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10話 最古のダンジョン

 霊峰ザージリタに最古のダンジョンと呼ばれるダンジョンが存在する。

 オメガ先生の書籍を持っている者は、オメガ様の研究所であることを知っている、はずだ。


 まずオメガ先生の書籍を持っている者が少ない。

 というか語り合えるほどの人と会ったことがないので、確認ができない。


 ただ俺は知っている。

 最古のダンジョン内にオメガ先生が研究所として使っていた場所があることを。


 なぜ今まで最古のダンジョンに入らなかったかといえば、入れなかったからだ。

 最古のダンジョンに入るには、ギルドの許可が必要になる。


 勝手に入れば最悪死刑もあるとか。

 まあ高ランクの冒険者なら許されることもあるようだが、低ランクの冒険者が入ったなら帰ってくることもほとんどないし。

 ある意味で死刑みたいなものだ。


 なぜギルドの許可が必要なのか。

 最古のダンジョンが未だに成長を続けている。


 そのため強力なモンスターを発生させる。

 攻略のできないダンジョンとなっていた。


 霊峰にあるのも相まってか、1階層目からドラゴンが現れるという噂もある。

 活性化の時期が決まっていると予想されいるので、ギルドは高ランク冒険者を優先的に最古のダンジョンに派遣する。


 しかし活性化が2年早まるという事態に、霊峰の近くにあるギルド本部は大慌てで高ランク冒険者を集めているそうだ。

 そんなところに俺は指名されてしまった。


 本部からの嫌がらせなのか。

 帝国のことで疑われているからなのかはわからないが、行きたかった場所なので喜んで受ける。


 死ぬかもしれないが、いかない選択肢はない。

 断れる雰囲気でもなかったわけだが。


 喜んで返事をしたわけだが、一応、渋々といった雰囲気で出発の日を待つことにする。


「聞いたぞ、ラパ。なんかやらかして最古に送られるらしいな」

「からかってる場合か? ラパに先越されたんだぞ?」


 落ち込んでいるように見えたのか、先輩冒険者たちから励ましを受ける毎日だ。


「死なないようにがんばりますよ。童貞のままで死にたくないですからね」

「なんだ、まだ裏の花街に行ってねぇのか?」

 行ったからこんなことになってるんだよな。


「行きたいとは思ってるんですけど、タイミングが悪くて」

「そういえばサキュバスの魅了は効かず、あの美人に変身した2人からの誘いさえ断ったんだろ?」


「まあ、好みでなかったので」

「ラパは理想が高いからな。あんな女、そう現れることは」

「おい、やめとけ」


「あ、あぁ。悪い」

「もう3年前のことですから、気にしてませんよ」


「そ、そうか。[目が笑ってねえよ]」

「[このバカが]そろそろ行くわ。死ぬなよ」

「本当に、お気になさらず」


 先輩の言うあんな女とは、俺を庇って死んだ女性のことだろう。

 冒険者の師匠と呼ぶべき存在だ。


「3年。そんなもんか」

 思い出したくても、思い出せない女性の顔。

 しかし立派なおっぱいだった。


 助けられた時に触れた頬が覚えている。


「挨拶、しとくべきだよな」

 冒険者が死ぬとギルドが管理する墓標に刻まれる。


 本人や家族の希望があれば個人で墓を買うことはできる。

 女性は天涯孤独だと言っていた。


 それに、死ぬ予定ではなかった。

 墓はない。


 ギルドの墓標に刻まれている。


「そういえば、先輩も最古のダンジョンに行ってみたいって言ってたな。帰ってきたら感想、聞かせてあげますね。いってきます」


 通常なら霊峰まで行くのに1年ほどかかる。

 しかしギルドは本部に繋がる転移門を所持している。


 ちなみに帝国の宝物庫に転移門が2セットあった。

 いい場所があれば設置してもいいかと思う。


 設置方法は王族しか知らないそうだが、ドレインで知識を獲得したホックがいる。

 設置は問題ないそうだ。


 転移門の大きさは様々で、ギルドに設置されているものは大人10人くらい余裕で入れる。

 しかし転移門の発動に膨大な魔力が必要になるので、安易に使用はできないそうだ。


 移動する距離や人数で使用する魔力量が決まるとか。

 今回は俺とギルマスの2人なので、ギルド職員8名の魔力で移動する。


「これでもギリギリだけどね。もう少し人数を増やしたいけど、よそからの苦情処理で手が離せない職員がいるからね」

「…魔力、出します」


「なんか悪いね~」

 およそ1000の魔力を持っていかれる。


「うえ。転移酔いがひどいって噂、ホントだったのか」

「いや~いつもより快適な転移だったよ。ラパくんが魔力を出してくれたからだろうね。ありがとう」


 消費魔力量によって転移の快適度も変わるらしい。


「少し、休みたいですね」

「だろうね。大丈夫、今日は顔合わせだけだ。明日は休みにして、明後日からダンジョンの調査を始めるよう交渉するから任せて」


「よろしくお願いします」

「任せなさい。さて、どれだけの報酬を引き出すとしましょうか」


 普段のギルマスは敬語を使わない。

 ゆるい雰囲気で親しみやすいが、仕事や交渉事になると敬語を使う。


「調査のほうは明後日からよろしくね」

 ギルマスの交渉のおかげで、明日は休みをもらう。


 しかも高級宿を手配してもらった。

 すべて本部が払ってくれる。


「わかりました。けどよかったんですか? 高ランクの先輩冒険者達はもう調査してるのでは?」

「いいのいいの。突然の活性化だけど、今までも活性化だとわかってから半年は準備期間みたいなものだったし。数日で最悪の事態になることはないさ。それにBランク冒険者に期待するほど、Aランクが弱いなんてことあるわけないですよ。ね?」


 まるで煽るように。

 これから最古のダンジョンに向かうのだろう冒険者達に聞こえるよう言い放つ。

 ギルマスが有名な元冒険者だからなのか、突っかかってくる人はいなかった。


「あまり煽らないでくださいよ。ダンジョン内で会って、嫌がらせにあうの僕なんですから」

「そんな幼稚な連中を集めてないですよ。もしそんな幼稚な連中を集めていたのなら、本部なんて存在しないほうがいいでしょうね」


 さっき挨拶したギルド長たちを見て、言い放った。

 本部ということもあって、ギルド長は複数名いる。


 冒険者を管理する人や経営を担当する人など。

 様々なギルド長が存在している。


「お前がそこまで期待するほどとは思えんがな。私の精鋭たちと、競わせてみるか?」

「いいですね。どのような内容にしましょうか?」


 昔からの知り合いなのか、交渉中もケンカ腰だったギルド長が話しかけてきた。

 俺は良くないんだけど。


「そうだな。活性化が本格的になると予想されている3ヶ月後に、調査の報告内容で評価するというのはどうだ?」

「それはいいですね。ラパくんの得意分野ですよ。妨害はもちろんなしですよ?」


「もちろんだ。他の冒険者達にも強く警告しておこう」

「あ、ありがとうございます」

 この2人、競争と言いながら、俺を守るために。


「勝ったほうが一度だけどんな命令でも聞く。いいですね?」

「良かろう」


 守るため、だよね?

 ていうか俺一人なんですけど?

 そっち等はパーティーですよね?


「ラパくん、頼みましたよ」

「あ、はい」


 とりあえず1日休んだ。


 流石は本部。

 ガチの高級宿に泊まれるとは思わなかった。


「さてと、オメガ様の研究所目指して調査開始だ」

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