うぉんてっど(2)
「……おい、本当にここなのか?」
「あぁ……。情報によればとんでもない魔獣が住み着いているらしい」
「情報っつったって……あいまいすぎるだろ? この手配書だって、まるでラクガキじゃねぇか。一メートル弱の謎の人魔二匹……もしくはそれ以上って……」
「だけど、もう何人も返り討ちにあっているのは確かだぜ。おかげでおいしい賞金額にまで跳ね上がった。高レベル冒険者が出張ってくる前に、俺たちが総取りしてやろうぜ」
「おい、そろそろ警戒しろ。たかが人魔と侮ったやつらみたいにはなりたくねぇだろ」
「ヘッ……油断なんて弱ぇやつらの言い訳だ。いかなる状況だろうと跳ね除けてこそ、本物の冒険しゃ……」
どぉぉぉーーん。
ガッシャァァァン。
パンッ! パンッ、パンッ……!
……そして今日も、冒険者さんたちがやってきては、消えてしまいました。
今回は入り口の土砂崩れトラップにはかかりませんでしたが、続く鉄格子トラップに見事はまってしまった模様。
逃げ場を無くしたところを、パープルさんの毒キノコをもろに食らっておしまい。
「……記録は?」
フッ……と、パープルさんが銃口から漂う毒キノコの煙を吹き消しました。
「えっと……土砂崩れから数えれば、一分を切りました……新記録、ですね……」
「……マナは?」
「昨日に比べて、だいぶ少ないかと……」
「…………」
「あっ、でも、一応パープルさんのレベルアップに必要な量は満たせたようです……!」
「…………それは結構」
垣間見せた露骨なしかめっ面が、どうにか元に戻りました。
ボクは心の底から胸を撫で下ろし、目線を足元に落としました。
……何かを、踏んでいます。
紙……冒険者たちの持ち物でしょうか……?
大きな文字で、「うぉんてっど」と書かれています。
「……なんでしょう、これ?]
「私に聞くな。読み書きは君の専門だろ」
「そうでした……」ボクは『たぶれっと』に文面を移して、翻訳しながら読み上げました。「……えっと、突如出没した種族不明の人魔……へぇ、ボクたち以外にも人魔がいるんですねぇ……」
「……続きは?」
「あ、はい……人魔と思われる魔獣により……すでに幾人もの冒険者がたおされ……当ギルドはこれに賞金をかける……なお賞金額は生け捕りの数による……冒険者ギルド、グライド支部……」
「……で、ここに描かれている妙な生き物が、その人魔か?」
「そのようですね……特徴は、一メートル弱……耳が長く、派手な毛並み、主に毒系のスキルを使用……場所は……『魔獣のすみか』……」
…………。
「……あまり似ていないな」
「他に言うことは無いんですか!」
「安心しろ。この『?』マークがおそらく君だ」
「言わなくていいですよ、分かっていますから!」
ピンクさん、パープルさんに続いて、ボクだけ居るのか居ないのかよく分からない、ぼんやりとした輪郭だけの『?』になっていることに、喜べばいいのか悲しめばいいのかはさておき。
ここしばらく、毎日のように冒険者たちがやってくる謎が、やっと分かりました。
彼らの狙いは、ここに住み着いていた山賊たちではなく。
ボクたちだったのです――。




