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守りたい  作者: 口羽龍
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 その翌日の事だ。今日は龍典と咲江が会う日だ。ここ最近、2人はデートをしていた。だが、光には全く伝えていない。結婚するまでは内緒にしようと思っている。


 龍典は東京駅で待っていた。会うときは大体ここで待ち合わせだ。龍典は咲江に会うのが楽しみでたまらない。日々の寂しさを忘れる事ができるから。


「おはよう」


 龍典は横を向いた。そこには咲江がいる。今日はきれいな服を着ている。外出するから、特別な服を着ているんだろう。


「おはよう」

「今日だったね」


 咲江は笑みを浮かべている。咲江も嬉しそうだ。


「うん」

「行こうか?」

「うん」


 2人は地下通路から東京メトロと都営地下鉄の大手町駅に向かっていた。東京駅には東京メトロ丸の内線しか乗り入れていない。だが、地下通路で大手町と接続していて、事実上ここが地下鉄の東京駅のようになっている。


 2人が乗ったのは、半蔵門線だ。半蔵門線は東急田園都市線と東武線と相互乗り入れをしていて、東急の電車や東部の電車も乗り入れてくる。とても賑やかな路線だ。これに乗れば一直線にスカイツリーに行ける。


 2人は半蔵門線に乗ってスカイツリーに向かっていた。車内には家族連れがちらほらいる。彼らはスカイツリーに行くんだろうか? 彼らを見て、龍典は思った。いつか、光と一緒にスカイツリーに行きたいな。そして、幸せな時間を過ごしたいな。


 電車は押上駅に着いた。押上駅はスカイツリーの最寄り駅で、スカイツリーが開業してからとても多くの人がやってきて、とても賑わっている。今日も押上駅は賑わっている。


 2人はスカイツリーの前にやって来た。スカイツリーは高くそびえ立っている。その姿を見て、2人は息をのんでいる。ここにやって来たんだと考え、これから2人だけの素晴らしい時間が始まると思うと、ワクワクしてくる。


「いよいよスカイツリーだね」

「うん」


 ふと、龍典は思った。咲江はスカイツリーに行った事があるんだろうか? 自分は1回しかない。別れた妻と娘と行った事がある。


「スカイツリー行った事、ある?」

「うん。だけど、最近はあんまり行ってないのね」


 咲江はあんまりスカイツリーに行った事がないようだ。家事や仕事の事で精一杯だからのようだ。


「そうなんだ」

「仕事ばっかりでそんな暇が取れないのね」


 咲江は申し訳ない気持ちだ。仕事ばっかりで光に何も知れやれないままだ。そんな母だけど、許してくれ。


「そうなんだ」

「龍典さんは?」

「最近行ってないんだ」


 龍典は寂しそうだ。娘と一緒にまた行きたいと思っているのに、全くその機会がない。


「そうなんだ」

「誰かと一緒に行きたいんだよ」


 龍典は泣きそうになった。そんな龍典を見て、咲江は龍典の頭を叩いた。


「その気持ち、わかるよ。今日はよかったですね」

「ああ」


 2人はエレベーターで天望デッキに向かっている。2人は興奮している。その先には東京を一望する絶景があるんだ。そう思うと、ワクワクが収まらない。


 2人は展望デッキにやって来た。天望デッキには多くの人が来ている。その多くはカップルや家族連れだ。2人は窓から東京を見下ろした。とてもいい風景だ。来てよかったと感じる。この景色を、光にも見せたいな。


「きれいだね」

「うん。何度見ても素晴らしいわ」


 2人はその景色に見とれていた。周りの人も見とれている。いつも思っている事がある。高い場所から見る景色は、どうしてこんなにも人を魅了するんだろう。


「本当だね」

「龍典さんはどこで生まれたの?」

「生まれも育ちも東京」


 龍典は生まれも育ちも東京だ。父親は教員で、母は専業主婦だ。両親とは高校の卒業を機に独立して、現在は1人暮らしだ。1人暮らしに慣れていて、全く寂しいと感じていない。


「そうなんだー。私は横浜」


 咲江は横浜生まれで、高校を卒業するとともに、東京の会社で働き始めた。そこで知り合った男と結婚した。そして東京にマイホームを建て、新婚生活を楽しんでいたという。だが、夫とは離婚して、今では光と2人暮らしだ。


「そっか。横浜はよく行くんだけど、最近はあんまり行ってないな」


 龍典は横浜にはたまに行った事がある。だが、もっぱら行くのは中華街で、食べ歩きがほとんどだ。


「いつか2人で行きたいね」

「そうだね」


 龍典は思った。いつか2人で横浜に行きたいな。観覧車から横浜の夜景を見たいな。




 12月24日、クリスマスイブ。この日はクリスマスプレゼントを買いに来る大人が多くいる。彼らには子供がいて、この日にプレゼントを渡す。


 龍典は東京タワーの前にいた。東京タワーは東京スカイツリーができる前に東京の電波塔だった場所だ。昔から観光スポットとなっていて、今でも多くの人がやってくる。


「あの人、どうしたんだろう」


 龍典は時計を気にしている。今日は咲江とのデートの日だ。そして、龍典は咲江にあるプレゼントをする日だ。どんな反応をするかわからないけど、喜んでくれるといいな。


「お待たせ!」


 龍典は振り向いた。そこには咲江がいる。咲江はスカイツリーに来た時よりもっときれいな服を着ている。今日はクリスマスイブだからだろうか?


「どうしたの?」


 咲江は思っていた。どうして今日は一緒にいようと思ったんだろうか? 普通の夜なのに。東京タワーに来てと言ったのは、龍典だ。どうしてなのか聞きたかった。


「今日はクリスマスイブなんで、一緒にいようかなと思って」

「いいけど、どうして?」


 咲江は戸惑っている。クリスマスイブは普通、家族で過ごすのに。どうして2人っきりなんだろう。


「まぁ、いいじゃないか」

「そ、そうよね・・・」


 そろそろ時間だ。東京タワーに行こう。


「じゃあ、行こうか?」

「うん」


 2人はエレベーターに乗り、展望台にやって来た。今日も多くの人がやってきている。東京スカイツリーほどではないけど、ここから見る東京の景色もいいな。


「東京タワーなんて、何年ぶりだろう」

「僕もだよ」


 2人とも、東京タワーに行くのは久しぶりだ。東京スカイツリーができて以降、そっちに行っていて、東京タワーに行く機会がなくなってしまった。そっちのほうが高くて、いい景色が見られるからだろうか?


「スカイツリーができてから、あんまり行った事ないな」

「確かに。あれができるまで、東京の電波塔と言えばこれだったからね」


 高度成長期、多くの人が眺めた東京タワー。だが、東京スカイツリーができて以降、その存在価値が薄れてしまった。だけど、今日も多くの人が訪れている。今も昔も、東京タワーは東京の観光スポットなんだな。


「初めてのぼった時の事、今でも覚えてるわ。とても感動した」

「僕もだよ」


 2人は初めてのぼった時の事を思い出した。あの時見た東京の景色を忘れていない。あれから東京はすっかり変わったけれど、変わっていないものもある。


「ここの夜景もきれいだと思わない?」

「うん」


 2人は東京タワーから見る夜景を見ている。とてもいい景色だ。東京スカイツリーほどではないけど、1つ1つが比較的よく見える。


「スカイツリーほどじゃないけど、1つ1つの夜景が大きくて」

「確かに。こっちもいいね」


 と、龍典はリュックからあるものを出した。咲江は龍典を見た。渡したいものがあるんだろうか?


「咲江さん」

「どうしたの?」


 何だろう。まさか、結婚指輪だろうか? 光には父親が必要だから、龍典が新しい父になるのなら、全然大丈夫だけど。


「プレゼントがあるんだけど」

「何?」


 龍典は結婚指輪を出した。咲江は驚いた。まさか、結婚してと言ってくるとは。とても嬉しいな。


「一緒になろう」

「ありがとう。あなたとなら、私も光も幸せにしてくれそうだから。本当にありがとう」


 2人は抱き合った。きっと、お互いを、光を幸せにしてやる。だから、一緒になろう。

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