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ぱーてぃ(1)

 これまでのあらすじ。

 ボクの名前はブルー。元は研究所のウサギでした。

 気がつくと、おとなりさんのピンクさん、パープルさんと一緒に異世界に飛ばされていて、身体もなんだかヒトっぽくなっていました。

 森の中でいきなり山賊たちに襲われ、洞くつの牢屋に閉じ込められて、ばんじきゅうす。

 スキルに目覚めたボクたちは、互いに力を合わせて、みごと山賊たちを全滅させたのです。

 おかげで洞くつはもちろん、山賊たちの持っていたものは、全部ボクたちのもの。

 たおした山賊たちから奪いとったマナで、ボクのスキルはレベルアップ。

 新たなスキルで手に入れた、音と映像の出るボクの『たぶれっと』もどきをテーブルに置いて。

 ぶんどったご飯を適当に並べて、かんぱーい……。




「…………なに、この状況?」


 目が覚めると、ボクはテーブルに突っ伏していました。

 向かいにはイスから転げ落ちているパープルさん。

 テーブルの下には、ピンクさんが毛布に包まって丸くなっていました。

 何がどうしてこうなったのか……。

 改めて昨日の出来事を振り返ってみましたが、やはり訳が分かりません。

 記憶も『あにめ』を見ている途中で、ぷっつり切れています。

 全50話ほどの内容で、途中でおふたりの見たい作品も差し込んだので、次は一体何話から再開すればいいのか、分からなくなってしまい、非常に困……。


「……いやいや、そうじゃない……そうじゃないでしょうが!」


 思わず大声を出してしまいました。


「……んにゃ? おはろ~、ブルーちゃん……おやすみぃ……」

「起きてください、ピンクさん。パープルさんも。よくよく考えたら、のんきに寝ている場合じゃないですよ、ボクたち」


 おふたりを起こしている間に、『マップ』の隅っこに表示されている数字は「0510」から「0540」になっていました。

 おそらく、これは時計でしょう。教授たちもよく時間を計っていたので、これが日時を表すものだということは、なんとなく察しがつきました。

 ただ、この数字の意味……。

 これが昼なのか、夜なのかが、未だよく分かりません。

 分かっているのは、寝たのが夜ということだけ。多分……。

 丸一日寝ていたのでなければ、今はおそらく朝でしょう。きっと……。


「……ブルーちゃぁん、おなかすいたぁ」

「ブルー、私には水をたのむ……」

「はいはい。ちょっと待ってください」


 起こすまで一苦労でしたが、起きた後もやはり大変になることは分かっていました。

 なので、前もって準備はしていたのです。

 山賊たちが残した食材や調理器具と、『情報』スキルで仕入れたレシピ、さらに『あにめ』というお手本から、ボクは人間たちの『料理』という文化を知りました。

 研究所のケージに居たころは、出されたものをただ食べるだけでしたが……『あにめ』を見ている途中で、興味が湧いてきたのです。

 それで昨夜は見よう見まねで作ろうとして、ナベをひっくり返してヤケドしたり、食べてみたら生っぽかったりしたのですが……レシピにはこうも書かれていました。

 料理法とは、数多くの失敗の上に成り立っている……。

 ……勇気の出る言葉でした。

 おかげ様でボクはおふたりが起きてくるまでの間、鍋に火をかけ、ありあわせのスープを作ることが出来たのです。

 味は、まぁ……普通、でしょうか……。


「いただきまーす」

「……変なキノコが入ってる」

「昨日のパンですよ。カチカチだったので、スープに入れてみたのです。ピンクさん、まだ熱いからゆっくり食べてください」

「へーきへーき。よく分かんないけどぉ、食べられるよっ!」


 褒められているのか、けなされているのか……微妙なところですが、ピンクさんの性格上、食べられないものが不味いものなのでしょう。


「ふむ……。この調子でがんばりたまえ」


 パープルさんには関しては、もはや突っ込むだけ無駄なようです。


「……ところでパープルさん、今後のことについて相談したいのですが……」

「奇遇だな。私も君にそのことで話そうと思っていた」

「本当ですか?」

「もちろんだ……私たち全員の見たい番組が異なるのだ。効率というものを考えるのは当然だろう?」

「だから『あにめ』を見ている場合じゃないって話がしたいんです!」


 スープをじっと見つめたまま、ぐるぐるかき混ぜ続けているパープルさん。

 ボクの言ったことを聞いてくれているのかどうかは、挙動を見ているだけでは全く判別がつきません。


「なになに~また『あにめ』見るのぉ?」

「見ませんし、見れません。マナだって、もうあまり残っていないのですから」

「えぇぇ、次はピンクちゃんの番なのにぃ?」

「……君の番かどうかは大いに議論の余地があるが、まずはマナの確保だな。さもないと、ブルーだけが号泣してお終いだ」

「ブルーちゃんだけズルい!」

「ちょっ……いきなりボクに矛先を向けないで下さいよ!」

「方法ならある。それにはピンク、君の協力が不可欠だ。手伝ってくれるな?」

「もちろんっ、おともだちじゃない!」

「……君ならそう言ってくれると思ったよ」


 ニヤリ……と、パープルさんが微笑みました。

 絶対とんでもないことを考えているに違いありません。できれば聞きたくないし、考えたくもありませんが……言い出したのは他ならぬボクです。

 怖いことも、危ないことも、知らないよりは知っておいたほうが、いくぶんかはマシでしょう……。


「あの……具体的にはどうされるおつもりでしょうか……?」

「今のところは何とも言えない。おいおい計画を立てていくつもりだが、いかんせん情報不足だからな。まぁ、気長に待ってくれると助かる」

「そ、そうなんですか……」


 ……何と言うか、ホッっとしました。

 また山賊たちと戦ったりするつもりなのかとばかり思っていましたが、パープルさんなりに考えてくれていたのだと分かって、本当に良かったです。

 それに、ボクたちはまだこの世界のことをまだよく知らない。

 なのにボクときたら、怖がるばかりで焦って皆さんを急かしてばかり……。

 冷静に、よく見てよく考えて、今後のことを決める。

 当たり前のようなことを、改めて教えられた気になりました……。


「……んにゃ? じゃあ、ピンクちゃんはしばらく『あにめ』見れないのぉ?」

「いや、そうはならないだろう。まぁ、相手の出方次第だ」

「…………相手って?」

「それは見てのお楽しみだ」


 …………。

 ……なぜでしょう。パープルさんがこちらをじっと見ています。

 一体ボクに何を求めているのか……。

 今度ばかりは、聞きたいようで聞きたくない気持ちでいっぱいになり、後片付けをするフリをして席を立った、まさにその時でした。

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