22話 ダークエルフのジガバールについて
私達ダークエルフは、どうして誕生したのか。
曰く、別大陸からやってきた人間とエルフの間に生まれた存在。
曰く、人類の敵とされる魔王に仕えるために生まれた存在。
曰く、エルフが神の使いならダークエルフは邪神の使い。
結局は悪側の存在と言われることが多い。
しかしそれも大昔の話。
今はダークエルフだからと差別されることもなく、人間族からはエルフより人気があるといっても過言ではない。
そういうところでは、エルフと敵対しているとも言える。
なにが言いたいかと言えば、ダークエルフだから邪教徒になった訳じゃない。
私が邪教徒になった理由は、お金がなかったから。
推しのイケメンエルフに毎日のように会いに行っていたら、女の仕事を紹介されそうになった。
その瞬間に目を覚ますことができたけど、借金は消えることはない。
必死に冒険者の仕事をしてみたけど、借金は減らなかった。
そんな時に盗賊団の協力を始めた知り合いから仕事を紹介してもらった。
そこからズルズルと、いつの間にか邪教徒の仲間入りに。
確かに借金を返すことができたし、新しい推しに貢げるほどに稼ぐことが出来た。
そのせいでギルドから目をつけられたわけだけど。
そんなわけで私は神や人を憎んでるわけじゃない。
なんとしても生き残って、推しと添い遂げるまで、死ぬわけにはいかないのよ!
ちなみに邪教徒の人達は神や人間族を憎んでいる人がほとんどだ。
だから魔物に近い人型が多い。
人間族やエルフなども邪教徒で、運命を呪ってとか神に見放されたからとか、神は救ってくれないだとか聞いたことがある。
そして女性ばかりなのは、少し気になっていた。
その理由が邪教のトップが魔王で、インキュバスの王だと教えてもらった時は納得する。
邪神に祈る人たちの顔に、親近感を覚えたからだ。
推しを見る私の顔は、あんなだったのか。
深く考えるのはやめよう。
とりあえず! 私を守ってくれると言ってくれた主様に協力(隷属)することで、守ってもらうのだ!
私が死んでしまうと主様に代償を払ってもらう契約となっているので、毒殺なども考えて体の中にスライムを入れることに。
口からでもいいらしいが、あの大きさを飲み込むのに躊躇してしまい、下の口から入ってもらった。
これで毒の無効化に加えて、敵襲があれば体の穴から出てきて私を守ってくれる盾になってくれるとのこと。
しかも、排泄が必要なくなった。これ重要。
スライムを体に入れてから肌の調子も最高だ。
体を動かしても汗が出てこない。
常に清潔だと感じる。
それが体の穴からスライムが出ている証拠だと教えてもらった。
エルフの女性が羨ましそうに見てくるが、デメリットもあるとか。
常に魔力をスライムに取られること、魔法を使用できないことらしい。
体の穴から出ているスライムが邪魔で魔法が正確に発動しないのだとか。
私の場合は冒険者時代や盗賊団の協力、邪教徒の時も諜報活動を中心に行なっていたし、トラップの設置や解除もできる。
気配察知や気配遮断も得意だ。
つまり魔力や魔法を使うようなことはほとんど無いということだ。
スライムを体の中に入れる技術を、もっと早く知りたかった。
もう、オムツを履いたり野糞をしなくてもいいのだ!
そんな私の主様は、夜中の見張りを行なわれて日中は馬車でお休みされている。
2、3日の徹夜くらい慣れたものだが、主様は命令されなかった。
「俺の方が2人とも安心して寝られるだろ? 昼間は任せるから。よろしく」
マジ神! ジュナさんが崇めるのもわかるわ。
夜は安心して休ませてもらって、昼間はスキル全開に全力で気配察知を行なう。
世界樹に向かって移動を始めて3日目。
今のところ襲撃もなければ、魔物も襲ってこない。
多分、あのサキュバスがいるからだろう。
気配察知でこちらを避けていることがわかる。
主様にちゃんと休んでもらおうと、ホック様も頑張っているようだ。
サキュバスやスライムに睡眠は必要ないので、主様に可愛がられている2匹を気配察知することがある。
私の胸を興味ありそうに見ていた主様を思い出す。
「羨ましいですね」
ジュナも2匹が可愛がられていることに気づいているようだ。
私が起きていることにも気づいているのか、話しかけてくる。
もしかしたら独り言だったのかもしれないが、返事をすることにした。
「そうね。気配で幸せが伝わるほどよ。どんなご褒美をもらっているのか」
「はぁ、私も早く豊胸術と第三次性徴の施術を受けて、ラパ様から愛されたい」
「豊胸術と第三次? それは、胸を大きくすれば愛してもらえるってこと?」
「ええ! この絶壁がどれほど大きくなってくれるかわからないけど、立派な山になった暁には愛してくださると約束してくださったの!」
「なるほど。だから私の胸を」
「あなたの胸がもう少し大きかったら、危なかったわ。まあ、あなたのことだから、面食いらしいしライバルとはならなかったでしょうけど」
「それは、どうかな」
「え?」
「主様はこんな私にも優しい人よ。あなたが好きになる理由もわかると思っていたところ」
「ふぅーん。推しのイケメンエルフはいいの?」
「主様を見てると、ほんとにクズな男に貢いでたことがわかる。顔は、あんまり好きじゃないけど、主様の中身は好きになってきているところよ」
「そうなっても、負けるつもりはないから」
「私は犯罪者よ? 勝ち目なんてないわよ」
「ラパ様のことだから、活躍次第では解放されると予想します」
「…容易に想像できる。そうなったら、胸くらい触らせてあげよっと」
「あぁん!?」
「冗談よ。早く寝ましょう。起きてたら主様の見張りの意味がないわ」
「本当に、頼みますよ!」
ジュナが絶壁を叩く音は、聞かなかったことにする。
今日は徹夜を予定している。
なぜなら、目的の世界樹を管理しているとされるエルフの里に到着する予定だから。
「森を進んだ先に、エルフの隠れ里があります。私のお祖母様もそこにおられるはずです。馬車で通れる道は幻術で隠されていますが、私なら」
「あそこね。あれくらいなら私でもわかるわ」
ジュナとジルが睨み合う。
2人の間に火花が見える、気がする。
「ずいぶんと仲良くなったんだな」
「「仲良くありません!」」
「そ、そうか。まあいいや、このまま進んでもいいのか? 俺には木が生えているようにしか見えないけど」
「「はい! ガルルルッ!」」
仲良しだろ。とは口に出さずに馬車を進ませる。
木だと思っていたものは霧のように消えて、整った道が現れた。
道の先を見ると、もう少し遠いかと思われた世界樹が近くに見える。
「こんなに、大きいのか。すごい」
世界樹と呼ばれる理由が、よくわかる。
生命力なんて見ただけでわかるモノじゃないが、目だけでなく肌で感じることもできる。
寝ているわけでもないのに、魔力が回復する気までしてくる。
「本当に回復している? これは、邪神くらい召喚できそうだな」




