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21話 ホックの帰還

 旦那様のお願いを完璧に達成するため、スライムの姿で森の中を飛んでいる。

 探索魔法の反応から察するに、後2時間ほど追いかければ魅了魔法の範囲まで近づくことが出来るだろう。


 連中は私が旦那様にテイムされたことを把握していなかった。

 帝国を細かく監視していなかったと思われる。


 だから私の力をどの程度に把握しているかと言えば、法国の騎士団の副隊長クラスを誘惑することが出来る上に、魅了抵抗の魔道具を無視して魅了することが出来ることくらいだろう。


 結構、重要なことを知られたような気がする。

 流石にスライムからサキュバスに戻ったことまでは気づかれていない、と思う。


 予定ではスライムの姿で近づいて魅力魔法を展開する。

 情報収集しながら、仲間割れを引き起こす。


 そして旦那様の到着と同時に邪教を壊滅させて、褒めてもらうのだ。


 副隊長とダークエルフを魅了したご褒美に撫でてもらったことを思い出す。

 撫でられた時よりも小さいが、幸せな気持ちが溢れてくる。


 サキュバスの姿で撫でてもらったのが、すごく嬉しかった。

 私はご褒美をもらうために頑張ろうと奮起する。


 頑張ったおかげか、1時間くらいで連中の背後まで近づくことが出来た。

 黒いフードで顔を隠しているが、体が隠れていない。


 ケンタウロス、アラクネ、ナーガの女性だろう。

 魔道具を持っていることもあるだろうが、魅了の効きが悪いので女性だと思われる。


「やっぱりボスだけじゃなくて、魔王様にも報告すべきだわ」

 ナーガが立ち止まって2人に話しかける。


「確かにそうっすね」

「それならケンタウロスのホースが行った方がいい。一番足が速い」


「そうね。お願いできるかしら?」

「任せるっす。本気で走って行ってくるっす」


「魔王とやらの話、詳しく聞かせれ貰える?」


「「「あ」」」

 3人は私を姿を直視するのだった。




「ただいま帰りました!」

 世界樹に向かう途中、森の中で野宿しているところにサキュバス姿のホックが転移してきた。


 そのまま抱きつこうとするので回避する。

 頭を撫でる程度なら何とか抵抗できるが、抱きつかれると無理。


「おかえり。転移してきたってことは、逃げてきたのか?」

「いえ、流石は魔物というべきか。邪教信者と思われるケンタウロス、アラクネ、ナーガをドレインしたので一刻も早く貴方様にお会いするため、転移して帰ってまいりました! 魔力はいくらでも溜めておけるとは言っても、たまに消費するべきだと学びました。体が軽いです!」


「上機嫌な理由はそれか。で、3人からどんな情報が取れたんだ?」

「インキュバスの王が、魔王に呪われた地で誕生したようです。自分のことを魔王だと言って、魔物たちを魅了し集めているようです」


 スライムの姿になったホックは定位置について報告を続ける。


「えぇ~。本気で世界を救うことになるのかよ。誰か勇者呼んで来いよ」

「ご安心ください! 貴方様の依頼は聖女を救うこと。聖女を捕まえているのは魔王ではなく、魔王に魅了されてボスと呼ばれるテイマーです。貴方様ほど器用でないのか、意識の共有も出来ない未熟者ですよ」


「それもドレインして分かった情報か」

「はい。3人はボスと契約していた魔物でした。ボスは人型と相性が言いようで、人間やエルフ、獣人族などと契約が出来るようですね。そこに目をつけられたのか、ボスがインキュバスに目を付けたのかはわかりませんが、魅了されて協力しているようですね」


「人型と契約するメリットは、契約を継続するのに魔力以外のモノでいい点だよな。だから契約内容によっては、いくらでも契約が出来る。意識の共有が出来なくても、力を借りることはできる。面倒な相手みたいだな」

「ボスが女性というのも面倒な点ですね。私の魅了が効きにくいです」


「俺がホックの力を借りて魅了魔法を使えば…」

 魅了魔法を使っていないのに好意を寄せてくる存在を思い出す。


「ジュナ二号はいらないな」

「呼ばれた気がしました!」


 馬車でカップを抱いて寝ていたはずのジュナがカップを抱いて姿を現した。

 馬車と馬はルアリールから借りている。


 馬車の中には隷属の首をつけられたダークエルフのジガバールが寝ている。

 本人の強い希望で、一生を俺に捧げる代わりに守ってくれとのこと。


 ジガバールを死なせてしまうと相応の代償を払うことになるので、強化分裂体を見張りと護衛につけている。

 どこに潜ませているかは、想像にお任せする。


 ジュナが羨ましがっていたのは、気づかないことにした。


「呼んでない。寝てろ。俺は昼寝るんだ。俺が寝たらジルはお前が見るんだぞ」

「隷属の首をつけているのです。そこまで心配するようなことはないと思いますよ。心配していただけることはうれしく思いますが」


「誰もジュナの心配はしてない。もしも、ジルが死んだ場合の自分の心配をしているだけだ」

「それなら私の護衛をカップ様にさせず、ジガバールの護衛をさせるほうが確実だと思いますが?」


「…カップはそばに置いておきたい」

「つまり私をそばにいさせておきたいということですね!」


「そうは! いってない」

「はぅ、私の神様はかわいいです。これがツンデレというやつなのでしょうか?」


「神様でもない。かわいくもない。ツンデレじゃない」

「貴方様、顔が赤くないですか?」


「慣れてないんだよ。こんな俺のどこがいいんだよ」

 整った顔立ちでもなければ、ちびで少し丸い。


 どれだけ動いてもへこんでくれない腹を撫でる。

 まあ、この体系のおかげで溜めこむイメージがしやすくて、時空間魔法が得意なわけだが。


「人間、見た目がすべてではありませんよ」

「エルフのジュナに言われると、あんまり響かないな」


「エルフの中じゃ、私なんで下の上程度ですよ。お尻もこんなですし」

「それのどこが下なのかわからない。それで言ったら俺なんて下の下だろ」


「私のとっては神のように、上の上です! 私に好かれるだけでは、ダメですか?」

「胸がない」


「もう! ひどいです!」

「ありがとう。うれしいよ」


「これが!」

「ツンデレじゃない。はぁ、早く寝てよ。俺は夜起きて朝寝るんだから。日中はジュナが頼りなんだ」


「はい! おやすみなさい!」

 ジュナは嬉しそうにカップを抱いて馬車に戻っていた。


「貴方様、女の扱いに慣れてこられましたね」

「いうな。ホックは俺の護衛だ。よろしくな」


「はい! 喜んで!」

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