28話 世界樹の番人
ホックのおかげでダンジョン内の現状を知ることが出来た。
後は、
「この方が、世界所様の番人であられるハイエルフのヤールント様です」
「やぁやぁ! 初めましてだね、同士よ! 君には気軽に、ヤーさんと呼んでもらおうかな! やっくんの手紙を読んでから会えるのを今か今かと待っていたんだよ! 君の口から名前を教えてくれるかな?」
テンションの高い少年? が話しかけてくる。
局部を隠しているが、胸は隠していないことから少年だと思われる。
今いる場所は世界樹から飛び出すように作られた三角屋根の建物の中だ。
建物の前には赤色の鳥居が設置されていた。
まるで神社だな。
中に入ると、両手を後ろ手に下半身は局部より下が世界樹と合体した少年が出迎えてくれた、というわけだ。
「ヤーさん?」
「そうそう! で、君の名前は?」
「あ、はい。僕はスーラパイと言います。あの、同士というのは?」
「スー君? いやここは、パイ君だね! 同士って言うのは同じオメガ信者ってことだよ! やっくんの知人って言うのが俺なの! やっくんから手紙が来てね! 読んでびっくり! フラージュと契約したんだって?」
やっくんというのはヤスモ先輩のことだ。
ヤスモ先輩には研究所のことは手紙で書いたけど、フラージュのことは書いていない。
「あぁ! 警戒しちゃった? 大丈夫! やっくんはフラージュのことは知らないから! 俺はオメガ信者である前に、オガっちの親友なんだ! 向こうはそう思ってなかったかもしれないんだけどね! あはは! あ、オガっちって言うのはオメガ君の事ね! 鬼みたいに性欲もアソコも強かったんだよね!」
少年がハイエルフだというなら、あり得るのだろうな。
生前のオメガ先生と知り合いか。
話を聞きたいと思う気持ちよりも、少年のテンションについていけない。
「あ、女の子もいるのに下ネタ言ってごめんね! 世界樹のダンジョンについてだよね? そこの、えっと、黒いスライムちゃんでいいか。から聞いてると思うけど31階層の大階層のどこかに、オガっちのオメガ様の研究所があるから! 自分でオメガ様の研究所とかつけちゃうの、どうかと思うよね? あはは!」
ホックの正体もバレてるな。
「そういえば、ヤスモ先輩から教えてもらったオメガ様の研究所の場所って」
「あぁ! 世界樹から離れた場所にあるダンジョンって話でしょ? あれはね、事実であるけど嘘でもあるんだよ! 世界樹ってさ、法国にとって大事な存在なんだけどね。そんな場所にオガっちの研究所を無断で作らせたことは、秘密なんだよね! だから世界樹の根を勝手に伸ばしてね。離れた場所に世界樹のダンジョンに続く入口を作ってさ。世界樹のダンジョンに研究所を作らせずに、離れた場所に作らせたってことにしたの! 賢いでしょ?」
「ヤン様、皆とっくに気づいていますよ」
「うそ!?」
「世界樹様のダンジョンマスターであるヤン様の機嫌を損ねないよう、怒るのはやめておこうということになりました」
「そうだったの!? 怒られたら牧場の階層に魔物でも解き放とうと思ってたのに! 残念」
ダンジョンマスターってことは、31階層まで簡単に行き来できる転移なんかを、
「仕方ない。こうなったら違う方法で遊ぼっと! パイ君! 自力で頑張ってね! 俺は手伝わないから!」
「あ、はい」
ダメでした。
「というわけで、自力で21階層を突破することとなりましたとさ」
ジルを連れて行こうとしたらヤーさんに
「ダンジョンに入れるのはパイ君と契約している魔物だけね! ダンジョン内で仲間を増やすのは許可してあげる!」
と言われてしまった。
「はぁ、地竜の攻略方法を考え直さないとな」
「私が魅了をかけるのは」
「亜竜でも最強種の竜に近い存在だ。効くのか?」
「無理ですね。私に興味もない様子でしたし。敵対しなかったから攻撃してこなかったという感じですね。魅了をかけようとしたら、敵対行動と思われるでしょうね」
「亜竜でも倒すことが出来たら、ドラゴンスレイヤーが名乗れるっていうのに」
「なっちゃいますか? ドラゴンスレイヤー」
「魔法に耐性がある竜種を、テイマーが倒す? 無理ー」
「貴方様ならできますよ! 秘密兵器もあることですし!」
「それを使ったらドラゴンスレイヤーは名乗れないけどな。いや、名乗りたいわけじゃないけどさ」
「まずは21階層の探索から始めませんか? ここまで来たわけですし。というか、出れませんし」
「そうだな」
神社内はダンジョン内だったようで、強制的に21階層まで転移させられた際のヤーさんの言葉を思い出す。
「オメガ様の研究所を見つけて問題を解決するまでダンジョンから出さないからね!」
心の準備くらいさせてほしかった。
「寝床くらい確保するか」
「ですね!」
ヤーさんの遊びが、今始まる。
「なあホック」
「はい」
「あんなの、あったか?」
「初めて見ました」
「あの先に、ドラゴンがいるのかな?」
「あの頂上で火を噴いているドラゴンでしょうか?」
「亜竜じゃないな」
「違いますね」
「あれ、攻略しないとダメかな?」
「ダメでしょうね」
「なんか生えてきたな」
「立札ですね」
「なんて書いてあるか読んでくれないか?」
「えっと、パイ君! 頂上で待ってるね! 私を助けてー! だそうです」
「あの頂上にヤーさんがいて、その先に31階層に続く道があるってことでいいのかな?」
「でしょうね」
「城の攻略方法なんて知らねえよ!」




