第24.3話 暗闇に映るのは、魂か光か。
視点:シノア
重要な情報が多すぎるのでほぼ会話文です。ですがみなさんはその寛容な心で僕のことを許しました。
コツ…コツ…
ハイヒールの音が、真っ暗な廊下を伝わる。
原始の神、所謂「創始神」は、この真っ暗な廊下の先にいる。神の間。この場所で。
創始神は、記憶が膨大すぎるが故に、その情報はとっくに飽和している…らしい。だが、それでも生き続けている理由は、この神の間に、情報を保存しているから…らしいが、直系の娘であるディメア様、またはその他の空間神しか、その真相を知らない。
さて、眼の前に扉が見えてきた。大きな扉だ。…見た目ほど重くはないが。
そして、私は扉をノックする。
「…誰?」
扉の奥から、そんな声が聞こえる。男のそれとも女のそれとも似つかない、子供の声だ。
「シノアです。」
「あー、入って入って。」
許可をもらって、私は部屋へと入った。
第24.3話 暗闇に映るのは、魂か光か。
「…で、今日は何の用?神の間へ入るのは結構疲れるはずだ。君なら。」
扉の中は、よくある居間とかとそう変わらない、居住空間だ。その大きなソファの上に、寝転がっている子ども。それがいま話しかけてきている、創始神様。彼は何にでもなれるが故に、何かとして固まることを好まない。だから、彼には名前がない。ついでに、威厳もない。
そんな居住空間に入れるのは、彼が子として認識する…そこまで数の多くない、空間神と摂理神のみだ。だが、もう一つ例外があって、それが、人間のような知的生命体を育んだ惑星の現象神だ。だから、うちのアフなども、入ることができる。それに、居住区も一応用意されている。多くの神は自分自身の中に住み着くので、居住区は人を呼ぶ時くらいにしか使わないが。ただ…それ以外の神がここに入ろうとしたり、そうでなくても人を間接的に呼ぼうとしたりなどすると、莫大なエネルギーを要する。当然だ。それこそ、世界を股にかける…なんなら、宇宙を股にかけるのだから。
「今日の用事は、ディメア様からの伝言です。」
「へえ、あの子からか。まだ仲良くしてたの?」
「はい…独断で動いても無駄だとわかったので。勝手がわかるまでは指示通りに行こうかな、と。」
「ロディアルと話して心変わりしちゃったか。15年前くらいだっけ?」
「ええ、そのくらいですかね。」
こんなふうに会話をしていると、創始神が、こちらを向いて頬を膨らませてくる。
「50年前くらいに言ったよね?僕はもう君の親なんだから、パパとでもママとでも好きに呼んで、親しくしてくれって。」
「いや…そんなこと言われても…」
「わかってないなあ…神って君の思うほど高尚なものじゃないんだって。君たち人体の構造で言う子宮、それが僕と空間神だ。精神を持って会話しているだけの無機物。君たち人間にとっちゃ、ぞんざいに扱うのは得意だろう?」
「…ぞんざいに扱われたいと?」
「そうじゃないよ…全くもう、困った子だね。」
…一向に伝言の中身が伝えられないのも困ったものだ。そんなことを思った。
「…まあいいや。ディメアの伝言、聞こうじゃないか。」
「はい。では、ディメア様の伝言です。まずはムニの件ですが…サコル消滅に伴って、アフが保護しました。」
「そう、ムニね。あいつはまだ子どもだ。僕みたいに子どもの姿をしているってわけじゃなく、ほんとに子どもだから…アフのことだ、子ども好きなディメアに預けたからその報告ってところか?」
「そうですね。伝言なくても良かったんじゃないですか?」
「それはディメアに言ってよ…僕に言われても困る。で、他にもあるでしょ?」
「はい。次は…アマネについて。」
「へえ、あいつか。正直ちょっとだけ手合わせしてみたいよね。」
「バカ言わないでください。ここには『魔法』っていう摂理がないじゃないですか。あっちにはその摂理があるんですから…」
「ほら、体技だけでもわりとやりあえそうじゃない?」
「アマネをあまり舐めないほうがいいと思いますよ。…血筋的に。」
「血筋でどうこうなるようなほど人間は単純な構造してないでしょ。」
「…まあいいです。それで、アマネはどうやらインデアにて人を二人保護したようです。」
「なんだ、いいことじゃないか。」
「いえ、どうやらそれが…」
「それが?」
「ふたりとも、前から話していた晴れ空組だそうで…」
「へえ…あれ、3人じゃなかったけ?」
「はい。ですが、方向性の違いで解散いたしました。」
「バンドかな?」
「…で、アマネの手元には、暮影3、日影2、合計5個の神影が集まっています。月影はのこりの一人が持っていきました。」
「そう。まあそこに僕は関与しないよ。君も、国ごと滅んだんだから世界への心残りはないだろう?」
「…そうですね。唯一、王家の血筋だけ…忠誠を誓った相手なので、行く末は気になります。」
「大丈夫だよ。王家の血筋、ふたりとも現人神だし。」
「まあ、それなら…」
「あれ、知らなかったんだ。教えなきゃよかった。」
「家族間での隠し事はなしでは?」
「ははは。確かにね。…まあ、その王家の血筋、わかりやすいんだろうし。簡単に探せるでしょ。」
「そうですが…しかし、アマネみたいに偽名でシーフォリアを使われると、捜索の阻害となるので…」
「別に名前だけで探さなくても…つーか、アマネが偽名だって保証はあるんだ?」
「だって、シーフォリア家にあるはずの髪色の特徴が、彼女の髪にはなかったですし…」
「へえ、その髪色って?」
「言いませんよ。あなたが秘密を作るように。」
「ええ…まあ、確かにアフも、アマネのことはよく話すけど、シーフォリアは偽名らしいね。なんでも、お世話になった人の姓だとか…」
「へえ、いいことを聞けました。」
「交換条件だよ。ほら、教えて?」
「じゃあ、その引き換えに、用件3つ目です。」
「ええ…」
「ディメア様が、大空市へと戻るそうです。」
「マジ?」
「ええ。だから交換条件なんです。だって、これは伝言じゃないですから。」
「へぇ…それで、なにか関与するとでも?」
「しないんですか?大事な娘ですよ?」
「本来なら死ぬのに、それを嫌がって生きながらえた子だ。…なんというか、彼女に対しては複雑な心境でいるんだ。」
「そうですか…なら、結論は何もしないということで。」
「そうなるね。」
「…用件は以上です。きわめて無意味な時間でした。」
「まあ、そう言うなよ。僕は娘と話せて楽しかったよ?」
「…その言葉は、否定しませんけど。」
私は、そう言って後ろを向き、ドアに手を掛ける。
「頑張りなよ、「空間神」シノア。」
…そんな、彼の言葉を背に。
第24.3話 終




