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7話 帝国のスライムは、真っ白だ。

 技術力の高さを見せつけるように、帝都まで整備された道を馬車で移動する。

 目的地の帝都は外壁で守られている、はずだった。


 破壊された壁の跡が見えくる。

 さらに城を中心に円状に広がる黒い雲が太陽の光を遮っている。


 太陽の代わりに街を照らすのはピンク色の光だ。

 帝都全体が、いやらしい雰囲気を放っている。


「これ、オレ達でどうにか出来ると思うか?」

「流石は、サキュバスの女王ってとこかしら」


「ここから先、雲の下に入ります。ピンクの光にどんな効果があるのかわかりません。異変があれば教えてください。撤退も視野に入れて、行きましょう」


「了解」

「わかったわ」


 太陽の光を遮っているため、雲の下は夜かと思うほどの暗さだった。

 帝都はピンク色の光に照らされているので、迷わずに迎えるがライトの魔法を使用して移動する。


 ピンク色の光に近づくにつれて、馬の進みが遅くなる。

 ついにいうことを聞かず、動かなくなる。


 本当は生き物を時空間に入れることは禁止されているが、仕方なく馬を時空間に避難させる。

 馬車も時空間に片付けて、徒歩で向かうことになった。


 ちなみに人も時空間に入れることが出来る。

 そして時空間を閉じると、人の時が止まる。


 動くことも思考をすることも出来ない。

 時空間から出すと、入る直前から時が動き出す。


 もし時空間魔法を使用した人が死んだ時、時空間に入れられている人は。

 老いることも、死ぬこともない。


 稀に術者が死亡した場所で、時空間魔法を使用すると死亡した人の時空間と繋がる場合もある。

 血縁者なら確実に繋がると、オメガ先生の書籍に記されていた。


「よく見るとそこら辺に馬や羊なんかの死体が転がってるな」

「みんなここにおいていったのね。知能の低い動物は入れないようになっているのかしら?」


「あの雲に隠された魔法陣が原因だと思います。目を凝らすと雲の上に魔法陣が見えますよ。魔法陣はそこまで詳しくないのでなんとも言えませんが、ニジーナさんの予想通りなら、選別の魔法陣かもしれません」


「オレには見えねぇや。ニナは?」

「私も、ハッキリとは見えないわ。うっすらと光るのが見えるだけね」


「そうなんですね。魔力操作で目を鍛えていたおかげだろうな。こんなことなら魔法陣も勉強しておくべきだった。たしかオメガ先生よりもパイン先生の書籍に詳しく書かれていたっけ? 後で読み返してみよう」


「おーい。考え事もいいが、そろそろ街に近づいてきたし、こっちに集中してくれよ」

「あ、すみません。って、なんで抱きついてるんですか?」


 右にアーニス、左は二ジーナが密着したかと思えば、腕に抱きついてくる。

 アーニスは軽装備なので下着姿のようなものだったが、二ジーナは鎧を脱いで下着姿になっていた。


「わ、私にもわからないの。いつの間にかラパ君の腕に抱きついてて。離れようとしても離れられなくて。それに気づいたら鎧を脱いでたの!」


「装備は回収しておきますね」

 後方に散乱している装備を、地面に時空間を広げて回収する。


「あ、オレの武器もない! 多分ラパが回収してくれたかも?」

「あ~そうみたいですね」


 時空間に回収したものを頭の中で確認する。

 アーニスが使用しているナイフやワイヤー、毒瓶なども回収されていた。


 ついでに2人のものと思えない装備も回収されている。

 魔法陣は催眠魔法が基になっているのか、興奮作用に加えて装備解除の効果も付与されていると思われる。


 監視がないとは思えないので、警戒される前に杖や装備を時空間に片づけた。

 腕に抱きつく2人をそのままにして催眠にかかったフリをする。


「いきなり脱ぎだしてどうしたよ? そろそろ抱く気になったか?」

「アニス! 多分これは催眠魔法よ! ラパ君はかかったふりをするつもりなの! こら胸を触らない! 抜け駆けは禁止よ!」


 二ジーナは魔法陣の効果を理解しているようだが、アーニスを止めようとしているが、一緒になって大胸筋を触ってくる。

 催眠状態になるのは、時間の問題だろう。


 アーニスは手遅れだ。

 胸だけでは飽き足らず、尻を触ってくる。


「2人共、それ以上したら例のアレは無しですよ?」

「「はい」」


 催眠に打ち勝つほど、第三次性徴と豊胸術が受けたいようだ。


 2人の手が腕に抱きつく形に戻る。

 密着されているので、3人で歩幅を合わせて進む。


「これ、地味に辛いんだぞ?」

「男の、胸」


「ニナも、限界そう」

「す~、はぁ~、汗の匂い。いひ」


「な~ぁ、襲わねぇからさ。ちょっと、触らしてくれよ~」

「わ、私も! 撫でるだけ! つつくだけでもいい!」


「頼むよ~」

「もう限界なの!」


「はあ…。収納」

 さっさと、こうしておけば良かった。


 2人を時空間に入れてしまう。


「これは仕方のない対応だ。どうせ見張られてるだろうけど、あのまま放置してもサキュバスの女王討伐なんて出来るはずもない。情報収集さえ、できるとも思えない。あぁ、イライラする。いっそ暴れてしまえば」


 催眠にかかっていないことがバレても構わないので、杖や装備を整える。


 普段から考えられないほどのイラつきに、本当は催眠にかかっているのではないかと思うが、考えないことにした。


 帝国を守っていた門は壊れている。

 門番もいないので、堂々と帝都に入った。


「監視はあると思ったけど、ないなら好都合だ。家の中に人はいるみたいだけど」

 壁が壊れていたので、帝都内の建物も壊れているかと想像していたが、時間でも止まっているのかと思うほどに、きれいな街並みが残っている。


「や~ん! もっと出してぇ!」

「おぉぉおぉ!」


 家のあちこちから、いかがわしい声が響いている。

 サキュバス相手にみんな頑張っているようだ。


 窓を開けて身体を出しているサキュバスを発見する。

 その背後に動く人影があった。


 人影が動く度にサキュバスは喘ぎ、立派なおっぱいが揺れている。

 普段なら興奮するのだろうが、今は催眠魔法に抵抗しているせいか、全く興奮しない。


 下半身に視線を向けるが、息子は反応していなかった。


 街中を歩くサキュバスも見られたが、襲い掛かってこない。

 誘うような様子もなく、家の中に入ると男の声が聞こえた。


「もう出ません! 少しやす…うおおお!!」

 催眠魔法にかかったのか、男はサキュバスを襲ったようだ。


 他の家から聞こえていた声が聞こえなくなる。

 声の聞こえなくなった家を見ていると、真っ白なスライムが出てきた。


 スライムは城に向かっていく。

 次はサキュバスが出てくるのかと思ったが、また声が聞こえ始めた。


 スライムの正体が気になったので追いかけると、入れ違いに城の方から透明なスライムがやってきた。

 スライムは声のする家に入っていく。


 スライムが出てくるのを待っていると、出てきたスライムは、白かった。

「スライムを精の運搬に使っているのか? あの白いのは男達の」


 そこまで口にして、考えるのを止めた。

 調べようと思っていたが、そんな気もなくなる。


 カップにスライムは吸収しないように、お願いではなく、命令する。


 城に近づけば、真っ白なスライム達が列を作っていた。

 帝都にいる男たちは、これだけの量を、休みなく絞られている。


「絶対に捕まらない。討伐が無理なら逃げる。絶対にだ」


 今すぐにでも逃げたい気持ちはある。

 しかし俺だけサキュバスに襲われないのか、気になる。


 その答えを教えてくれそうな人物に、心当たりがあった。

 サキュバスの女王。


「ようこそおいでくださいました。運命の人、うふ」


 玉座の間と思われる場所で、白いドレスを身に纏う女性が出迎えてくれた。

 王座から立ち上がると、腰をくねらせて立派なおっぱいをこれでもかと揺らし、近づいてくる。


「あっ、きゃぁ!」

 慣れていない歩き方だったのか、着ている服が原因なのか、サキュバスの女王と思われる女性が躓いて、転んだ。

 と同時に女性の体から煙が噴き出した。


「あ、あぁ、うっ、ひっく、うわぁーん!」

 煙が晴れると女性ではなく、幼女が現れた。

 白いドレスは魔法の装備なのか、幼女に合わせたサイズになっている。


 ちっぱいを見ることはなかった。


 転んだままの状態で短い手足をバタつかせ、泣きわめく幼女の姿に頭の整理が追い付かない。

 見ていることしかできなかった。


 すると急に泣き止んだ幼女が立ち上がって、ドレスについた砂やホコリを払い始める。


「泣き落としはだめですか。流石は魅了魔法を跳ね返してくる運命の人ですね」

「今、なんて?」


「ん? もしや、自覚がありませんの? サキュバス達やこの魔法陣から放たれる魅了や催眠魔法を、全て、運命の人は私に跳ね返していたのです。

 最初の頃は私に魔法を跳ね返す輩に腹を立てていたのですが、魔法陣の効果まで跳ね返されてしまうと心が折れてしまいました。

 だから運命の人に服従することを誓いましたの。できれば保護していただけるよう、弱い幼女を演じてみましたが、無駄骨に終わりましたわ」


 魔法を跳ね返す。

 オメガ先生の書籍に契約の魔法を跳ね返すドラゴンがいると記載があった。


 跳ね返ってきた魔法を跳ね返し、また跳ね返ってきた魔法を跳ね返しを繰り返して、強引に契約したと。

 無意識に同じことをしていた?


「つまり、サキュバスの女王を魅了したってことか?」

「簡単に言ってしまえばそうなりますわ。運命の人はテイマーだと確認しております。どうか私と契約していただけませんか? 契約後は帝国について、私が生まれた状況も詳しくお話させていただきたいと思いますの」


 罠かもしれないが、断る理由が見つからない。

 知能ある魔物と契約する場合、言葉が有利になる。


 吐いた唾は呑めない。


「それじゃあ、契約後の力関係は、7対3でこちらが7」

「10対0で構いません。もちろん10が運命の人です」


 サキュバスの女王は俺の言葉に被せてきた。

 カップと契約する時でも6対4で契約している。


 それをサキュバスの女王は、奴隷と同じ扱いで構わないと言ってくる。


「…8対2だ。俺は仲間に隷属を望まない。いいな?」

「お優しいのですね。はい、貴方様。今後とも、よろしくお願いいたします」


 契約は成立した。

 サキュバスの女王がテイムされたことで、次第に魔法陣が消えていく。


 すると街の方から男達の悲鳴が聞こえてくる。

 次々と家からサキュバスが飛び出して、城に向かってきた。


 これが罠かと思った。

 しかし、大きな窓から入ってくるサキュバス達は、光の粒となって幼女に吸収される。


「うっぷ。流石に増やしすぎましたね。ラボの方にいるサキュバスも回収しないといけませんし、貴方様。お話は回収が終わってからでもよろしいでしょうか?」


「あ、うん。もう好きにしてくれ」


 大量のサキュバスに襲われる最後にならなくてよかったと安心すると同時に、とうとう考えるのが面倒になってきた。

 サキュバスの女王に、全て任せることにする。


 もう、つかれたよ。

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