男装少女の地獄生活5
登場人物紹介
・ルイ アルマーノ
レベル668。母親を幼くしてなくし、父親は女であるから弱くあるという思考を捨てさせるため、男のように一人称から服装まで物語のようにしている。今回は裁判でユーを何が何でも助けるためとっておきの証拠を用意した。戦闘技術は全てメイドが教え込んだ賜物である。
・ユー アジダハーカ
闇属性の竜の末裔にして人間界から追放されし種族。ドラゴンの姿でダンジョン近くの王国の兵士に殺されそうになっているところをハイクス配下の当時のメイド長に助けられた。竜の姿でも擬人化した姿でもどちらの形態での戦闘にも長けている。
闇魔法、破滅魔法、煉獄魔法、悪魔属性、巨竜化を完全習得している。また短距離の転移を最近習得した。レベルは911
一度はあきらめた命だが、ルイの本気の目を見て一縷の望みにすがった。
・元老会7番
文字通り元老会のナンバー7であり、合計10人で構成されている。今回の裁判については何やら自身があるようで、議場に来てからずっとこちらを見るたびニヤっと笑う。
「それでは、ユー・アジダハーカの裁判を始める。元老会、今回の詳細を述べよ」
「裁判長、彼女は侵入者に加担し崇高な大王様の僕を2体も殺害しました。これは許されざるべきであります」
裁判所の傍聴席からはそうだそうだとヤジが飛び、裁判官が皆を鎮める。
「静粛、静粛に! んんっ。弁護人ルイ・アルマーノ皇女、今回の反逆について何か弁護はあるか?」
彼女はユーの方を見る。彼女は鎖で手足を縛られ、重い鉄球と魔封じの首輪をされている。あんなみじめな姿は直ぐにでも終わらせて再び二人で生活するんだ。
「裁判長、被告は禁呪によって操られた可能性があり、その検証に彼女が侵入者と対峙した場所の痕跡を第三者組織に調べてもらいました。証拠の提示許可を願います」
「許可する。扉を開けなさい」
法廷の扉が開くとゴブリンが1匹四角いタイルを運んでくる。
「コレ ゲンバノイシ カンテイスル」
「では私が鑑定します。異議のあるものは?」
特に声を上げるものは居ない。裁判長は鑑定魔法を詠唱し、タイルが宙に浮かぶ。
「ふむ、特段魔法の痕跡はないですな」
「はぁっ!?」
ルイは動揺する。第三者組織で鑑定した時は痕跡がはっきりとあり、これで一気に詰めることが出来ると思っていたからだ。
「おやおや皇女様、禁呪なんておぞましい物をあんな矮小な下等生物が使用できるわけございませんでしょう…妙な事は裁判で不利になりますぞ」
唇をかみしめる。彼の不敵な笑みは明らかに裏工作があったに違いない。
「ふむ、現状の証拠は彼女が魔王様の僕を殺したという罪状通りですな。弁護人、何か他に提示するものはありますか?」
必死に考えを巡らせる。そもそも元老会の息のかかった者も纏めて火球で消し炭にしてしまったためそいつを証人にすることもできない…何か方法は。。。
「っ…裁判長、傍聴席への発言許可を」
「?はぁ、許可します」
「ほっほっほ、血迷いましたかな皇女様」
元老会の奴の言葉は耳に入ってこない、大声で最後の希望を賭けて叫んだ。
「現場にワンアイは居ませんでしたか!? いたら協力を!!」
法廷にざわめきが走る。数分のうち最後列から1匹が飛び上がる。
「キー!(現場で見ていました、皇女様に命を捧げます)」
「あぁ…ありがとう。裁判長、予定にない証拠の追加の許可を」
「それは…」
「許可する」
裁判長の後ろに鎮座していた大王が口を開く。基本的には裁判長が最高権限を持つが、大王が許可すればそれは裁判長の権力を超える。
「ゴホン、大王より許可が下りました。提示してください」
「待つんじゃ! そんなの何の証拠になる!」
元老会の年老いたドラゴニュートは慌てる。
「何を慌ててるのですか元老会の方…貴方に都合の悪い物でも?」
「そんなことあるわけなかろう!」
「では…」
ワンアイと呼ばれる一つ目のコウモリを一思いに潰す。断末魔と共に彼の見た景色が映し出される。丁度ユーとルイの戦闘しているところから始まり、ならず者たちを映す。そこには元老会のローブを着た者が中央に立っているのが鮮明に映っていた。
「これは…元老会、説明を」
裁判長が説明を求めるが、元老会の検察は顔を真っ赤にしたまま動かない。
「そこまで!」
大王が声を張り上げる。
「今回の襲撃に元老会が関わっていたのは今、明白となった。よって検察、元老会7番のお主を反逆罪としてここで死刑とする!」
「おのれぇ…これでもくらえぃ!」
無詠唱で氷の礫をルイに飛ばす。しかし到達する前に火球で相殺された。元老会の7番と呼ばれた彼が被告席を見ると、拘束の解かれたユーの胸が赤く輝きブレスの準備をしている。
「大王が命ずる。ユーよ、そなたの罪はここに誤解であると示された。直ちにその反逆者を抹殺せよ」
「承りました」
7番は走り出す。脱兎のごとき逃げ足だが、ユーの煉獄魔法の方が早い。業火に包まれた彼はその場で息絶えた。
「判決を言い渡す! ユー・アジダハーカを無罪とする。以上閉廷!」
拍手の中ルイはユーに飛びつく。
「よかった…ほんとに……」
「お嬢様の機転が利いたおかげです……これで大王様とお嬢様2人に救われてしまいました」
拍手が巻き起こる議場を後に、2人はルイの寝室へ向かう。いつものごとくルイはユーをベットに誘い、彼女もまたそれを拒むことはなかった。
・ベットで二人の会話
「ユー今日は頑張ったね…またこうして近くにいてくれて嬉しいよ」
胸元に抱き着き彼女は離れない。先ほど火炎を吐いた直後なので火袋のある胸はホカホカしている。
「お嬢様が居なければあの場で生き残ることも、裁判で勝つこともできませんでした…」
ユーは皇女の髪の毛を撫でながら言う。片手で抱き寄せて決して離すつもりはない。
「ユー…ん…」
皇女は彼女の頬にキスをした。突然の出来事に火炎袋が熱くなる。
「お嬢…様!?」
「今日くらいいいじゃん…ね?」
それ以上ルイは語らない。ユーにもそれ以上の言葉は必要なかった。
部屋のランタンが付いたまま夜が更けて行った。




