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守りたい  作者: 口羽龍
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3

 龍典は今日も仕事を終えて、家に帰ろうとしていた。みんな楽しそうだ。その笑顔を見ると、この街を自分が守っているんだと思うと、自分もやっていてやりがいを感じる。


「今日も疲れたなー」

「あら、先日はありがとうございます」


 龍典は振り向いた。そこには咲江がいる。まさかここで会うとは。龍典は驚いた。


「いえいえ」

「あれから元気に小学校に通ってるわ」


 咲江は嬉しそうだ。あれから光は楽しそうに小学校に通っている。悩みは何でも話せばいいのに、どうして話さなかったんだろう。みんなから言うなと言われて、仕返しを恐れていたからだろうか? 咲江は気にしていた。


「本当ですか?」

「はい。おかげさまで」


 咲江はお辞儀をした。龍典は感謝の気持ちしかない。龍典のせいで光は元気を取り戻した。


「それはよかったよかった」

「うーん・・・」


 だが、咲江は浮かれない表情だ。光が元気になったのに。どうしたんだろう。何か気になる事が他にもあるんだろうか?


「どうしたんですか?」

「あの子には、父親が必要なのかなって」


 咲江は思っていた。あの子には父親が必要なんだろうか? 父親がいれば、安心できるんだろうか?


「うーん・・・。わからないっすね」

「そうですか・・・」


 龍典はあんまり感じていない。だが、言われてみればそうかもしれない。ふと思った。別れた妻が引き取った娘は、龍典が必要だと思っているんだろうか? そう思ってないんだろうか? 龍典は娘の事が気になった。


「父親がいればみんなからもっと好かれたんじゃないかなって」

「そうかな? 私には妻がいたんですけど、離婚いたしまして、子供も取られたんですよ」


 咲江は驚いた。龍典も夫に似た経験があるとは。


「そうなんですか。私に少し似てるんですね」

「ああ。たまに子供に会うんだけど、いつもいられるのがいいんだ」


 龍典は時々、娘に会っている。だが、娘はあんまり龍典を愛してくれない。どうしてだろう。龍典の事が嫌いなんだろうか?


「ふーん。あの人ったら、いつでも会いたいと思って連れ去ったんだと思う。それができなくて、誘拐したんだと思う」


 咲江には、夫の気持ちがよくわかった。光に会いたいという気持ちで、誘拐したんだろう。本当はしてはいけない事なのに、捕まる事前提でやったんだろうか? いや、そうじゃないだろう。一緒に住みたいと思ったから、連れ去ったんだろう。


「そうなんだ。僕はそんな悪い事しないけどね。というより、悪い人を捕まえてるからね」


 龍典は苦笑いをした。自分は決してそんな事はしない。だって、警察だから。警察が悪い事をしてはならない。悪い事をした人を捕まえるのが仕事なんだから。


「でも、どうして別れたんですか? 私は浮気をしたから離婚したんだけど」

「僕は仕事ばっかりで全く愛情を注がなかったからだよ」


 こんな事で離婚なんてあるんだな。咲江は思った。自分は全然大丈夫だけど。


「仕事ゆえの離婚なんだね」

「だけど、この仕事に誇りを持ってるんだ。誰かを守れる仕事だから」


 だが、龍典は警察の仕事に誇りを持っていた。誰かを守れる人がかっこいいと思っているからだ。だから自分は警察の道を歩んだんだと。


「いい仕事じゃないの」

「ありがとう。じゃあ、これからもっと頑張っちゃうぞ!」


 龍典は少し元気が出てきた。また次も、仕事を頑張ろう。そして、この街の平和を守るんだ!


「じゃあね。毎日ご苦労様」

「ありがとうございます。じゃあね」


 咲江は家に向かっていった。龍典はそんな咲江の後ろ姿を見ていた。次第に、龍典は咲江が好きになり始めていた。




 龍典はその日の夜、新橋にいた。明日は休みだ。飲んでいこう。そして、今日1日の労をねぎらい、しっかりと疲れを取ろう。新橋は多くの人が歩いていた。スーツを着たサラリーマンの他に、私腹を着た若者もいる。彼らはいったん帰って、私服に着替えたうえでここに来たと思われる。


「さて、行こう」


 目の前には行きつけのやきとん屋がある。今日はここで一杯しようかな? 龍典が店に入ると、店員がやって来た。


「いらっしゃいませ、1名様ですか?」

「はい」

「カウンター席にどうぞ」


 龍典はカウンター席に案内された。そこはたった今、テーブルを拭いたままで、少し濡れた感覚がする。


「いらっしゃいませ、何になさいますか?」

「麦焼酎のロックとねぎま2本と冷奴で」

「かしこまりました」


 龍典は椅子に座った。今週もいろいろあったけれど、明日は休みだ。しっかりと休んでまた来週頑張ろう。


「今日も疲れたなー。明日は休みだからのんびりしようかな?」


 と、そこに店員がやって来た。麦焼酎のロックと冷奴を持っている。注文の品を持ってきたようだ。


「お待たせしました、麦ロックと冷奴です」

「ありがとうございます」


 龍典はすぐに麦焼酎を口にした。いつもは生中からだが、今日は麦焼酎のロックからだ。


「うまい!」

「あれっ、龍典さんじゃない?」


 その声に、龍典は驚いた。横を向くと、そこには咲江がいる。まさか、咲江も来ているとは。なんという偶然だろうか?


「あれっ、咲江さんじゃない?」

「まさか、また会うとは」


 咲江も驚いた。まさか、ここでも龍典と会うとは。今日は2回も偶然に会ってしまった。運勢はまったく見ていないけれど、今日はラッキーデーだろうか?


「びっくりした?」

「うん」


 ふと、咲江は思った。また、父親が必要なんだろうかと言うんだろうか?


「私、思ってるの」

「えっ!?」

「あの子にはパパが必要なのかなって」


 まだ考えているようだ。そんなに気になるんだろうか? 龍典はあんまり気が付いていない。


「うーん、どうして?」

「パパがいれば、心強いかなと思って」


 確かにそうだ。父親は家計を支える立派な人が理想だ。その背中は子供たちのあこがれになる。そう思うと、あの子にはやっぱり父親が昼用なんだろうかと思ってしまう。


「そうかな? 僕は思った事ないけど」

「そうなんだ」


 今度は龍典が考えてしまった。それを見て、咲江は思った。龍典も何か考えている事があるんだろうか?


「うーん・・・」

「どうしたの?」

「離婚した妻との娘も同じ気持ちなのかなと思って」


 龍典は離れ離れになった娘の事が気になった。今でも龍典を大切にしているんだろうか? たまに会った時は全く興味がないように見えるんだけど。


「どうだろう」


 そして、龍典は思った。ちょっと、自主的にあの子に会ってみたいな。そして、今でも愛しているのか聞きたいな。


「ちょっと訪問して話そうかなって」

「そうかもしれないね」


 龍典は考えた。久しぶりに娘に会ってみよう。そして、今でも愛しているのか聞きたいな。

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