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15話 法国について

 夕刻になっても騎士団は到着しなかった。

 ホックと意識の共有することで、依頼人の現状を確認する。


 進んだ先で盗賊の襲撃を受けたが、撃退に成功したそうだ。

 怪我人はいるようだが、盗賊以外に死者はいないとのこと。

 今は野宿の準備をしていると教えてくれた。


「あ、あの! お話、よろしいでしょうか?」

 盗賊団から助けた人の治療が終わったのか、聖女候補の女性が駆け寄ってくる。


「はい。何ですか?」

「わ、私は法国の聖女候補、ジュアーナといいます! 親しい人からはジュナと呼ばれています! 良ければ冒険者様のお名前を、教えてください!」


 急な自己紹介に驚くが、名乗られたからには名乗り返すのが礼儀だろう。


「はい。僕は冒険者ギルドに所属するBランク冒険者のスーラパイといいます。親しい人からラパと呼ばれていますので、ジュナさんが良ければラパと呼んでください」

「は、はい! ら、ラパ様! あの男から助けていただき、ありがとうございました! お返しできるものがなく、それで、私にできることでしたら、なんでもいたします!」


「様はやめてください。多分、ジュナさんの方が年齢も身分も上ですよね? それに、お返しを期待して助けたわけじゃないですし、それに報酬は依頼主からもらうのでお気になさらず」

「そうはいきません! 歳は、そうかもしれませんが、身分など関係なく、私はラパ様をお慕いしたいと思っています。だから! わ、私の体に、興味はありませんか?」


 なんでもって、そういう意味も含まれていたか。

 予想できたから断ったのに、ジュナの方から言ってくるとは。


 ジュナのお尻だけなら、興味がないと言えば嘘になる。

 問題は、胸だ。


 ジュナがエルフに近い種族であることは胸もそうだが、耳を見るとわかる。

 特徴的な尖がった耳。

 普通のエルフより短いところから、ハーフなのかもしれない。


 どうしようかと考えてジュナを見ていたら、ローブを脱いだ。


「この、貧相な体では、ダメですか?」

「ダメですね」


 即答する。

 

「そう、ですか…。私は、どうすれば」

 脱いだ俺のローブを抱きしめて、地面に座り込んでしまう。


 この場から逃げるようなら捕まえるつもりでいたが、下着姿で逃げなかったことに安心してゆっくりと近づく。


「ジュナさんの気持ちはうれしいですが、自分を大切にしてください。今は少し混乱しているのでしょう。深呼吸して、話をしませんか?」

「は、はい…」


 涙を拭って返事をするジュナからローブを受け取って、ローブを着る手伝いをする。

 鼻をすすって「ありがとう、ございます」とお礼を言われた。


「まずは、どうしてあの騎士に捕まっていたか、詳しく聞いても大丈夫ですか?」

 焚火の側に移動して、話をするために2人分の椅子を用意する。

 ジュナが座ったことを確認して話しかけた。


「はい。あの男は、ラパ様も知っておられるように法国の騎士でした。昔から女癖の悪い騎士と噂されていましたが、とうとう聖女候補である私に目をつけて、その、お尻の初めてを奪われて、しまいました」


 法国は女癖の悪い奴が騎士になれる国なのか。

 それとも、騎士になって金も地位も手に入れてたことで、性癖を抑えきれなくなったのか。

 うん。興味ないな。


「その後も捕まって、ここでも。というわけですね」

「は、はい。純潔も、奪われそうになったのですが、神のご加護により守られました。私があの男と望んで逃げたわけではない、証拠になります」


 騎士1人が聖女候補を襲ったうえに、捕まえて法国から逃げられたとなれば、聖女候補が協力者だと疑われると理解しているようだ。

 だから神に祈りを絶やさずに、純潔は守ったということらしい。


「なるほど。話してくれてありがとうございます」

「ほ、他に聞きたいことはありますか? 私のこと、とか」


「そうですね。僕は法国に行ったことがないので、知らないことが多いですから、法国について教えてもらえますか?」

「あ、はい。えっと、私の国はエルフと人間種が集まってできた国であることは、ご存知ですよね?」


「はい。だから、ジュナさんのようなハーフの方がいることは知っていますよ」

「私はハーフというより、クォーターですね。両親がハーフになります。クォーターになると人間種に近づくのですが、私はエルフの血が濃く出たようで、聖女候補に選ばれるほどに魔力量が多いと聞きました」


 聖女はエルフにしかなれないことは噂程度に知っていた。

 魔力量が関係していることや回復魔法を使用できることが重要らしい。


「法国は、教祖様と4名の神官長様に聖女様が2名おられます。主に国を治めているのが2名の神官長ですね。聖女候補者は20名ほどいると聞きましたが、聖女を目指しているのは4人ほどだそうです。そのうちの1人が私ですね。ですが、私は、聖女になることはないでしょう」


 汚い穴を汚された程度で聖女になれないのだろうか?

 普通に考えるとお尻だけを犯された、と考える人間のほうが少ないか。

 体も男に犯されていると考えるのが普通だ。


「でも神の加護で純潔は守られているのですよね? 諦めるのは、まだ早いのでは? 法国に帰って潔白を証明すれば」

「で、できません! 今の私は、愛する人を、見つけてしまったから」


「  ん  ?」


「聖女もそうですが、私達は神に愛を誓うことで、神のご加護を与えていただくのです。しかし、異性を愛することで加護は無くなります。例外として、聖女になるための儀式で愛すると決めた異性と一生の愛を誓うことができるのですが、加護は祝福に変わって力を増すことができるそうです」


 聖女になるまで恋愛は禁止だったが、ジュナは俺に恋したので加護が無くなってしまったらしい。

 加護が無くなったことで、回復魔法の力が弱まっていたそうだ。


 聖女になる儀式の前に、国から紹介された異性と見合いをすることで、愛する人を決めるのだとか。

 この話は聞いていいモノなのか?


「えっと、このまま純潔を守って祈りを続ければ、また加護が与えられるのでは?」

「わかりません。愛する人を見つけて、聖女にならず国を飛び出して結ばれる話は聞いたことがあります。しかし愛する人から愛されなかったからと言って、また加護が与えられたというのは、聞いたことがありません」


 厄介ごとの気配はこれだったか。

 ジュナを法国に帰しても、聖女候補に戻れない。

 かと言って、責任を取れと言われても取る必要があるとも思えない。


「そう、ですか。ん~~」

「責任を取ってほしいと言う意味でお話したわけではありません! ただ、私の気持ちを知ってほしくて」


「そこまで想われているとは、予想できませんでした。どちらかといえば男にトラウマを持っているのではないかと、心配していたくらいなのですが」

「確かに最初は、その、視線がいやらしいと感じてました。でも! 優しい人だと知り、怖いと感じるよりも温かな気持ちにさせてくれる人だと感じて、ラパ様を愛してしまいました」


 ジュナは確かに美人だ。しかし貧乳である。

 気持ちに応えたいと思うが、貧乳なのだ。

 それにジュナを助けてから、


「フンッ」

 カップに威圧感がある。

 ジュナを警戒しているのか、嫉妬からくるモノなのか。


 最初の進化で吸収した女性の影響もあるのか、俺に好意を見せる女性がいるとスキンシップが強まる。

 積極的におっぱいとなって体に当てたり、俺から離れないよう体に密着する。


 しかし俺がカップに求めていることを理解しているのか、女性に危害を加えるようなことも、俺の行動を妨害することはない、と思う。

 まだ体だけの関係さえも経験がないので、実際はどのような反応をするのか、わからない。


 とりあえず一緒に落ち着くため、カップを揉んでおく。


「ありがとうございます。ジュナさんのお気持ちはうれしいのですが、僕はまだ、ジュナさんを愛することはありません。ごめんなさい」

「はい。わかっていました。でも、ラパ様はまだと仰られました。少しは可能性があると、考えてもいいですよね?」



 そんな泣き笑い顔で言われてしまうと、絶対にないとは言えないよな。

 確かに美人なんだよな。

 性格も悪いと感じることもない。


 怪我人を治す姿は、まさに聖女と呼ぶに相応しいものだった。

 加護が無くても、怪我人を治す技術も能力もある。

 もしパーティーを組むなら、回復役は必要な人材だ。


 しかし俺はソロのテイマーだし、パーティーを組む予定もない。

 それにホックの存在もある。

 元聖女候補がサキュバスの存在を許すだろうか?


 今はスライムの姿をしているが、一緒に行動するならいつかバレるだろうし。

 メリットよりデメリットの方が大きい。

 もしホックかジュナのどちらかを選ぶようなことがあれば、確実にホックを選ぶ。


 俺の夢はおっぱいに囲まれて死ぬこと。


 特定の女性がそばにいる必要はない。

 一夜限りの関係程度がちょうどいい。


「いえ。ジュナさんを愛することはありませんよ。だって、貧乳ですから」

「やっぱり胸なんですね!」


 ジュナを薄々は気が付いていたようだ。


「お尻は立派なようですが、胸が、ですね。僕はもっと立派なおっぱいを持った女性が好みでして」

「わかってましたよ! 残念なものを見るような視線に気づかないと思いますか!? 何年、この体と付き合ってきたと思います!? 慣れっこですよ!」


 あの2人に通ずるモノがあるな。 

 クォーターとはいえ、エルフだからスレンダーな体に自信を持っていると思っていたが、違ったようだ。


「ジュナさんも、胸は大きい方がいいですか?」

「もちろんですよ! このデカ尻のせいでアンバランスだなんだと言われて、エルフからも人間種からも相手にされずに、相手が見つかったかと思えば尻にしか興味のないクソ野郎! もう、一生神に愛を誓うしかないのかと覚悟していました所に、ラパ様が現れて、運命の人かと思えば! 貧乳だから愛せないと言われた女の気持ちが分かりますか!?」


「気持ちはわかりませんが、深呼吸して落ち着きましょう。ジュナさんが望むなら、立派になるかわかりませんが、貧乳から脱出することのできる方法がありますよ」

「すー…はー。ほう、ほう?」


 オメガ先生の豊胸術と第三次性徴の話をする。


「やります! やってください! そして私を愛して!」

「えっと、愛するかどうかは置いといて、それなりに時間がかかる方法なので、法国に帰って落ち着いてからということで大丈夫ですか?」

「はい!」


 ジュナも貧乳から脱出して、ほかの男性に声をかけられるようになれば、俺のことを忘れてくれるだろう。

 多分。

 だといいな。


 うん。未来のことは未来の俺に託そう。

 頼んだぞ、俺!


 豊胸術と聞いて威圧感の強まるカップは見ないようにした。

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