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わすれもの

「――大変ですっ、ピンクさん!」

「ほぇ? ブルーちゃん、どぉしたの?」

「……私のレベルがようやく上がった」

「わぁっ、おめでとうパープルちゃん! ぱちぱち~」

「――いや、それも大事ですけど――っ!」

「というわけでピンク、君の同意が必要だ。ブルー、君も自分の画面を開いてくれ」

「もちろんだよっ! ほら、ブルーちゃんもはやくはやく」


 言いたいことは山ほどありましたが、これも大事なことには違いありません。

 ボクはピンクさんの手元から『たぶれっと』を呼び戻し、スキルのメニューを開きました。


 ……獲得マナをスキル『合成』に配分……


 ……スキルレベルの上昇にともない、パーティスキルが上昇……


「……あ……」

「……わぁ……」

「……なるほど……」


 スキルの上昇は感覚的で、各々にしか分からないものでした。

 しかし今回は、何となくですが、パープルさんはもちろん、ボクやピンクさんにも実感のようなものがあったのです。

 おそらくですが、パープルさんのスキルが『2』になったことで、ボクたち全員のレベルが並んだ結果……パーティ全体のスキルも『2』になったためでしょう。

 パーティとは、チームやグループを意味しているそうですが、ボクたち人魔は仲間同士のスキルをある程度共有できるそうです。

 それが、パーティスキル。

 ピンクさんやパープルさんが持つ『ミニマップ』が、ボクの『情報』スキルの一部であったり。

 パープルさんがキノコ銃の弾丸を、ピンクさんの『召喚』スキルで呼び出しているように。

 ボクたちがキノコの毒を分解できるのも、パープルさんの『合成』スキルによるものなど、ボクたちはこれまで半ば何となく仲間のスキルを拝借していたのです。

 それが今回、パープルさんのスキルレベルが上がったことで、ボクたち自身も互いの能力を、ほんの少しですが、今まで以上に理解できるような気がしたのです。


「……ふむ。画面の精度は上がっているな……」

「みてみて~スプーンがフォークに変わったよぉ~」


 ボクもコップに水を呼び出すことができました。

 何か他に安全かつ面白そうなものはないかなぁ……と思いめぐらせたとこと、ふと視界の隅にキラリと光るものが見えました。


 ……何だろう……壁に引っかかった……鍵?

  

「パープルさん、あれは何ですか?」

「……鍵? どうしてあんな所に……」

「あれはね~クマさんの鍵だよ~」


 一体どういう……。


「……あ、思い出しました! あれ、パープルさんが預かっていた鍵じゃないですか!」

「…………そうなのか?」


 とぼけているのか、本気で忘れているのか、全く判別がつきませんが、興味がないことだけは確かなようです。


「さんざんボクにあちこち調べさせて、結局見つからないって、パープルさんブチギレてたじゃないですか……」

「そんなゴミ、私は知らん」


 ……ゴミだと思ったから、あんな所に放り捨てたんでしょうが……。


「……まぁ、ボクも今の今まで忘れていましたけれど」


 言いながら、イメージすると鍵はボクの手の中にありました。

 細かい条件はまだまだ不明瞭ですが、これくらいの距離とモノでしたら、マナを使わずに召喚できるようです。


「ピカピカしてきれいだねぇ~」


 ボクの手から、ピンクさんがご自分の手に鍵を呼び出しました。


「まほうのカギみたい~ねぇ~これって何のカギかなぁ?」

「さぁ……ボクの『情報』で分かるのは素材だけで、誰の何のカギなのかまでは……」

「ほぇ? そんなの持ち主さんに聞けばいいじゃない?」


 ……いや、その『持ち主』から『奪った』カギなんですけど……。


「ぷりてぃぴんきぃ~~カギの持ち主さん出てお~いで!」


 ピンクさんが謎の呪文を唱えました。


 …………。


 何も起きません。

 ただの痛いダンスだったようです。


「あれれぇ~なんでぇ~?」

「……当然だ。持ち主はすでに消え……遠いどこかへ行ったのだ。だいたい、君の能力で他人は呼び出せない。呼べるのは私たちパーティメンバーと、自分の持ち物、水や食べ物といったマナと交換できるものだけ。そもそも、今のカギの持ち主は私たちだ」

「あ、そっか。じゃあ、カギあなを探せばいいんだね?」

「だから私とブルーですでに……」

「ぷりてぃぴんきぃ~~カギあなさん出てお~いで!」


 カギをステッキみたいにくるくる振り回して、またもや謎のリズムでピンクさんは呪文を唱えました。


 …………。


 何も出てきません。

 しかし……カギの先端から、『カチリ』という音がしたのです。


「開いたよ~」


 ……何が?


 ボクはもちろん、パープルさんでさえ、あまりに不可解な状況に突っ込むことさえできず、唖然と立ち尽くしていました。


「じゃ、出ておいで~」


 ――いやいや、だから何がどこから――?


 言葉は全て喉から出て来ないまま。

 ボクはただ目を丸くして、ピンクさんが謎の扉を開く音を聞いていたのです……。


「…………」


 分かったことがひとつだけ。

 あのカギはどうやら宝物をしまっておくためのものではなかったようです。

 光とともに、宙から出てきたもの。

 それはボクたちと同じ、緑色のウサギでした。


「おはろ~~あたちピンクちゃん! よろしくねぇ~!」

「…………」


 突然の召喚による戸惑いか、ピンクさんの馴れ馴れしさに驚いたのか、はたまた他の要因か……。

 おそらくは全部だと思いますが……ともかく彼女はピンクさんを直視するなり、白目をむいてその場に崩れ落ちました。


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