい。

 現状では売る算段こそつけられないわけだが、売れさえすれば大きな利益も見込める。

 何しろ、「商品」というのは、あのメテルマギトが欲しがっている「アグニー族」なのだ

 少々の危険を冒しても、手を出す意義は、間違いなくある。

 まあ、もっとも。

 今回の場合は、その危険が的確に襲い掛かってきたわけであり、奴隷商人にとっては最大級のリスクが降りかかってきた形になるわけなのだが。




 ガルティック傭兵団の持つ戦闘潜水空母は、無事に「見直された土地」を出発した。

 水中を進むこと、丸一日。

 海上に浮上したところで、予定の船と合流することとなる。

 スケイスラーが用意していた、偽装船舶だ。

 空中を移動する船であり、離発着には水面を利用するタイプのものである。

 バタルーダ・ディデの港では多く利用されている船種であり、偽装するにはもってこいの代物だ。

 ガルティック傭兵団を待っていたこの偽装船舶は、外見こそ輸送船ではあるものの、中身は別物であった。

 外見上は、内部に荷物を詰め込む形式の輸送船舶ではある。

 だが、実際にはその内部は広い空間が広がっており、ドックのようになっていた。

 船底は開閉可能になっていて、ガルティック傭兵団の戦闘潜水空母を丸ごと収容可能になっているのだ。

 この偽装船舶は別に、今回のために特別に用意したもの、というわけではない。

 スケイスラーが、元々所有していたものである。

 こんな船を、いったいどんなことに使っているのか、という質問は、まぁ、野暮というものだろう。


 戦闘潜水空母を収容した偽装船舶は、水面を離れ上空へと浮上。

 予定の航路をたどり、一路バタルーダ・ディデへと向かう。

 この移動中も、ガルティック傭兵団の面々は仕事を進めていた。

 スケイスラーの船舶間通信と、風彦による直接の情報収集。

 そういった手段を利用し、奴隷商人に捕まっているアグニーの、現状把握に努めていたのだ。

 何しろ、アグニーは「商品」である。

 心配はあまりないだろうと予想されるとはいえ、いつ売られるとも限らない。

 また、虐待をされていないかなどの確認も、必要であった。

 幸いなことに、今のところ状況の変化は特になく、差し迫った危険は確認されていない。

 問題があるとすれば、初めての船旅でテンションが上がった水彦が、船の内部をやたらめったら動き回っていることぐらいだろうか。

 楽しそうに船内を走り回る水彦と門土、そして、それに引きずられていくキャリンの姿は、ガルティック傭兵団と偽装船舶の船員達に、生暖かい目で見送られていた。




 偽装船舶の甲板。

 そのヘリに座り海を眺めながら、水彦は紙皿に乗せたケーキを食べていた。

 水彦は、赤鞘の血と水によって創られたガーディアンである。

 海にも深いかかわりを持っているはずの存在なのである、が。

 実際に海を間近でじっくりと見るのは、今が初めてであった。


 一応、知識としては海のことは知っている。

 赤鞘から与えられた中にも海に関する知識もあったし。

 実際に海に行ったことがある赤鞘と記憶をある程度共有した関係上、海へ入った感覚も潮風のにおいも、何となしにはわかっている。

 だが、それらはあくまで与えられたものであり、水彦自身が経験したものとはいえないものだったのだ。

 自身に深く関わりのある海というものを、水彦は今、創られてから初めて間近に感じ、見つめているのである。

 水彦は海を眺めながらケーキを口に運ぶと、ゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ。

 そして、わずかに眉間にしわを寄せて、つぶやいた。


「いいかげんあきるな、うみ。ただの、だだっぴろいみずたまりだぞ。りくちがないと、ありがたみがない」


 ひどい言いようであった。

 確かに水彦は水のガーディアンであったが、当の水彦にとっては別にどうでもいいことであったのだ。

 一応身近な場所ではあるが、それよりはむしろ「うまい魚が取れるところ」という認識であり、そっちの方が重要だったのである。

 同じ属性の土地であるだとか、初めて訪れる自分の体を形作るものに満ちた場所であるとか、そういった感慨は一切ない。

 そういった、いかにもらしい情緒や風情とは、一切無縁なのだ。

 ではなぜわざわざ甲板に出てケーキを食べているのかといえば、風彦が居たからであった。


「はぁー。どこまでも続く海に、その上を吹き抜ける風。水彦にぃと私が一緒にいるみたいで、ステキですよね!」


 水彦の隣に座る風彦が、キラキラと目を輝かせ、ため息交じりに言う。

 そんな風彦に胡乱げな視線を送りながら、水彦はケーキを食べ続ける。

 水や風といった自然物を基とするするガーディアンとしては、風彦のほうが正しいリアクションだろう。

 若干夢見る乙女的なアレが入っているが、それは風彦の特性みたいなものなので仕方がない。

 水彦は若干疲れたように風彦から視線を外すと、逆となりへと視線を向けた。

 すぐ隣に座っているのは、水彦と同じケーキをほおばっている門土である。


「もんどのしゅっしんこくは、しまぐにだったよな」


「そうでござるなぁ! 生まれた土地も海の近くでござった! こうして眺めていると、懐かしくなってくるものでござる!」


「うまれそだったところなら、そういうものなのかもな」


 正直水彦にはよくわからない感覚だったが、まぁ、そういうものなのだろうと納得した。

 一瞬、兎が海沿いに住むものなのか、とも思ったが、地球には「うさぎ島」と呼ばれるようなところもあるのだから、きっとそんなものなのだろう。

 それよりも、門土の方を見たときに視界の端に移ったものが気に成った。


「うっぷっ……これ、もう、おぐぅっ……」


 真っ青な顔をしてうずくまっている、キャリンである。

 船酔いと思しき症状に苦しんでいるキャリンを見て、水彦は首をかしげた。


「そんなにゆれてないだろ」


 実際、舟はさほど揺れていない。

 スケイスラーの船は、実に高性能なのだ。


「そうなんですけど。なんかこう、水面が動いてるのと、それに対して地面があまり動いてないのとで、違和感があるというか」


「せんさいなやつだな」


 呆れたように言いながら、水彦はケーキを口に運ぶ。

 何層も生地を重ねたようなケーキで、地球で言うなら真っ平なバームクーヘン、とでもいったところだろうか。

 若干パサついていて口の中の水分を持っていかれがちになるが、飲み物と合わせると非常においしい。


「それで、かぜひこ。おれは、なにをすればいいんだ」


 ケーキをもしゃ付きながら、水彦は改めてというように風彦に尋ねた。

 現在、戦闘潜水空母の内部では、急ピッチでバタルーダ・ディデ到着後の行動予定が見直されている。

 スケイスラーの通信設備や、風彦による現地偵察で得られた情報を元に、当初予定していた行動を練り直しているのだ。

 現地での行動はかなり綿密に立てられていたため、練り直しといっても誤差の調整程度ではある。

 だが、その誤差が作戦の成否を決める場合もあるので、おろそかにすることはできない。

 そうした真剣で難しい会議の内容を、水彦はほとんど聞かされていなかった。

 どうせ言ってもよくわかんないだろうと、判断されたからだ。

 ちなみに、その判断を下したのは、エルトヴァエルであった。

 誰からもその決定に苦情が出なかったのは、言うまでもない。

 とはいえ、さすがにそろそろ何をするか聞いておかないと、現地に行って困るだろうと、水彦は判断していた。

 何時もだったら直前まで聞かない、というか最後まで聞かなくても気にしないところだが、今回はアグニー族の身の安全がかかっているのだ。


「水彦にぃは、アグニーさんを奪還したあとの護衛です。実行部隊がアグニーさんを奪還後の足を守る。ということですね。状況によっては、しんがりになっていただく場合もあります」


 アグニーを奪還の際、奴隷商人が追ってくる恐れがある。

 もちろんそうならないように一手間加える予定だが、予定通りいかない場合のことは考えねばならない。

 しんがり、つまり追ってくる敵の邪魔をして味方を逃がす役割は、水彦にうってつけといっていいだろう。

 とりあえず目に付く敵全部を攻撃すればいいわけで、そのぐらいであれば細かなことを考えるのが嫌いな水彦でもこなすことができる。


「なにもなければ、でばんなしか」


「なぁに! この手の仕事には、出番がない方がよい役割を担うものも必要でござるよ!」


 豪快に笑う門土に、水彦は顔を向ける。

 門土はすっかりケーキを食べ終え、お茶をすすっていた。

 この兎人は基本的に早弁体質なのだ。


「もんどは、なにをするんだ」


「船の警備でござる! 港の外にも出ない仕事でござるな!」


 兎人というのは、今はまだあまり自国から出ることの少ない種族だ。

 それでいて、外に出ている兎人は、門土の様な武辺者が多い。

 戦いに明け暮れ、用心棒のような仕事をしたり、より強い相手を求めているようなものばかりなのである。

 そんな兎人である門土が、曲がりなりにも「平和」なバタルーダ・ディデの中にいると、非常に目立つのだ。

 なるべく目立たないようにというのは、ある意味当然の配慮だろう。


「しかたないか。まあ、てきがくれば、あばれるきかいもあるだろう」


「然り然り! しかし、役目を果たすことを考えれば、そうならぬ方がよいのでござろうがなぁ! 全く世の中というはままならぬものでござる! あっはっはっは!」


 水彦も門土も、強いやつと戦いたいという戦闘民族的本能を持っているらしい。

 キャリンはそんな二人に引きつった顔を向け、風彦は「ちょっと凶暴な水彦にぃもかわいい」と思っていた。


「じゃあ、きゃりんはなにをするんだ」


「え? 僕ですか? いえ、何も聞いていませんけど。というか僕に何ができるわけもないですし、船の中で待機だと思いますけど」


「キャリンさんは、現地に到着し次第、現場の周辺調査に同行することになっています。観察力を買われたようですね」


「はい!? いや、風彦様それぼくあの、初耳なんですけど!?」


「あれ? じゃあ、あとで言われるんだと思いますよ」


 突然ぶち込まれた爆弾に、キャリンは目を白黒させた。

 自分には荷が重い事態であり、できれば隅っこで丸まっていたいと思っていたキャリンにとっては、寝耳に水の話である。


「待ってください! 僕なんか役に立ちませんよ!」


「いやぁー。決めたのはガルティック傭兵団の方々ですし。許可を出したのはエルトヴァエル様ですから。私には何とも」


 ガルティック傭兵団は、キャリンの目から見て間違いなくプロの集団だ。

 素人であることを自覚しているキャリンにはわからないが、彼らがそういうのであれば、何かしら連れて行く利点があるのだろうと、キャリンは考えた。

 エルトヴァエルについては、キャリンの理解の外だ。

 天使様が「そうだ」といえば、人間の意向など丸ごとすべて関係なく「そう」なるのである。

 この世界において、神様の言葉の次に重いのが、「天使様の言葉」なのだ。

 ましてそれが「罪を暴く天使」様のものとなれば、なおさらである。


「そんな……! どうして、こんなことにっ……!」


 キャリンは絶望した表情で、頭を抱えた。

 顔色が青白いからか、漂わせる悲壮感が半端ではない。

 そんな様子を、風彦は気づかわしげに見ているものの、決定権がないので見守ることしかできなかった。

 諜報員的な立ち位置であり、ガーディアン的に末っ子な風彦には、まだまだ権限らしい権限はないのである。


「お、いたいた。おーい、門土さーん、水彦さーん! 模擬戦やろうぜぇーい!」


 かけられた声に反応して、水彦達はそちらを振り向いた。

 そこにいたのは、木刀を両手に数本ずつ持った、プライアン・ブルーである。

 ガーディアンである水彦相手にかなり馴れ馴れしい呼び方だが、これは水彦が許したものだ。

 水彦は基本的に、敬われたりするのが肌に合わないタイプなのである。


「もぎせんってなんだ」


「模擬戦ってほら。よもぎを煎餅にしたやつ」


「うまいのかそれは」


「ジョークですよぉ、ジョーク。いっつぁじょーく。模擬の戦闘。ほかの言い方をすると、練習試合とか手合わせとか、訓練とか演習とか?」


「あーあーあー」


 ようやく理解したというように、水彦は頷いた。


「おまえ、ひまなのか」


「暇ってわけじゃないんですけどね? ほら、動けるときには動いとかないと、体なまっちゃうじゃないですか? 門土さんとか水彦さんみたいなお強い方とガチじゃ無くやれる機会って希少なんですよね」


 大げさにため息をついて見せるプライアン・ブルーを見て、水彦は「ちょうほういんも、たいへんだな」といった。

 実際、超適当人間に見える、というかそのもののような生態と行動を示すプライアン・ブルーだが、これでも気を抜いたらすぐに死につながるような世界で生きている。

 死ぬほど面倒くさく、できるならやりたくないと強く思いながらも、自己研磨は欠かすことがないし、その機会は逃さない。

 一秒でも早く辞めたいとは思っているが、曲がりなりにもプライアン・ブルーはプロの諜報員なのだ。

 そんなプライアン・ブルーの提案に、門土は面白そうに笑った。


「それは面白そうでござるな! 噂に名高い“複数の”プライアン・ブルー殿と手合わせできる機会というのは、早々ないでござろう!」


「そうだな。おれも、まえから、けっこんでき・ないーのじつりょくは、きになっていた」


「ちょっとまって!? あれ、おっかしいなぁー! 今絶対ありえない間違え方しましたよね!? 言い間違いのレベルじゃないやつでしたよね今の!!」


 突っ込みを入れるプライアン・ブルーだが、水彦はスルーすることにしたらしい。

 納得いかなさそうな顔のまま、プライアン・ブルーは木刀を水彦と門土へ放った。

 もちろん、どちらも無難にこれを手に収める。

 水彦達が握りを確かめるように振り始めるのを見ながら、プライアン・ブルーは思い出したようにうずくまってえずいているキャリンの方へ顔を向けた。


「そういえば、そこの絶望に打ちひしがれてる少年。前に会ったことあったよね? たしかイノシシさばいてもらった感じの」


 声をかけられ、キャリンは弱々しく頭を上げた。

 なんのことかわからない、というような表情が、徐々に凍り付いていく。

 確かに、キャリンは昔、プライアン・ブルーと会っていた。

 それはキャリンにとっては強烈な体験であり、分相応に、慎重に生きていかなければならないと考えるようになった、きっかけともいえるものである。

 言ってみれば、人生の分岐点だ。

 自分を殺そうとしていた強力な魔物を、軽い感じで魚のひらきのように掻っ捌いた、超越的な実力者。

 キャリンに身の程というものを痛烈に感じさせ、恐怖を植え付け、その後の人生を決定づけた、張本人。

 その時の印象があまりに強烈すぎたために、今の今までキャリンの中でその人物と、目の前でへらへら笑ってる人物が、結びついていなかったのだ。

 ついでに言えば、そういったことを考えていられるような状況ではなかった、というのもある。

 天使やらガーディアンやら精霊やらが飛び交っている中で、冷静に物事を考えられる奴はなかなかいないだろう。

 行ってみればキャリンは、ずっと錯乱状態にあったのだ。

 むろん、現在進行形である。

 そんなキャリンの頭の中で、その時の体験と、目の前にいる人物が、今ようやく結びついたのだ。


「あ、あのときの、そうか、“複数の”って。どうして今まで気が付かなかったんだ僕、うっぐっ! うえぇ……!」


 急激な情報の追加で、キャリンはついにオーバーフローを起こした。

 気持ち悪そうに腹を抱えながら、地面にうずくまったのだ。

 慌てた風彦が背中をさすったりし始めるが、水彦、門土、プライアン・ブルーは、不思議そうにその姿を眺めるばかりである。


「なに。どうしたの彼」


「さぁ! キャリン殿は繊細でござるからなぁ!」


「それより、はやくやろう」


「えー。三人同時にやるとあれでしょ? グーとパーで別れてやる? 余った人は審判で」


 バインケルト辺りが見たら怒鳴り散らしそうなほどの気安さで提案するプライアン・ブルーの提案に、水彦と門土は「それだっ!」と大いに納得して乗っかった。

 のちに風彦が「自分が参加することにならなくて本当に良かった」と語る、壮絶な模擬戦の幕開けである。


 そんな騒々しい連中を乗せた偽装船舶は、バタルーダ・ディデへ向かい、順調に航路を進んでいくのであった。

なんかサクッと終わらせるはずの話でしたが、書いてたら楽しくなってきて伸びました

そういうのよくあるよね


次回はすげぇ長ったらしい名前の国に到着して、アグニー奪還の準備を進めます

あと余裕があったら、捕まってるアグニーを紹介します




それと、本編とは関係ないんですが


「木の精霊に転生することになったんだけど想像してたのと違う」

って話を書いてます

良かったら作者作品一覧 だっけ? とかから見てみてください

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