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28 彼女の秘密(ロイ)

 

 アリアが怪我をしてから、結界の外へは2班一緒に行くことになった。

 初めに同行したのは第5班で、ユーリアにアリアとの時間を取られて少し悔しく思った。


 だけどそれ以上に、第5班の班長は私とアリアに疑いの目を向けてきたのが気になった。

 私たちが強いことが、そんなに気になるのか。まぁ怪しいのは認めるが。


 恐らくこの国に助力を申し出てるグラナート帝国の間者だと思われているんだろう。私は当たってるが、アリアは違う。彼女がどこの国の者なのかは未だに分からない。



 アリアがブルスタの結界石を壊して、周りのアリアへの疑念は高まった。

 彼らの推測は恐らく、アリアはグラナート帝国の間者で、不可視の悪魔である、といったところだろう。


 そしてきっと彼らには、私もアリアの仲間だと思われている。

 まぁそこはどう思われてもいい。



 この国は帝国からの協力を受け入れ、アリアが1つ目と2つ目に結界石を壊した街に騎士を派遣した。勿論魔物討伐に特化した部隊を派遣しているし、それ以外の目的もある。


 私達帝国の人間が王都を囲う前に、不可視の悪魔をどうにかしたいと考えてるだろうが、アリアはそんな簡単に捕まらないだろう。


 アリアの目的は分からないけど、私達と同じ目的では無さそうだ。同じ目的だとしても、この国に支援してるのは帝国で、他の国が入れる余地はない。

 それでもアリアは止まらないのだから、多分違う目的だ。




 第5班がいなくなったと思ったら次に来た第8班は面倒くさい女がいて、私にしつこく付き纏ってくる。こういうタイプの女は死ぬほど嫌いだ。母国で嫌という程相手してきた。


 それに私に付き纏ってくるレミアという女はあろうことかアリアを邪険にする。純粋なアリアは素直にその言葉を聞いて私から離れるから、レミアが邪魔で仕方ない。いっそ殺してしまおうかと何度思ったか。



 だからアリアと2人で話して癒されたくて、アリアが水汲みに行くのについて行った。



「そういえば、今回はステンドグラスを割ったんだって?あんな高いところから出入りしたの?それとも誘導しただけ?」



 今回結界石が壊される時に、大聖堂でステンドグラスが割れたらしい。十中八九アリアの仕業だと思うが、その理由はなんだろうか。


 建物の3階くらいの高さだし、まさかあんな高いところから出入りした訳では無いだろう。ならステンドグラスを割ったことによって中にいる騎士を外に誘導させて、大聖堂内に入ったのか。


 まぁ後者が妥当だろう。



「内緒」



 アリアは答える気は無さそうだ。



「アリアは内緒が多いね」


「ロイもだよ」



 言われてみれば、私もアリアに秘密ばかりしている。お互い秘密だらけなのに、それでも私はアリアが好きで、何だかそれがおかしくて口角が上がった気がした。



「ロイの言った通り、他国から応援が来たね。ロイはその国の人なのかな」


「教えたら、アリアも教えてくれるんだったかな?」


「言えることならね」



 今回は邪魔が入らないことを願いたい。アリアが敵かどうか、知りたい。

 私の秘密なんて全部明かしたっていいくらい。それでアリアのことが知れるのなら。



「そうだね…じゃあ、どこの国かは言える?」


「言えるよ」


「そう。なら教えて欲しいな。私はアリアの予想通り、グラナート帝国の者だよ」



 素直に答えた。私の言葉にアリアは驚かなくて、やっぱり、という顔をしていた。

 まぁこのタイミングで帝国から応援が来れば、私のことも分かっただろう。


 次はアリアの番だとばかりに彼女を見つめると、彼女も口を開く。



「私は、どこの国の者でもないよ」


「……どこの国の者でもない?」


「私も、私に命を下した方も。どこの国のものでも無い」



 どこの国の者でもない。

 どこの国にも属していない?

 それなら余計に分からない。アリアの目的が、アリアのいる組織の狙いが。


 困惑して黙った私に、アリアは話を続けた。



「私がロイの敵になるかどうか、聞きたいとロイは言ってたね」


「……うん」



 それだ。それが1番気になるところだ。



「敵にも味方にもならない。私は、どこかの国に加担するようなことはしない」



 どこの国にも加担しない。敵にも味方にもならない。

 アリアから聞いたその言葉で私の心は喜んだ。


 敵じゃないならいい。敵じゃないならアリアを捕まえやすい。



「そっか。敵じゃないなら問題ないよ。まぁ敵でもどうにかしてたけど」


「…ロイ、笑えるじゃん」


「笑ってた?そう…。嬉しくて笑ってしまったんだね」



 アリアに指摘されて、自分が笑みを浮かべていたことに気付いた。

 自然に笑顔が出るくらい、嬉しかったんだろう。


 嬉しいに決まってる。アリアを手に入れる算段がたてられそうなのだから。敵でも何とかする予定だったけど、敵じゃないならほとんどの問題が片付く。


 味方かどうかは関係ない。そこはどうでもいい。味方になって欲しいとは思ってない。


 ただアリアが私のものになれば、それでいい。




 だけどアリアはまだ私のものじゃなくて、私の思いどおりには動いてくれない。いや私のものになってもアリアはそのままだろうとは思うけど。


 だからあの女を庇って、また怪我をした。

 しかもグレイスの時とは違って、わざと魔物に飛び込んだあの女を庇って。



 目の前にしゃがみ込んだあの女が震えてる。顔を青くしてがくがく震えてる。それほど私の殺気が恐ろしいのだろう。慣れてないなら尚更恐怖を感じるはずだ。


 抑える気は無い。本気で殺すつもりでいる。こいつを今殺しておかないと、アリアはまた怪我をする。

 むしろ殺しておかなくて後悔している。



「アリアさん、本当に申し訳ない。私の監督責任だ」


「はい。彼女のことはしっかり叱っておいてください。このままでは危険です」


「は?生かしておくの、アリア」



 このままではって、生かして帰そうとしてる?アリアを傷つけたこの女を?

 そんなの許せるわけが無い。

 なのにアリアは本気でそのつもりらしく、私に向けて小さく頭を傾ける。



「当たり前でしょ。本気で殺すつもりだったの?」


「それこそ当たり前だよ。生かしておいたらまたアリアが怪我するでしょ」


「班長にしっかり見ててもらうから大丈夫だよ」



 その班長は私の殺気にあてられて少し怯えてるけど?

 真正面から私の殺気を感じて平然としていられるのはアリアだけだろう。私のどんな姿を見てもアリアの態度は変わらず、それが更に私を嬉しくさせる。


 そっと殺気が収まっていくが、剣をしまう気は無い。



「……じゃあせめて足はなくしておいた方がいいよね。歩けなければ無謀なことはしないし」



 足を切り落としてしまえば動けないから、余計な動きはされずに済む。

 だけどアリアはそれもダメだと言う。


「ロイ、それをしようとしたら私が彼女を庇うけど」


「…………」



 彼女に庇われたら、剣を振るえるわけが無い。



「……アリアはずるいね。僕が君を傷つけられないって知ってるのに」



 アリアのことは絶対に傷つけられない。それを知っててアリアはあの女を庇うと言うんだから、本当に酷い。



「そんなことは考えてないけどね。私の言葉を無視はしないと思ってるよ」


「……ずるいなぁ…」



 そんなこと言われたら、無視する訳にはいかないじゃないか。

 本当に、ずるい。

 そしてそれで矛を納めてしまう私も、きっと甘いんだろう。


 剣を鞘に納めて、第8班の班長に目を向ける。私に見られて少しびくっと体を震わせていたが気にしない。



「班長、その人ちゃんと見ておいて下さいね。少しでも怪しい行動したら、強制的に眠らせます。魔物用の強い睡眠薬あるんで。これなら傷つけないからいいよね、アリア?」


「……まぁ、マシかなぁ……」



 これ以上は譲歩しない。アリアの望みである、人を傷付けない、というのは遂行してるんだからいいだろう。

 魔物用だから人間には強力だが。せいぜい1週間くらい目を覚まさない程度だ。痛くも痒くもないだろう。


 これもダメだと言われたらどうしようかと思った。

 あの女をどうにかするのにアリアが難色を示すなら、いっその事アリアを…。



「アリア」


「なに、ロイ」



 アリアを、眠らせてしまえば。

 あの女をどうしようと分からないし、殺したってバレない。


 一瞬頭に浮かんだその映像が、私の心を揺さぶる。



「………なんでもない。今は痛くないの?」


「うん」


「…良かった」



 今は痛くないのか、よかった。

 グレイスは薬を作る才能はあるようで、彼女の作る薬はとなも効能がいい。だから痛みもすぐ引いたんだろう。


 跡が残らないかが心配だ。跡が消えなかったら今度こそあの女を殺しに行こうか。アリアにバレなければいいだけだ。

 いやいっその事、この後の野営でアリアが目を離した隙にでも…。



「街に着くまで、頼りにしてるからね」


「……任せてよ」



 私のことを見透かされたように肩に手を置かれ、私はその考えを止めた。

 アリアの傍でアリアを守りたかったのに、アリアに頼りにされてしまっては、頑張るしかないじゃないか。


 仕方なくこの先の魔物討伐を頑張ろうと決めた。アリアが誰かを庇うことのないようによく周りに目を光らせておこうと。




 ただもし次アリアが誰かを庇って怪我を負ったら、私はどうするだろうか。

 勿論アリアが庇うことになった誰かに殺意が湧くのは当たり前だが、もしかしたら私はアリアに薬を使ってしまうかもしれない。


 魔物用の強力な睡眠薬を。



 さっきアリアを眠らせる想像をしたら、不思議と心が凪いだ。眠らせてしまえばアリアは誰かを庇って怪我はしないし、私がその体をずっと抱えていられる。

 むしろそのまま私の組織に連れて行って閉じ込めてしまおうかと思った。


 今アリアを閉じ込めてしまったとしても、私達の計画はもう終盤に差し掛かっていてなんの問題もない。

 だけどアリアの任務はまだ終わっていない。いくつ壊すのがアリアの任務かは分からないが、5つ壊してもまだ終わらないなら少なくとも国を囲う8個は壊すつもりなのかもしれない。



 それに関しては壊そうがそうでなかろうがどちらでも構わないが、今はアリアを閉じ込めるのは断念しようと思ってる。

 出来ればアリアに自分から飛び込んできてもらいたいって気持ちがある。


 アリアが自ら私に向かってきてくれれば、それほど幸せなことは無いだろう。

 まだアリアは私の気持ちを信じていないが、出来れば信じてそして同じ気持ちを返して欲しい。アリアの言葉で、私と共に行くと言って欲しい。


 まだアリアが任務を終えてここから去るのには時間があるだろう。最終目的を聞きたいところだが、聞いたら教えてくれるだろうか。



 時間があるからこそまだアリアを捕まえようとはしないが、アリアが逃げようとしたら直ぐに眠らせてしまいたい。

 でもこれだけ強いアリアのことだ。もしかしたら薬に耐性もあるかもしれない。どこかのタイミングでそれを聞くか、試すかした方がいいだろう。


 試したのがバレた時は余計疑いを強めてしまうだろうか。色んな理由をつけて言いくるめればなんとかなるだろうか。

 素直に聞いた方が良さそうだ。アリアなら教えてくれるだろう。



 薬がダメならどうしようか。睡眠薬が効かなければ麻痺薬も効かないだろう。

 そうなれば、あとは…誰か、そう、ユーリアとかを人質に取れば動いてくれそうだ。

 人を傷付けるのが嫌なアリアだから、間違いなく言うことを聞いてくれるだろう。



 最も、本当は脅すようにしてアリアを連れ去りたくはない。

 だからどうか、素直に私のものになってくれないかな。


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