表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/34

13話 Aランクとか、お断りします

 報告書を出した次の日に会議の日でもないのに、本部から呼び出しがあった。

 もちろん無視する。


 ダンジョンの魔物が何故か近づいてこなかったオメガ研究所にいたが、毎日のように魔力を限界まで使ってドールの処理をしていたのだ。

 高級宿で数日休んでもいいじゃないか。


 どうせ明後日は会議の日。

 今から本部の連中に質問攻めされたところで、他所のギルマスからも同じ質問をされるのなんて、誰でも予想できる。


 とりあえず呼びに来た高級宿の店員に、「嫌です。休ませろ」と書いた手紙を本部から来た職員に渡してもらう。


 これでもしつこく呼び出されるようなら、時空間にいるカップ分裂隊を率いて出向いてやる。

「杖の効果を見せに来ました」と笑顔で言ってやるのだ。


 なんてことを考えてカップを枕に右手に杖、左手にホックを握って眠りについた。

 再度の呼び出しはなかったので、会議の日までゆっくり休むことができた。


「報告は以上です。ご質問は?」


 会議室で杖を使ったカップ分裂隊のお披露目会を行なう。

 どうせそんな数のスライムを一度に出現させられないだとか、杖の性能を見せろとか、杖を鑑定させろと言われることはわかっていた。


 なので手っ取り早く理解して貰うために、会議室でカップ分裂隊を時空間から呼び出して、

「散開。集まれ。ゴミを集めろ。汚れを落とせ」などの命令を行なった。


 杖は魔力量に自信のあるギルド長に渡してみたが、フラージュの魔力吸収に耐えられず気絶した。

 慌てて魔力回復薬を飲ませていたが、魔力がなくなった程度で大げさな。


「殺す気か!」と怒鳴られても貴女が希望したんだろう。


「ボス部屋の攻略法に杖の効果や仕様もわかった。しかし杖を狙うものや杖を使用させようとする輩についてはどう考える?」


「使ってもらった通り、魔力を消費してスライムを操る程度の能力です。これで悪さをしようにも効率が悪いのでは? 魔力に自信のある方が使われても命令一つ満足にできないのでは、自分が使う以外使い道はないと思います。

 それでも心配と言うなら契約魔術を使って、杖を使った他者に害を与える命令は行わない、と契約しても構いません。こちらが契約を守る限り杖の所持者は自分であり、破った場合に杖の破壊もしくは封印で釣り合うと思います」


 まあ杖じゃなくて魔物の擬態だから契約を結んでもあんまり意味ないんだけど。

 目に見える物で形に残すって大事だよな。


 反対もなく契約魔術が実行された。


「さて、君はランクアップを望まないということだが、これほどの功績でランクアップさせないというのも周りに示しがつかない。そこで、将来的にAランクが確定しているという情報を全てのギルド支部に通知する、というのはどうだろうか?」


「冒険者のランクに興味がないです。Aランクとか、今回みたいなことで呼び出されるのも面倒ですから、お断りさせていただきます」


「そうか。残念だ」

「他に質問などはないですか? なければ退室させていただきます。お疲れ様でした~」


 カップ分裂隊を回収して、呼び止められる前に会議室を出る。

 本部を出る前に霊峰を見て、昨日のことを思い出す。


 オメガ信者と呼ばれていたヤスモ先輩から届いた手紙の内容だ。


 直接会うことはできなかったので、宿屋の店員に頼んで渡した手紙の返事だった。

 ヤスモ先輩はテイマーだが、スライムと相性が悪く契約ができなかった。


 代わりに獣系統と相性が良く、進化を繰り返して獣人化できるまで育てたそうだ。

 今は子沢山で家族と宿の経営をしている。


 最古のダンジョンは80階層まで到達できたが、ボスと相性が悪く80階層を突破できなかったとのこと。

 83階層に研究所があったことは返事に書いて伝えているが、スライムと相性が悪ければ到達できたとしてもスライムで隠されていた研究所を発見できたのかは、わからない。


 更に最古のダンジョン以外でオメガ研究所があると噂されている場所を教えてもらった。

 法国にある世界樹と呼ばれる大木、から2つ街の離れた場所に森がある。


 その奥にエルフが管理しているダンジョンがあるそうだ。

 そこのエルフと交友関係にあるらしく、ヤスモ先輩の名前を出してもいいと許可をもらっている。


 もう一つは王国の港街から南に無人島があるらしく、そこにダンジョンがあるとか。

 こちらは噂程度の情報しかないとのこと。


 今回のようにオメガ先生が放置した研究内容が最悪の事態を引き起こす、可能性があることがわかったので、自称弟子として各地にある研究所を見つけることを目標に、旅立つことにした。


 旅立つことはギルマスに伝えてあるので、このまま法国に向けて出発する。

 霊峰と呼ばれる場所だけあって、法国の国境に近い場所だ。


 1ヶ月もすれば目的地に到着できる予定をしている。

 冒険者だけあって国境で止められることもない。

 必要な物は昨日のうちに買った。


「人生始めての旅か。トラブルに巻き込まれないことだけ祈っとくか」

 なんて言ったのが駄目だったらしい。


 法国行きの荷馬車が襲われた。


 小遣い稼ぎ程度に商会の護衛任務を受けたのが悪かったのか?

 俺以外に冒険者パーティーの護衛がいるので協力して撃退する。


 盗賊以外の死人は出すことはなかった。

 パーティーに怪我人は出たようだが、回復薬を飲んで少し休めば治る程度だとか。


「さて、拷問といきましょうか」

 盗賊の連携から指示役がいることはわかっていた。


 後ろの方から怒号を発していた男は、ホックによって捕縛済みだ。


「ガキが拷問だと? やれるもんならやってみろや! 俺を解放するなら殺さずにッ!」

 うるさくて臭い口にカップの分裂体をぶち込む。


「はいはい。どっちが上か教えてあげましょうねえ」

 まずは歯を溶かしてやる。


 喋れなくても文字は書けるから。


「いばバブプッアガがが!」

「はい、こいつはスライムです。なんでも溶かしてくれる便利な魔物ですね。わかります?」


 何度も頷く男に笑顔のまま話を続けた。


「文字は書けますね? 僕の質問に答える毎に、歯を治してあげますよ。いいですね? はい。それでは手の拘束を解きますが、答えを書き込む以外の動きに見えたら、また口に突っ込んで、次は頭の骨を溶かしますからね?」


 男が頷いたのを確認して拘束を解いて質問する。


 はいやいいえ、わからないと答えられるような質問を繰り返して、答える毎に分裂体から歯を取り出して地面に並べていく。


「はい、ありがとうございました。では口を開けてください」

 質問を終えて再度拘束した後に口を開けるよう指示する。


 抵抗もなく指示に従う男の口にカップの分裂体と歯を入れると、元よりもきれいな歯並びと口臭が消える。

 男は喜んでいるのか地面に頭を擦り付けて泣いている。


「さて、こいつ等以外に仲間が離れた場所から見ていたそうです。今頃は他の仲間を集めて戻ってくるか、進んだ先で待ち構えている可能性があります。この辺りで大規模な盗賊団といえば、心当たりはありますか?」


「あ、はい! 噂でしかないですが、盗賊をまとめてるのが法国の元騎士で、そいつは聖女候補を犯した罪で死刑になるところ、捕まえられずに逃げられたとか」


「なるほど。貴方達を束ねているのは、法国の元騎士ですか?」


 指示役以外にも生け捕りにした盗賊達がいるので笑顔で問いかける。

 指示役の拷問を見ていたので盗賊達は素直に頷いた。


「詳しく知っているという人は、指示役ですか?」

 という問いかけにも頷く。


「ひぃッ!」

 指示役に近づくと悲鳴を上げられた。


 歯をきれいにしてあげたというのに。

 ついでに口臭も消してあげたんだよ?


 感謝してよね。


「話してくれますね?」

「は、はいぃぃい!」


 男の話を聞いた依頼人が、盗賊団の討伐を依頼したいと言い出した。

 提示された報酬に冒険者パーティーが「やります!」と即答する。


 冒険者パーティーを無視して依頼人がこちらを見る。

 決定権は俺にあるようだ。


 断ると護衛依頼だけで、後は法国に向かうだけだが、進んだ先で待ち伏せされている可能性は高い。

 最悪の場合、引き換える可能性もある。


 ついでに冒険者パーティーが報酬目当てに暴走する可能性も。

 引き返すことになるなら俺は法国に向かうだけでいい。


 しかし進んだ先で襲われるなら、護衛依頼と討伐依頼の報酬をもらう方が得だ。

 それに冒険者パーティーを放置すると勝手に飛び出していきそうな雰囲気がある。


 ここは討伐依頼を受けることにした。


 ついでに法国が捕まえられなかった元騎士を捕まえて、法国に恩を売ることもできるそうだし。

 一石三鳥ってか。


「わかりました。それでは冒険者パーティーの…」

「銀の翼です!」


「あ、うん。君達は依頼人の護衛を継続してください。盗賊に襲われた際は各自の判断で対応をお願いします。こちらは元々ソロですから好きに動きます。

 さっきのように手助けはできませんが、死なないように気をつけてください。次に襲ってくる盗賊はさっきのような烏合の衆というより、元騎士が指揮する軍隊とでも考えておいてくださいね。

 それをわかっていて依頼を受けたのですよね?」


「あ、はい」


「わかっているならいいんですけどね。死ぬのは君達なので、僕には関係ないですから。それだけです」

「…はい」


 何も考えずに依頼を受ける危険性を理解してくれたらいいな。


 依頼人も不安そうな顔をしてやらないでほしい。

 ホックを護衛に置いていくことで依頼人に渋々だが、別行動の許可を得る。


 拷問した指示役の案内で盗賊のアジトに向かう。


 移動中は元騎士について情報収集を行なった。


 元騎士の性格、大体の強さ、普段の様子、行なった犯罪の内容など。

 救いようのないクズということで、容赦は必要ないようだ。


 アジトは開拓村を利用しているようで、反抗した村人は殺し、協力する村人は働きに応じて報酬を与えているとか。

 一見ただの開拓地だが、隠された場所に奪った宝や娯楽施設なども作られているそうだ。


 領主のような振る舞いで村人は積極的に協力しているとか。

 盗賊たちは強奪以外に魔物退治も行っているので子供達から憧れられる存在になっているとか。


 国でも作るつもりなのだろうか?


 開拓村に近づいてきたところで、案内してくれた男を時空間魔法で捕らえておく。

 人間を時空間に入れることは違法に当たることもあるが、相手は盗賊なので違法どころか合法だ。


「村人が無罪なら、こんなことはしなくて済んだのにな」

 カップ分裂隊を50組(1組20匹)、村に解き放つことにした。


「1~30番隊は開拓村を包囲、逃げる人間がいれば捕まえろ。残りは開拓村に突撃」

 フラージュ()は本当に便利だ。


 俺でもカップの分裂体に命令できる。

 複雑な命令も可能で、増えすぎてしまった分裂体を操って無双状態だ。


「さ、盗賊狩りだ」

 スライムの大群に襲われた開拓村は阿鼻叫喚。


 逃げた先にもスライムが待ち構えている。

 捕まって殺されるかと思えば、殺されずに捕まるだけで混乱している様子も見られる。


 スライムに抵抗する盗賊達も数の暴力に勝てず、捕まっていく。

 しかし娯楽施設があると聞いた場所に向かったスライムが、瞬殺された。


「スライムごときにやられんじゃねえよ! どいつもこいつもつかえねえなぁ!?」

 奴が元騎士の盗賊団の頭だと思われる。


 他にもスライムを瞬殺する男達が、連携するために集まっていた。


「状況は?」

「は、はい。突然スライムの大量発生で村人や下っ端共はスライムに捕まっています。ですが殺されていません」


「スライムを操ってる奴がいるってことか。スライムのテイマーか。厄介だぞ」


 カップ分裂隊を瞬殺する奴らがこっちに集まっているなら、法国に向かっている銀の翼パーティーが襲われても、なんとか出来るかな?


 依頼人はホックがついているので、確実に大丈夫だろうけど。


「どこのどいつか知らねぇが! 姿を現したらどうなんだぁ!?」

 娯楽施設に到達した分裂隊は全滅したようだ。


 あいつ等以外は捕まえられたし、助けられる前に姿を現したほうが良さそうだな。


「どうも、法国の元騎士ボドルーガさん。あなたを捕まえに来ました」

「お前が、俺を捕まえるだと?」

「お頭! こいつですよ! 下っ端共に襲わせた商人の護衛をしていた冒険者は!」


「貴方達のおかげで護衛依頼から討伐依頼まで追加されてしまいましたよ。というわけで、こうしてここまでやってきたわけですけど。降伏しません?」

「たかがスライムの…テイマー? いやまて。確かそんな奴が…お前、まさかオメガ信者か!?」


 ここでも出ましたオメガ信者。


 知り合いにスライムのテイマーでもいるのか?


「つい最近も同じように驚かれましたね。そこまで驚くことでしょうか? それとも知り合いにオメガ信者なる者がおられるので? まさか、ビビっておられる?」

「誰が、テイマーなんぞにビビるかよ!」


 煽ったら突っ込んできたよ。

 元騎士なだけあって強化魔法で一気に距離を詰められる。


「ただ出てきただけだと思います?」

 地面にカップ分裂隊を擬態させて消化液で作った穴は、見事にボドルーガの足を捕まえて転ばせた。


「あぁ!? んズべボ!」

 足が穴に入ることで当然、地面に顔面を打ち付ける。


 気絶はしていないが、顔を上げたボドルーガの鼻が曲がっていた。

 時間差で鼻血が出てくる。


「ぎ、ぎざまぁ! おばえら! なにをじで…おばえら?」

「お仲間ならもう捕まえましたよ。だから、なにも考えず出てくるわけ、ないですよね? 僕、テイマーですから」


「ひぃ! あばばばb」

 ボドルーガの頭をフラージュ()で突付いて魔力吸収を行なう。

 魔力切れで気絶したボドルーガを時空間に捕らえる。


 ボドルーガのお仲間たちは強化したカップ分裂体3匹に拘束されている。

 蠱毒を元に、オメガ先生が発案したスライムの強化術で作成した分裂体だ。


 強化された消化能力で武器破壊もできるが、しなくても物理攻撃無効化だし魔法耐性も上がっている。

 水系の魔法なんて吸収して大きくなる。


 どうやって倒すの? と自分でも思う。


「さて、貴方達のお頭は気絶しています。素直な人が、僕は好きなんですが…」

「「「はいっ! 何でもします!」」」


「そうですね。ここに一番詳しい人は?」

 一人の男に視線が集中する。


「は、はい。俺が管理を任されています」

「では、案内をお願いしますね。他の人は、殺しはしませんが、抵抗すれば死ぬことも…あると思ってください」


 そんなに俺の笑顔は怖いだろうか?

 ちょっと悲しい。

本日は19時も投稿予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ