25話 この技なんだっけ?
テイマー同士の戦い。
勝つのは、強い魔物と契約している者。
とは限らない。
魔物にも相性がある。
テイマーの実力も必要だ。
もし最強種のドラゴンが仲間にいたとしても、言うことを聞いてくれないとただの置物…いや、無差別に攻撃しそうだな。
もしくは裏切る可能性がある。
一番いいのは相性が良くて、互いに良好な関係であること。
相性がいいからと、一方的に契約するのは最悪だ。
魔物にも意思がある。
無理に言うことを聞かせようとすれば、それなりの魔力が必要になる。
その点でいうとスライムは知能も意思もないに等しい。
どんな命令も嫌な顔せず実行する。
ただ自分で考えて行動することが出来ないので、曖昧な命令だと予想外の行動をする場合もある。
俺にとってスライムは、都合のいい道具だ。
カップが勝手行動を取っていた際は、契約の解除も考えた。
勝手に魔力を吸われる。
あれほど恐怖を感じたのは、死にかけた時以来だ。
カップの行動次第で、俺は一生寝たままになる。
俺がカップに恐怖していることを感じ取ったのか、このままでは捨てられると悟ったのか、注意したことは守るし、媚びを売るようになった。
今ではカップとの契約解除は考えられない。
俺を理解して、全力で答えてくれる彼女を捨てることはない。
ホックの場合は、ホックを無効化できる方法が見つかれば、解除するかもしれない。
彼女は強力すぎる。
何も考えず野放しにすると、世界が彼女の牧場になる。
容易に想像できて怖すぎる。
ホックとの契約解除なんて、考えない方がいい。
フラージュは便利な杖だ。
手放すことはない。
さて、問題は目の前にいるテイマーの女性である。
女性の場合は、裏切られる可能性を考えずに契約していたのだろう。
スライムの襲撃があっても本気で抵抗せず、殺されないとわかれば抵抗を弱めて捕まる者までいた。
つまり、女性に協力的な契約相手は、あの4人以外いない。
「あー! もう! スライムばっかり鬱陶しい!」
俺はフラージュを使ってスライムに命令するだけ。
女性は突撃してくるスライムを、魔法を使って弾き飛ばす。
いつまで魔力が続くのか。
「根競べと行きましょうか」
「これだけは、使いたくなかったのに!」
女性が魔力を集めて杖を地面に突き刺すと、魔法陣が展開される。
魔法陣から頭に蛇を何匹も生やした、目隠しの女性が現れた。
「メデゥーサ!? 災害級の魔物と契約してるのかよ」
「一度だけ、力を借りることが出来る代わりに、10年分の寿命を持ってかれる。一度きりの切り札よ! メデゥーサ! あの男を石化させなさい!」
「むり」
「…は?」
「だって、あれスライムだもん」
女性の命令は、男を石化させろというもの。
目の前にいるのが、フラージュによって造られた俺そっくりのスライムだった。
「はぁぁああぁあ!??」
「じゃ、そういうことで。今回は手間賃の寿命1年分で勘弁してあげるわ。ありがたく思ってよね~」
連続して命令はできないようで、メデゥーサは魔法陣に帰っていく。
呼び出すだけでも1年分取られるのか。
流石は災害級の魔物。
理不尽だわ。
「あんた! スライムだったの!?」
「ぼく、わるいスライムじゃないよ」
「馬鹿にしてるわね!?」
「そりゃするだろ。魔力で目を強化するのは、戦いの基本だろ?」
「そう、だけど! スライムがスライムを操るなんて、誰も思わないわよ!」
「それは普通のことだろ。俺、スライムの王様。王様、命令できる。わかった?」
女性の反応が面白くてもっと煽ってしまう。
女性を指さすとスライムが突撃を再開する。
「ね、ねぇ! 貴方も人型の魔物ってことよね!? 私と契約しなさい!」
ホックのおかげで人間と契約できることを知っていた。
だからフラージュに頼んで身代わりを造ってもらった。
「強制的な契約って、集中力使うよな。ついでに魔力も使う。その対象が急にいなくなったら、あんたはどんな顔するかな?」
俺そっくりのスライムの足元に魔法陣が展開されたと同時に、スライムの体は弾ける。
「ほぇ!?」
「間抜けな顔を見れないのが残念だよ」
身体強化で背後から一気に近づいて、女性の腰に手を回せば体を持ち上げて、
「どっこいせッ!」
「ごふッ」
後頭部を地面に叩きつけた。
どこからかゴングの音が鳴る、わけもなく。
「死んでないよな?」
頭から血を流している様子もない。
白眼なので気絶していると思う。
念のためにフラージュを呼び寄せて、女性を小突くことで魔力は吸収しておく。
「お見事でした!」
「ジルのおかげだ。予想以上にうまくいった。ありがとう」
「お役に立てて何よりです! それで、この女はどうしますか?」
「時空間に仕舞う。他の黒ローブを一緒にね」
「あの人数を入れられるのですか!? 流石です!」
「時空間に人を入れるのも、慣れたものだよ」
「奴隷商になれば大儲けできそうですね!」
「その場合は捕まるね。一応、違法だから」
「バレなきゃ問題ないです!」
「うん。君はバレて捕まったんだからね? そういうこと言わないようにしようか」
「そうでした!」
こんなバカな子だったけ?
「まあいいや。聖女様の救出も終わったみたいだし、法国の騎士団が到着するまで」
「宝探しですね! お手伝いします!」
「あ、うん。よろしく」
「希少品は、見なかったことにしますね!」
「あ、はい」




