表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

かくせい(1)

「……おはよう」


 盛大にキレて、何事も無かったかのように冷める。

 パープルさん、こと57番さんは、見た目が変わってもやはり掴みどころがありません。


「も~~ひどいよ、パープルちゃん……」


 55番……いえ、ピンクさんは生きていました。

 ちょっと泡を吹いてピクピクしていたように見えましたが、多分気のせいです。


「……悪い」


 そう言って、パープルさんはピンクさんを助け起こしました。

 気分屋で寝起きはとても悪いお方ですが、さすがにやり過ぎたと反省したのでしょう。

 案外、根は優しい方なのかも……。


「む~~~パープルちゃん、ピンクちゃんのことぶった」

「……虫が、いた」

「えっ、虫?」

「ピンク色に好んで寄生する、ピンボケという大変危険な虫だ。取り付かれると、頭の中がスカスカになってしまう」

「何それ、怖いっ! どこどこ、ピンボケどこにいるのっ?」

「……私が退治した」

「本当っ!」

「……だが、君を傷つけてしまった。すまない……」

「ううん。ピンクちゃんならもう平気だよ! 怒ってごめんね、パープルちゃん」

「許してくれてありがとう。ただ……もしもまたピンボケを見つけた時は……」

「えんりょしないで! おともだちじゃない!」

「……分かった。君の友情を信じよう」

「ブルーちゃんも、ピンクちゃんのことピンボケから守ってね!」


 向けられたのは、対照的な笑顔でした。

 蹴られたことをすっかり忘れてニコニコと手を振るピンクさん。一方、ニヤリ……と微笑むパープルさんが、ボクに一体何を求めているのかなど、言うまでもないでしょう。

 ボクにはただ、あいまいに頷くことしか出来なかったのですから……。




「……ところで、ここはどこだ?」


 改めて、パープルさんに現在ボクたちの置かれた状況を説明しました。

 ……と言っても、分かっているのはボクたちがウサギだったことと、同じ研究室の仲間だったことくらいですが……。


「……なるほど」

「パープルさん、驚かないのですか?」

「タイミングを逃した」

「…………」


 それはつまり、ピンクさんが55番さんだと蹴った後で気付いたのか、それとも蹴る前から分かっていたのか……。

 ……やめておきましょう。聞いたところでまともに答えてくれる気がしない。


「これが私だけの夢なら、特に問題はないのだか……」

「ピンクちゃんもいるよ?」

「……全員が同じ夢を見ている、というのはさすがに無いですよね……」

「だな。では、これが夢でないと仮定するとする」

「うんうん」

「私たちは研究所のウサギだった。しかし、ここはどう見ても研究所ではない」

「そうですね。壁も天井も見当たりません」

「つまり、ここはお外の世界?」

「君にしては上出来な答えだ。しかし、まだ疑問が残る」

「ボクたちの、この姿……ですよね?」

「かわいくっていいじゃない?」

「だが、毛並みが明らかに変質している。見てくれ、どれも一本一本根元までピンク色だ」

「わぁ、きれい……ってこれピンクちゃんの?」

「ピンボケ対策だ」

「そっかぁ、じゃあ仕方ないね~」

「……もしかして、これは何かのジッケンでしょうか?」

「可能性はある。しかし、これがジッケンなら見張りが必ずいるはずだが……」

「……誰もいませんね……」


 あるのは、草だけ。

 遠くには森や山が見えますが、あたりは一面の原っぱ。

 ヒトの姿はもちろん、どこかにカメラが仕掛けられている様子もありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ