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33話 特訓の成果

 2匹の特訓を始めてから1週間。


 シロは風以外に相性が良い水魔法を使ってオリジナルの魔法を操るようになった。


「いいわね。泡の中に風の刃が隠されているとは思わなかったわ」

 ばら撒かれた泡は視界を奪うためだと思い、安易に翼で割ったのが悪かった。


 泡が割れると同時に翼が千切れて吹き飛ばされる。

 泡の中に風の刃が仕込まれていた。


「わふー! はぅ…」

 私の翼を切り落としたことで勝利の雄叫びを上げた後、魔力切れで気絶した。


 翼を回復させてからシロに触れて魔力を回復させる。

 気絶から目覚めたシロに質問と次に覚えることを伝える。


「触れずに泡を破壊すれば仕込んだ風の刃を操る予定かしら? 良い技だと思うけど、相手の魔力を感知して覚えることが出来れば、操らずに相手の魔力を目標にして追尾させることが出来る。次は追尾させる方法を覚えるのよ」

「わ、わふ!」


 1週間も一緒に訓練していれば私の魔力はわかるようで、風の刃を操らずに追尾効果を付与することに成功する。


「いいわ。明日から実践よ。あなただけでラビーを5匹、狩ってきなさい。同じ魔物でも個々で魔力は違うわ。そのことを体に覚えさせて、戦う相手の魔力を感知する力を身に着けなさい。いいわね?」

「わふ!」


「いい返事よ。クロの方は2日前からご主人様と一緒にボレブアを狩っているのよね」

「わふ!」


「クロを見返したいのね。私は万が一のために隠れてついていくから、ラビー以外に勝てると思った相手がいたら、戦ってもいいわよ」

「バウ!」


「ただし、私が止めに入った時は、しばらく狩りはさせないから。勝てる相手もわからないようじゃ、訓練内容を考え直す必要があるからね」

「わ、わふ!」


「先にどんな訓練になるのか、教えておくわね。少し、私の本気を見せてあげるのよ。大丈夫、殺しはしないから」

 少しだけ魔力を滲み出させる。


「…わふ!」

 さっきまで元気に動いていた尻尾が下がる。

 どんな訓練になるか想像できたのか、絶対に間違わないというように返事は力強い。


「そうね。勝てる相手と戦えばいいのよ」

 そんなわけで今日の訓練は終了した。


「今日もボレブア肉祭りかしらね?」

「わふ!!」

 現金な犬である。




「ふにゃー!!」

「逃げてばっかりじゃ勝てないぞ~」


 ボレブアを探していたら4つの手を広げるベアラズに遭遇した。

 熊の手は珍味らしいので狩ることにしたが、クロがビビって逃げてしまった。


「にゃにゃにゃー!」

「無理じゃない。いつも通りにやれば勝てるって。突進しかしてこないボレブアばかりじゃ強くなれないぞ~」


「にゃん…。フシャー!」

 俺が改良してレイピアに形を変えた石の剣を構えて、クロはベアラズに立ち向かう。


「ブァアア!!」

「にゃ!」


 訓練を重ねたことで一直線に斬りかかることはなくなった。

 相手の攻撃を誘って、避けたところで相手に隙があれば攻撃する。


 隙がないと感じたなら無理せず後退する。

 相手に回復手段が無く、こちらの体力が続く限りは負けない戦い方をクロに教えた。


 レイピアを使わせることに決まってから、クロには走り込みをさせている。

 回避の訓練も同時に進行する。


 走っている途中で水の玉を飛ばす。

 水が嫌いなクロは必死に避けようとする。


 最初は水の玉に当たってずぶ濡れになった。

 しかし魔法の発動を感じ取れるようになると、避ける姿勢を取るようになる。


 それだと意味がないので、魔法を発動しても水の玉を発射するタイミングをズラす。

 魔法が発動したのに水の玉が飛んでこない。

 避けるために止まったのに、水の玉は飛んでこない。


「にゃ? ぶば!」

 油断したところを見逃さずに水の玉を顔に当てる。

 走るのを辞めると追尾する水の玉を放つ。


「ににゃー!」

「はい。頑張れー」


 止まれば追尾する水の玉が当たる。

 たまに飛んでくる水の玉を避ける必要もある。


 これで体力と回避術を身に着けさせた。

 そして実践で突進してくるボレブアと戦ってもらう。


 最初は避けることに集中させて、後からレイピアで攻撃するように指示をした。

 相手の攻撃を避けて、攻撃出来るなら攻撃する。


 クロの力だけでボレブアを倒すのに必要な時間は1時間。

 ここまで動けるようになるまで4日の走り込みと3日の実践経験を要した。


 そして今、初めての強敵を経験する。


「ガアァアァ!」

 ベアラズは攻撃が当たらないことに苛立っているようだ。


「にゃにゃー」

 相手を煽ることも忘れずに教えてある。

 クロは攻撃を当ててみろというようにベアラズに尻を向けて尻尾を振った。


「グガァアア!!」

 怒りのままに振り下ろされる2本の右手を避けたクロは、左の腹に入り込んでレイピアを浅めに突き刺した。


 痛みに吠えながら2本の左手を振り下ろすが、そこにクロはもうおらず背中からレイピアを何度も突き刺した。

 ベアラズの出血が増えると明らかにクロの攻撃回数が多くなる。


 とうとう膝をついたベアラズの頭に飛び乗って、目にレイピアを突き刺す。

 ベアラズは痛みで咆哮を上げて、絶命した。


「よくやった。何度か攻撃が当たりそうになってたけど、爪がかすっても動きを止めなかったのは良かったぞ」

「にゃ、にゃー」


 2時間の死闘で元気に返事することもしんどい様子だ。

 かすり傷程度なら俺の回復魔法で治すことができる。


「解体は、無理かな。やはり毒を使えるようになったほうがいいかもな。獲物がズタズタだ」

 レイピアとはいえ突き刺すだけでなく、軽く斬ることは出来る。


 何度も攻撃することで相手の出血による疲労や消耗が主軸の戦い方なので、毛皮などの素材はきれいな状態ではない。

 肉は何度も攻撃することによって、硬くなりにくい利点もある。


「毒はまた考えるか。時空間魔法が使えれば、薬草の調合なんかも教えてやれるんだけどな」

 かすり傷も癒えて少し体力も回復したクロを見る。


 毛並みからも想像しやすい、暗殺者に近い能力を上げるほうがいいのか。

 シロとコンビを組むことを前提に、回避フェンサーを目指す方がいいのか。


 クロ自身がどの方向に強化したいのか、シロも混ぜて話してみるのもいいかもな。


「さ、帰るか」

「にゃ!」


 ベアラズの4本の腕だけ切り落として持ち帰る。

 カップによる完ぺきな下処理のおかげで、夕食に熊の手を美味しくいただくことが出来た。

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