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君が好きだよ。ずっと大好き。私の世界が終わっても、あなたが好き。……大好き。  作者: 雨世界
12月24日 夕方 久しぶり。元気にしてた?
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1 おーい。なにしているの?

 瀬戸夏


 自由な空


 君が好きだよ。ずっと大好き。

 私の世界が終わっても、あなたが好き。

 ……大好き。


 木戸遥


 空の中へ


 空の中で手をつなぐ。

 あなたと。わたしと。

 笑顔で。一緒に。……泣きながら。


 雨森照子


 手の届かない、高い空


 もうすぐ、あなたがやってくる。

 ……私はあなたに恋をする。


 おーい。なにしているの?


 12月24日 夕方 久しぶり。元気にしてた?


 空は厚い灰色の雲に覆われている。予報では今夜は雪が降るようだ。こんなどんよりとした暗い空を眺めていると、なぜ自分がこんな場所にいるのか、よくわからなくなってくる。

 瀬戸夏は鮮やかな青色をした上着のジャージのポケットの中から、もうぼろぼろになってしまった手書きの地図を取り出して、自分の位置を確認した。目的地までは、あともう少しだ。

 冷たい風が大地の上を吹き抜ける。その風が少し癖のある、夏の腰の辺りまで伸びた自慢の美しい黒髪を柔らかく揺らした。夏の足元には舗装もされていない土色の道があり、夏の周囲には緑色の草原と澄み切った空気がある。そんな風景を、夏は道の上に立ち止まって、ぼんやりと眺めている。

 ……まあ、いいところかな。うん、悪くはない。これから会うことになる私の友達は、こんな世界の中で暮らしているのか、……少し意外だ。

 いや、そもそも環境なんて気にしないのかも? 仕事ができればどこだっていい。遥はきっと森にも空にも興味はないだろう。そして、たぶん、私にも……。

 だから私はこうして遥を追いかけているんだ。誰かと出会うことは偶然かもしれない。でも別れは絶対に偶然ではない。勝手にいなくなるなんて許せない。

 夏はその場で、うーんと大きく背伸びをしてから、思いきり深呼吸をした。澄み切った透明な空気が夏の小柄な体の中の隅々にまで吸収されて、数秒後に白い息となって吐き出された。

 そして笑顔になった夏は、それからまた元気に歩き始める。突然自分の前からいなくなってしまった夏の友達(そう。私たちは友達だった)であり、世界でも有数のとびっきりの変わり者でもある、天才美少女(そういろんなところに書かれていた)、木戸遥に一言文句を言うためだ。

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