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12話 オメガ研究所

 81階層の調査で、魔物はドールが擬態したモノの方が多いとわかった。

 生まれてくるのがドールばかりで、80階層に追い出されていくからだ。


 80階層に移動したドールをカップの分裂体(数十体)で吸収する。

 カップはコアを吸収して進化したことで、分裂体に簡単な命令ができるようになっていた。


「この部屋に現れた同族を取り込め」と命令することで、81階層から追い出されたドールを、80階層で処理することができる。


 命令内容の「同族」だけだと共食いしてしまうので、現れた、というのが重要だ。

 分裂体も分裂するのだが、分裂は現れたに含まれない。


 分裂だから増えただけで、現れた判定にならないようだ。


 82階層以上で追い出されたドールも直接80階層に送られるので、ほぼ入れ食い状態だ。

 ドールが転移陣を使っているというより、ダンジョンが移動させているのだろう。


 そして、83階層で原因を発見する。


「壁に擬態したスライム。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」

 カップは83階層にいるわけだが、俺は50階層にいる。


 さて、どうやって83階層まで行くか。


「私の隠蔽魔法で魔物に見つからず行きましょう」

 というわけでホックの魔法で姿を隠して魔物に気づかれず、見つからないように83階層を目指すわけだが、


「ですよね~」

 60階層に到達するとボスが出現する。


「私が処理しますので、貴方様は離れて下さい」

 サキュバスの女王は、60階層のボスよりも強かった。


「相手が良かったのです。ゴブリンキングなど魅了してしまえば、呼び出した仲間と同士討ちさせることができますからね」


 やっぱりサキュバス怖い。

 ふとドールがボス部屋を埋め尽くしていたら、ボスは出ないのでは? と閃いた。


「カップに分裂してもらって、分裂体が追い出されたところで階層に到達してみるか?」

「それは名案ですね。早速実践してみますか? もし出てきたとしても隠蔽魔法で見つからず逃げることもできます」


 ボスは挑戦者が階層からいなくなると消える。

 ダンジョンはエネルギーを効率的に集めることを目的にしているので、エネルギーを使うボスなどは節約のために維持することがない。

 と推測する。


 ダンジョンコアと繋がっていたホックとコアを吸収したカップに、ダンジョンについて詳しく聞けばわかるかと思ったが、


 ホックの答えは、

「帝国はダンジョンを実験場にしていただけですので、通常の動きが分かりません」


 カップは、「んぷ?」と分からないようだ。


 オメガ先生も、ダンジョンは未知の存在と書かれていたので、検証していくしかないようだ。


「カップを70階層に呼び戻すか。ボスが出なかったら80階層でも出てこないだろうし」


 80階層では既に分裂体が分裂した途端に79階層に送られて、待ち伏せしている魔物に食べられている。

 カップの分裂体の分裂体は美味しいのか、魔物が分裂体を出待ちしている。


 80階層に行くため、79階層のことは後で考えるとして、まずはカップを83階層から70階層に呼び戻すことにした。


 実験は成功。

 ボスが出現することなく、カップの分裂体達に出迎えられる。


 魔物と戦闘せずに、83階層まで到着できた。

 79階層は80階層につながる場所に、大量の魔物が居座っているので、70階層の分裂体達を時空間魔法で保管して79階層で解放することで、分裂体達を散開させて魔物を誘い出す。


 分裂体が襲われている間に、79階層を抜けて83階層まで到達した。

  壁に擬態したスライムを調べると割れ目を発見する。


 スライムに触っても反応がないので、擬態したまま活動を停止していると思われる。

 カップにスライムを吸収してもらうとひび割れた扉が現れた。


 鍵穴は見当たらないがドアノブをひねっても押しても引いても、開かない。

 カップに頼んで扉のひび割れから中に入ってもらうことにした。


 意識を共有する応用で、視界を共有して研究所内を確認する。

 およそ20台ほどの割れたカプセルを設置されていた。


 奥まで進んでいくと魔法陣の刻まれて割れていない、中身の入ったカプセルを発見する。

 カプセルの台座にエンプレス女帝フラージュと刻まれていた。


 取扱説明書と書かれた紙束もご丁寧に置かれている。


 カップは魔法陣の刻まれたカプセルに近づくことを嫌がった。

 魔物除けの効果があると思われる。


 研究所内に危険がないことは確認できたので、中に入る方法を考える。

 簡単な方法は扉を破壊することなので、カップを呼び戻すことにした。


 ひび割れから扉内に入ったカップにお願いして、内から消化液を出してもらう。

 扉を脆く破壊しやすくしてするためだ。


 消化液でひび割れが広がることを確認してカップを呼び戻す。

 触ると軽いやけどをすることが分かっているので、消化液が無くなるまでカップを愛でる。

 たまにホックも握ってやる。


 念の為、扉内に消化液が残っていないかカップに確認してもらい、残っていれば消化液を回収してから出てくるようにお願いする。

 カップが出てきたタイミングで身体強化を行なって、扉を壊す準備をする。


 カップが手を守ろうと右手に纏わりついてくれる。

 お礼を言ってから、カップを纏った右手で扉のひび割れを殴る。


 脆くなったとはいえ頑丈な扉は、ひび割れが広がる程度なので何度も殴ることになった。

 カップは器用に左右交互の手に移動して、手を保護してくれた。


 素手で殴っていたら身体強化でも怪我か腕を痛めていたかもしれない。

 カップに再度お礼を言ってから、今夜の魔力は多めに与えることを約束する。


 研究所内に入ることができるようになった。

 エンプレスフラージュのカプセルまで、迷わずに向かう。


「ホック、この魔法陣は…魔物除けと保存、強化に魔法と物理反射で間違いないか?」

「はい。私から見てもそれらの効果が付与されていると思います。しかし貴方様が尊敬するオメガ様が付与されたと考えるなら、警戒するべきかと」


「はぁ、だよな。取扱説明書は…俺なら取れるみたいだし、これ読んでから魔法陣の解除は、できないかもしれないけど。解析はあとにするか」


 カプセルに触れることは避けて、カップに取れなかった紙束を手に取る。

 丈夫な椅子があったので、座って読むことにする。


 エンプレスフラージュについて。

 ドールの上位種を造ることに成功した。


 ドールは一度擬態すると元に戻らない頑固者だが、フラージュを使えば擬態を解除させることが出来る。

 更にフラージュに魔力を与えれば、ドールの量産も可能になった。


 ドールに命令をすることも可能で、契約者自身そっくりの擬態も可能となる。

 不老不死が実現するかと思われた。


 しかし本体が死ねば、フラージュに命を握られることになり、上下関係が逆転する。

 創り出した魔物とはいえ、魔物は魔物だ。


 上下関係が変われば、フラージュにどのような変化が起こるかわからない。


 ドールを使った不老不死は不可能と判断する。

 量産したドールとフラージュを封印することにした。


 もし誰かがここに到達したなら、フラージュを譲ろう。

 封印の解除方法は、テイマーだ。


 周りのドールも好きにしてくれていい。

           オメガ・パイアーツ・サーコイ。


 他にもエンプレスフラージュの創り方やフラージュの運用方法など記載されている。

 フラージュもドールのように擬態が可能で、妊娠することも可能。


 しかし妊娠すると擬態を解くことができず、出産すると擬態した生物に固定されてしまう。

 魔物で実験済み。


 固定化されてもフラージュの能力も保持しているので、固定化されたフラージュは処分すること。

 放置すればドールが生まれ、群をなす。


 人に擬態させれば…戦争に…悪用厳禁。


「生物兵器かよ。書籍に残さかなったのは正解ですよ、オメガ先生」

「それで、貴方様はフラージュをテイムするおつもりですか?」


「解除方法がテイマーってことは、そういうことだろうな。ドールに命令ができて、無限の群体を作ることが出来る。これは秘密にしないと面倒ごとに巻き込まれるよな」

「間違いなく王族に目をつけられるでしょうね。貴方様がいれば民を使わなくても、戦に勝てるのですから」


「取扱説明書は時空間に永久保存して、フラージュはドールの騒動が終わってから考えるか?」

「ドールの騒動が解決しないと、ずっと最古のダンジョンから動けない可能性もありますからね」


「だよな。ドール自体の処理が俺以外にできれば、本部も解放してくれるだろうけど」

「他のテイマーに貴方様と同じことができるとは思えません」


「それはわからないけど、他のテイマーにフラージュが見つかってたら、考えるのも恐ろしいな。おっぱいにしか興味のない自分に見つけられてよかったな」


 フラージュを仲間にする。

 それは確実だ。


 このまま放置してドールの処理を何年もかけて行うとか、考えるだけで面倒くさい。


 問題はドールを片付けた後だ。

 フラージュを同行させるのか、取扱説明書と同様に時空間に入れておくか。


 取扱説明書を読み返す。

 擬態が生物だけでなく、物になれるなら。


「契約時に擬態を固定化させて、杖として使えるようにする。固定化されてもフラージュの能力を持ってるなら、可能か? ドールの生産能力は契約時に縛れば魔力を送っても発動しないようにして。なら契約内容を…」


 契約内容を刻み込んだ魔法陣をカプセル内のフラージュに向けて展開すると、人型のフラージュが杖の姿に変わった。

 成功だ。


 カプセルに刻まれていた魔法陣にひびが入ると、カプセルともども割れる。

 杖は浮いたままこちらに近づいてきた。


「これからよろしく、フラージュ」

 杖を掴むと深翠の宝珠が光る。


「最初の仕事はドールの処理だ。数が多いけど、頼りにしてるぞ」

 深翠の宝珠(フラージュ)が答えるように強い光を放った。


 報告書。


 オメガ研究所を発見。

 中を調べたところ、スライム系統に命令できるとされる杖を発見した。


 試しにドールを操れないかと、83階層の魔物に「ドールは跪け」と命令したところ、効果あり。

 擬態していても元はドールのため命令が可能なようだが、魔力の消費が大きく、命令の内容によっても消費量が変わることも実験済み。


 魔力が回復したところで擬態の解除、擬態の禁止命令を試したところ、少ない魔力で可能だった。

 スライムでドールの処理を行なう。


 魔力を大量に消費することで階層を超えてドールに命令が可能と判明した。

 100階層までドールに命令を行ない、スライムで処理中。


 ダンジョンについて。

 10階層毎のボス部屋は、事前に魔物を大量発生させることでボスが現れないことを確認。


 部屋によって魔物の上限数が異なり、スライムの分裂体を用いたが、現実的ではない。

 階層を突破したと言えるか疑問である。


 83階層まで到達したが、魔物やボスの討伐は行っていないため、ランクアップは辞退したい。


 追記。

 杖は渡させない。

 契約者以外が使用すれば、死ぬ可能性もあると記載された研究資料を発見している。

 奪われるようなことがあれば、冒険者をやめる覚悟がある。

                  テイマースーラパイ。

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